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【打】Truth〜護持世界の英雄達と真理到達〜  作者: 望木りゅうか
第一章〔欺瞞信念〕
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いつの間に取り付けられた決闘

「アサナト……さん?」

 ほぼ気絶状態のアルメスの耳に入り込んだ言葉。

 それによって目が醒め、アサナトを止めようとするも、まだミカとの実力確認の精神的疲労が凄まじいが故にその後の言葉が出せなかった。

 もうアサナトを制止するものはいない。朦朧とした意識の中周りを見渡してみて分かった。

 アルメスは仕方なく、ミカとアサナトの戦いを観戦することにした。


「大丈夫だ。お前も師匠の腕前を見てみたいだろ?」

 そりゃ、見てみたい……けど、女王と女王近衛隊の身分の筈。

 女王様に何かあったら色々大変なことになる気がする。

 ……確かに、立ち会ってみてアイレスさんの実力は尋常じゃないと察したけれど、実力の問題じゃない。


『女王に戦いを申し込んだ』という事が大変なんだ。

 そのアルメスの思考を問いただす様に、ミカとの実力確認の話が蘇る。


 僕の場合は、『申し込まれた側』だから、大丈夫な……筈。

 って過ぎた事はもう変えられないから仕方ないとして、戦いの事。





 ……結論から言うと多分、大丈夫じゃないかと思う。

 話ぶりからして、なんかアサナトさん達って『女王近衛隊』としての女王様と取るべき関係性から逸脱し過ぎている気がするから。


 それだけじゃ片付けられないかも知れないけど、なんか、忠誠を誓う相手としてアイレスさんと接しているんじゃなくて、『仲間や友達』として接している気がする。


 そして恐らくアイレスさんも、その事を知ってて接しているんだ。





 ……なんか今日僕鋭くなってない?

 推察と自画自賛じみた賞賛をし終わったら、丁度アサナトとミカが、武器を取って戦闘準備を取り始めた状態だった。


「では、最初に相手に攻撃を当てたか、武器を落とさせた方の勝利という訳で……では」

 ミカ達の周りを白い障壁が囲む。


 それと同時にミカは綺麗な姿勢で両手剣を、アサナトは体を低い姿勢に保ち、右手で逆手持ちにナイフを構える。


「始め!!」

 ナミアの合図で、二人か雷の如き速さで突進し打ち合い始める。


 意識が朦朧としているのも相まってか、アルメスの目には速過ぎて二人の腕の動きの一端すらも見えない。

 そして何合打ち合ったかは分からないが、その末にミカがアサナトのナイフを剣で弾く。


 そしてすかさず追撃を入れようとしたが、アサナトが後ろへ軽くジャンプし、攻撃を躱される。


 三メートル程離れて、再び睨み合う。




 アルメスは、ドレスを着たまま戦っているミカの身軽さに驚く。


(なんで動き辛いドレスであんな戦闘が出来るんだ……?)


 だがどれだけ考えたところで、アルメス的に納得できる答えは出なかった。


 アルメスは諦め、戦闘の観戦に移る。


 先に動き出したのはアサナト。


 ナイフを順手持ちに構え直し、右手を補助する様に左手を右手首にあてがいながら、更に腰を低くし右手を肩と平行になる様に構える。


 その姿を見て、突き技である事は分かった。


(闘牛のような構え方……突き技ですね)


