表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/8

創造神

「あ・・・ん・・り」

まだ覚醒しきってない意識の中誰かが名前を呼ぶ。

誰?・・・あたし・・・帰ろうとしてエンジンかけて・・・・。


「杏利!」


「えっ・・・?あっ・・はいっ!!」

覚醒しきらない意識の中、思わず名前を呼ばれ返事をした。声の主を探すため体を反転させ、振り返ると10歳位だろうか。快晴の空のような青い瞳に、青い髪、神々しいまでに整った顔の美少年が微笑みあたしを見つめていた。


「突然、呼び出して申し訳なかった。杏利・・貴方には本当に・・本当に申し訳ないことをした。」


目の前の美少年はなぜかそう言うと申し訳なさそうに眉毛をたらし、そのまま頭を下げる。年齢にそぐわない落ち着いた声、話し方、車にいたはずなのに周りを見渡すとただただ真っ白の世界が広がっていてそこにいるのは頭を下げる美少年のみ。さすがに状況が分からない・・・。


「あっ・・・えっと・・君?貴方は誰?どうしてあたしはここにいるの?」


できるだけ、子供に怖がられないよう、優しい口調で問いかける。

考えた末に出た言葉がこれか・・。我ながら語彙力がないな・・。大抵の経験はしているしめったなことで動揺することはなかったが、さすがにこの状況は異常だろ。あたしは仕事が終わり車に乗っていたはずなのに、真っ白い世界に中で目の前には美少年・・・・。ラノベかっっ!とか自分に突っ込みいれてみる。


「我が名は、創造神ノリセウス。全ての根源である神である。今回貴方を呼び出したのは心からの謝罪と、世界のバランスを正常に戻すためだ。」

頭を上げた彼はあたしをその吸い込まれそうな青い瞳で見据え、落ち着いた声色で言葉を紡ぐ。


「はぁ?謝罪?意味が分からない・・。正直この異常事態に戸惑っているし、お婆さんは?

・・・ノリセウス・・さん?・・があたしに謝る理由も全く分からない。なんなのこの状況はっ⁈」


冷静に話していたつもりが思はず最後には声を荒げる。

本当に訳が分からない。大人気ないがそれどころではない。


「あの老婆は私の仮の姿だ。・・・戸惑うのも分かる。全ては未熟な私のせいであり、貴方に責はない。この世界の成り立ちから説明しよう・・・。」


創造神は少し瞳を伏せるとゆっくりと語りだす。

創造神が生み出した世界は多数あり、様々な時間軸の中存在している。複数の世界の管理を創造神一人ですることは不可能であり、その為その世界の管理を任せる神を生み出し、【ソウルメイトシステム】を作ったと。


【ソウルメイトシステム】とは、魂でつながる者。陰と陽があり、陽のソウルメイトは支え、助け、幸せをもたらす。逆に陰のソウルメイトは不幸や不利益をもたらす。そのため陰と陽のソウルメイトは陽が少しまさるように各個人に配置され人生の試練を乗り越えた末に幸せをつかめるようになっている。

ソウルメイトの数は各個人様々だがこのバランスは崩れないように同世界に同時期に陰と陽のソウルメイトが存在するようになっている。


創造神は一定の周期にて全世界から体に貯めこんだ邪気を浄化しなければいけない。浄化にはかなりの力を使うが周期的に行えば特に問題は起こらない。しかし、前回の浄化は多くの世界で戦争が同時に起き、邪気がたまりすぎたため浄化にいつも以上に力を使うこととなりその際に世界に一瞬の綻びが生まれた。

その綻びに落ちたのが前世のあたし。


その時、同時にいた陰のソウルメイトとともに別世界に飛ばされたためシステムから外れ、転生後も2代にもわたり陽のソウルメイトとは出会えず、陰のソウルメイトだけに囲まれた試練しかない、幸せのない、苦痛に満ちた人生を送ることになってしまった事・・・。


創造神はそのことに気づき、すぐに戻そうとしたが浄化にあまりにも力を使ってしまい回復するまでに2代もの時間がかかってしまい、苦痛の人生を歩ませてしまった事への謝罪。そうして今回やっと力を取り戻したので、世界のバランスを戻すため、あたしを再度転生させたいとの事・・・・・。


