戦士の誇り
訓練室内相談室。
そんな所に、アルメス達は連れて行かれた。
付いて行ったと言うべきか。
……兎に角、何かの意図を持って連れて来られたのは分かっている。
だからアルメスはイェネオスと向かい合う様に相談室の椅子に座った。
あまり状況の理解が出来ていないスーシャもイェネオスに促されてアルメスの横に座らされた。
テーブルを挟んで向こう側。
二人の視線が行き着く先には微かに笑うイェネオスが居る。
一瞬静寂が間に走った後に、スーシャが理由を問いただす。
「イェネオスさんは、何の理由を持って私達を……?」
スーシャは、この状況を理解したい様だ。
イェネオスもそれについて説明しようとしたが……口が開くだけで言葉が出て来なかった。
その理由はつまり……。
「あ……君、名前なんだっけ?」
名前を聞いていなかった為。
スーシャは、少し心の中で溜息を吐きつつも、事を円滑に進める為に答える。
「ミキシティリア十二聖騎将十二席、スーシャ・リッテユーロです」
「OK。スーシャ。そんでアルメス……君達は、強くなりたいか?」
意気込みを聞くイェネオス。
その意図は分からないが……アルメス達には、ある。
燃え滾る闘志が。
不屈の意志が。
強くなりたいという願望が。
ならば……言うべき言葉は……ただ一つ。
〈あります!〉
口を揃えて、出来る限りの笑顔で。
二人は言った。
なら……。
(合格だぜ。お前ら。なら俺のやる事は、お前達と同じで決まってる……)
イェネオスは笑い、あるモノを渡そうと能力を使う。
これは、洗礼でもある。
それは、使いこなすだけの勇気が在る者しか扱えない。
正に、二人に相応しい最高の……武器だ。
「なら話は早い様だな。……これは、そんなお前らにうってつけの品だ。上手に扱えよ」
イェネオスが虚空から二つの道具の様な物を取り出し、それぞれ一つずつ二人の前に置く。
先ずはアルメスから。
「これは……?」
先ずアルメスの目の前に置かれたのは、籠手。
形状からして、左手用だろう。
が、一つしか無い。
しかも、籠手というのは鉄などでできた、戦闘時に腕を守る為にある物。
だがこれはほぼ、布だ。
守るべき所は守っては居るが、かなり装甲が薄い。これではほぼグローブではないか?
激しい動きに対応する為だろうか?そもそも守りなど必要ないのか?
そんな事を考えるよりも、ある物がアルメスの目に入った。
手の甲の部分だ。
その部分にある物は二段構造になっている様で、一番上の部分は謎の原理で浮いている様だ。
一番下の部分は羅針盤になっていて、常に一定の方向を指している。
しかも謎の模様がその羅針盤の周りを常に回っていた。
よく見ると図形の様にも見える。
だが一番目に付くのは浮いている時計だろう。
一センチ程浮いて羅針盤の上を常に滞在しているその時計は、短針と長針しか無い。
秒針が無い意図は汲み取れないが、それ以外は至って普通の時計と一緒だ。
一から十二まである。
だが、これだけでは無い様だ。
時計の周りを、羅針盤と同じく謎の模様が浮いている。
興味本位で上から見てみると、その模様が下の羅針盤周りの模様と繋がって、動く幾何学模様を作り出していた。
綺麗……と言いそうになったが、最も反応すべき問題がある。
これでは、只の時計付き籠手では無いのか?
だからアルメスは声を上げた。
「これ……ただの籠手では?」
「後で説明するから待ってな……で、これがスーシャの分」
いいようにはぐらかし、イェネオスはそのままスーシャに物を渡す。
それは、アルメスとは全く違う代物だった。
ネックレス。
そう。ネックレスだった。
「え?」
当然、スーシャも困惑する。
アルメスに渡された籠手もよく分からないものだったが、これはもっとよく分からない。
只の飾りじゃ無いか。
鉄のチェーンの先に吊るされた虹色に光る結晶。
結晶は金色の型に嵌められている。
それだけ。
これに、首に掛ける以外の使い道を見出せるものが居たら教えて欲しい。
それぐらいの肩透かしを食らった気分だ。
二人が与えられたそれに困惑している所で、イェネオスが語り始める。
「流石に困惑するよな。……一つづつ説明するから、聞き逃すんじゃ無いぜ」
「あ……はい」
意気消沈し始めてはいるが、二人共耳は開けている。
心の中では期待しているのだろう。
「先ず、最初に聞いて貰いたいんだが、お前らの目の前にあるその『武器』達は、俺の存在能力の産物だ。多次元武器庫って言う。細かい詳細は省くが、俺はその存在能力でその武器を作った。ーーー言っておくが、世界に一つしか無い、最高傑作だ。壊すなよ……元々壊れはしないがな」
「壊れないって、どういう事ですか?」
そう聞くアルメスに、イェネオスは当たり前のように答える。
「そりゃあ、お前らの存在能力を増幅させる、言わばお前らの存在能力の複製だから」
存在能力の複製。
イェネオスはそう言った。
「そんなのどうやって……?」
明らかにアルメス達の常識を超えた発言。
存在能力の複製なんて出来るはずは無い、と心の底で決めつけていた。
スーシャだってそうだった。
だが、その結果が目の前にあるのだから。
イェネオスがそう断言するのだから。
ーーー間違いは無いのだろう。
否定は出来ない。
それが存在能力だと、女王近衛隊だと。知ったから。
「……」
数秒、アルメスは言葉を失う。
目を伏せ、顔を下げ、思考した。
結論が出た。
自分の目の前にある物は、僕の現し身と見て間違いは無いだろうと。
顔を上げる。
スーシャも、同じだろう。
「理解したか?」
「……はい。存在能力の複製、それが出来る存在能力もまた、存在すると」
「分かったなら良いんだぜ。じゃあ、本題と行こうか」
イェネオスは、ワイルドな笑顔を見せて、笑った。
その本心は、本人達の成長の為。
自分の思いを押し付ける訳では無いが、そう自分では理解しているから。
与えられただけの力に、与えられた人間はそれを究極に使いこなせないし、それの本当の喜びを知れないと。
イェネオスは、不撓不屈の戦士だ。
だからこそ、葛藤もある。
譲れない信念も、誇りもある。
だが自分の目の前にいる二人に、それを教え込む必要は無い。
ーーだがな。
これだけは忘れない様に。
自分の持つ力に飲み込まれるな。
申し訳有りません。
設定に大きな不備があるのが分かったので一度この作品を終了させます。
次に私が執筆する作品は、この作品と登場人物と概ねの設定、世界情勢を受け継いでおります。
多少の改変はありますが。
今作よりクオリティアップしょうと思いますので、ご期待下さると嬉しいです。
打ち切りという形にはなりますが、打ち切りでは無いですw(矛盾)
この作品の改変作品を作り出すだけです。
そちらの作品は少なくとも十五日には投稿を始めますので大丈夫です。