 ミカもそれを見て、剣を少し前に傾ける。

 その瞬間。


 アサナトが最初の突進より数倍早い突進をミカに向かって始める。


 それをミカは闘牛士の様に剣と身体を傾けることによって受け流す。


 その勢いでミカは過ぎていったアサナトの背中に向かって追い討ちを掛ける。が、アサナトはそれに反応し、難なくナイフで剣撃を止める。


 そして今度はアサナトがミカの剣を腕と一緒に弾き、それによってミカの脇を含めた上半身全体が無防備になってしまう。



 ーーー隙。




 アサナトが続けて突きを胸あたりに向けて放った。


 凄まじい風切り音と共にミカの胸に迫る刺突。


 だがそれをミカは剣を握っていた左手を一旦離し、屈むことで回避する。そして左手を戻し、下からアサナトの顔めがけて、刺突。


 そのお返しと言わんばかりの刺突をアサナトは上体を後ろに傾けることで躱す。

 そしてそのまま、アサナトは三メートルほど飛翔し、その間にまたナイフ逆手持ちに戻す。


 上から襲う気、と判断したミカはアサナトの背中向きに前転し、攻撃を避ける。


 そのまま地面に降りたアサナトは、ミカに背後を取られてしまった。


「やべ……」

 そう口から漏らすアサナト。


 このまま何もしなければ、確実に攻撃を食らって終わる。


 だが、反応は出来た。


 振り向きざまに膝辺りに向けて、飛ぶ斬撃を放つ。


 だがそれをミカは少しジャンプすることで躱し、その勢いで低姿勢のアサナトに向かって剣を振り下ろす。


 アサナトは回避しようとしたが……時すでに遅し。


 もう不利を承知で受けるしかない。


 剣撃を一旦受けるが、両足をミカに向かって振り上げる事によって後ろに避けさせ、両足を振り上げた勢いによって体制を立て直す。


 また睨み合う二人。


 アルメスは、圧倒的実力者同士の戦いに、固唾を呑み込んだ。





(出来ればここで……仕留めます)


(長い前戯は終了の様だ。……決めるか)


 双方の意思が固まった様だ。


 もうここからは、ただ一度のミスも許されない。


 アサナトは、準備を始める。


 確実に仕留めるための技を。


 体を低く保ち、ナイフを持っている右手を逆手持ちのまま、真右に待機させる。


 全身全霊の殴りの様に、力を貯めて勢いをつける為の様だ。


 そして左手は、相手に狙いを定める様に、目の直線上あたりに保っている。


 そのアサナトと同時に、ミカが脇を締め、剣を少し傾け隙のない形に構える。


 それで十分な様だ。


 二人が同時に足に力を込める。


 そして、双方凄まじい速度で突進する。


 その途中で、一番最初に攻撃を開始したのは、アサナト。


 突進の最中で、アサナトが攻撃を始めたのを確認してから避けようとするミカ。


 だが、見てからでは遅い。


 アサナトの剣撃は、それだけ速いのだ。


(貰った……っ!!)

 そう確信し、攻撃がミカに当たったのを確認する……が、そこにミカの姿はもう無かった。


(残像!?しまっ……)

 やっとアサナトは目の前にいたミカが残像だと気付き、感覚でミカを追う。

 だがもう遅い。


 ミカを見つけた時にはもう、剣がアサナトの視界を覆い尽くすほど近距離に迫っていたミカが居た。


 天性の直感により気付けたアサナトは、必死の抵抗で剣を止めようとナイフを振るが、ほぼ振り切っていたミカの剣に、苦し紛れの防御は通用しない。


 簡単にアサナトのナイフは弾かれ、宙を舞う。


 アサナトに振り下ろされる剣。

 アサナトは敗北を確信した。







 だが、アサナトに当たる直前で、剣が止まる。


(!??)


 困惑を露わにするアサナト。


 それを皮切りに、ナミアが声を上げる。


「ミカ・アイレスの勝利!」

 その言葉を聞いた瞬間にナミアの言葉を思い出す。


(あ、武器を落とした方が負けだったな)


 ミカが剣を下ろし、右手を差し出す。


「私の勝ちですね、アサナトさん」

 満面の笑みで話しかけるミカ。


 だが見たところ、賞賛の意味の笑顔らしい。

 少し紛らわしいと思いつつも、ミカの差し出した腕を握るアサナト。


「『また』負けちまったな」

 ミカの満面の笑みに笑顔で答えるアサナト。

 その光景を、やっと上体を起こし喋れる所まで回復し始めたアルメスが何か言いたげな表情を浮かべながら見ていた。


(あ、何回も戦ってらっしゃるのね、しかも『また』って。まさか負けると分かってて挑んだんじゃないですよね、アサナトさん……)

 そんなアルメスに武器の片付け中に気付き、アサナトが申し訳なさそうな顔をしながら歩いてきた。


「すまん、負けてしまった」


「良いんですよ、アサナトさん格好良かったですよ……負けましたけど」

 フォローの言葉で迎えようと思ったが、色々不満があったが故にそんな失言が出てしまったアルメス。


 まあ……事実なんだから、口を押さえたりなどはしなかった。


 弟子として、記念すべき?初煽りだ。


「っはは、ところでアル、お前、なんか自分の体に変わったことがあるってわかるか?」


 それをちょっとした笑いで誤魔化し、新しい話題を出して忘れさせようとするアサナト。


 だがそれにまんまと引っかかるアルメス。完全に忘れ、アサナトの言葉に耳を貸してしまう。


「……変わったこと?」

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