「なんだか、統合がいい話・・・まぁ・・なんとなく理解はできた。」

息を大きく吐き出しながらそう答えると、何故だかノリセウスぽかんとした顔でこちらを見上げている。

「・・・怒らないのか?」

不思議そうに、眉をひそめるノリセウスがあたしを見上げる。

「怒るも何も、あぁ、そっかぁって感じかな・・?」

うん。自分でもよくわからないが、不思議と納得してしまった。今までの人生正直何もうまくいかなかった。恋愛も、家族も、友達も、仕事も・・・思い返せばきりがないほどうまくいかなかった。うまくいかないのが普通であたりまえだったから、傷つくことにも慣れていたし、自分のことなのにいつも諦めていた。いや、違う・・。傷つくことが怖くて、もう傷つきたくなくて、自分を他人のように傍観することで逃げていた。そんな人生だったからあまり思い残すことはないし、怒るなんて感情もわかなかった。


「まぁ、それはいいとして。あたしはこれからどうすればいいの?」

ふとした疑問をなげかける。

「貴方の望むもので聞ける願いは全て叶えよう。何か転生するにあたり望みはあるか?」

先ほどまでの申し訳なさそうな表情に戻ったノリセウスが問いかけてくるが、望みといわれてもなぁ・・・。

「そもそもどんな世界にあたしは行くの?」

あたしの問いかけにハッとしたような表情に変わり、目を見開いたあと静かに話し出す。

「すっすまない・・。すっかりそのことについて話すのを忘れていた・・・。文明レベルは今までの世界より低いが、獣人と人族が暮し、魔法や特殊スキルがある世界だ。」


「ラノベかっっ!!」


思わず突っ込みを入れてしまった。あっ・・やべ。すごい不思議そうな顔されてる・・。


「えっと・・なんとなく世界観分かった。」

とりあえず苦笑いしごまかしてみたが、いまだに不思議そうな顔をされている。ここは望みを考えるふりして無視しよう。

それはそうと望みねぇ。魔法かぁ・・使ってみたいなぁ~・・空とか飛べちゃうのかな。まさか魔王とかもいたりして・・・・それはウケる・・・。魔王とか魔法というワードに異世界物のラノベを思い出して、笑いがこみ上げ思わず肩を揺らす。

「どうした?」

「ぇっ?ぁぁ何でもない。一応考えたんだけど人種は人間がいいかな。あと名前はそのまま使いたい。んーあと、容姿はそこそこおまけして欲しいかも・・。あと年齢は成人がいい。」

「せっかくやり直せるのに、なぜ成人なのだ?」

「ぁあ、それは・・・あたしが、お酒が好きだから・・。未成年じゃ飲めないでしょっ!」

「・・・・酒が好き・・・?それだけ?・・・ふっっははははは。」

ノリセウスはその青い瞳を見開き、口を開けたままぽかんとした後、思いっきり笑い出した。

なんて失礼な。前世で大好きだったのだからしょうがない。大体一人での晩酌がほとんどだったけど、ワイン、日本酒、焼酎は大好きで毎晩飲んでた。会社の飲み会だってただ酒のために行ったし!そんなに笑わなくてもいいじゃない・・。

思わず不貞腐れた顔をノリセウスに向ける。


「ふはは。すまん。それだけのために成人にこだわるとは。しかし、それは許可できない・・・。

貴方は転生後の世界の常識や、知識がない。せめて5年ほどは様々な事を学んだほうがいいと思う。成人年齢より5歳下からのスタートでもいいなら妥協しよう。」

笑いすぎて少し目じりに涙をためながらノリセウスは続ける。

「人種と名前、容姿は了承しよう。あとは能力についてだが、ある程度色は付けるつもりなのだが希望はあるか?」

「んー武器が自由に作りたいのと、身体能力高めにしてほしい。もちろん魔法も使いたいかな。」

「それだけでいいのか?」


「まぁ・・・それなりに長生きできればいいから、あとはノリセウスに任せるよ!」

そう言って思いっきり笑うと

「ふっ・・任された。」

なぜかまたノリセウスに笑われた・・。そしてまた眩い光に包まれてまた意識を手放した・・・。


・・・・・。

・・・・・・・・・。

『お・・・したい・・ます。明・・日・・』



誰?なんでそんなに苦しそうなの・・・?

どこか懐かしくて・・・苦しくて・・・大事なことだったはずのなのに・・・。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