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気にしないふり

2019年2月14日。

「はい。ナガシィ。」

仕事に出ようとする直前に萌は僕に包みを渡してきた。綺麗にラッピングされたその箱を見て、僕はそれがなんなのかピンと来た。

「市販ので悪かったわね。」

「まだ何も言ってないんだけど・・・。冷蔵庫においといてもらえる。」

「えー。貰ってくれないの。私食べちゃおうかなぁ。」

「僕な食べるから。ちゃんととっといてよ。」

「嘘よ。冗談。お仕事行ってらっしゃい。」

僕は萌に見送られながら、玄関の扉をそっと閉めた。まだ寝てる子が起きないように。そう願いを込めた。


車の仕事っていうのは水物だ。刻々と変わる状況に対応していかなければならない。こんなの人間によくできるもんだと痛感することが多い。車についているオーディオから流れてくるラジオに耳を傾けているとDJがこんなコーナーを立ち上げた。

「ギャンブルリクエスト」。リスナーの送ったリクエストが番組内で放送されるというのは変わらないのだが、リスナーはメールに「放送されたら◯◯します」という目標を添付する必要があるというものだ。

(・・・。)

僕は少し考えてから、メールを開いた。手慣れた手つきで文章を打ち込みぱぱっと送信完了させる。

(どうせ読まれること無いでしょ。)

あんまり期待はしていない。

メールを送ってから何分経ったか。読まれることを期待しつつも読まれないだろうという気に苛まれていたとき、

「ギャンブルリクエスト。この方。ラジオネーム「いいよめ」さん。」

「あっ。」

思わず声が出た。それに隣にいた浜名さんが反応する。

「どうかした。」

「いや、何も。」

「セイコーさん。初めまして。初投稿です。このリクエストがかかったら今日帰ったら妻に「何時もありがとう。そして、愛してます。」と言います。リクエストは恋でお願いします。いやー、これはもう読めといっているようなものでしょう。日々の感謝大事ですよ。それではリクエストお答えしましょう。」

(言うはめになったなぁ・・・。)


仕事が終わると2030をまわる。これで帰ったら家には2100だなぁ。そう思いながら帰路につく。

玄関の扉を開け、

「ただいま。」

と言うと、「お帰り。」とやけにニコニコしながら萌が迎えてくれる。

「どうしたの。そんなにニコニコして。」

「えー。何ででしょう。」

少し考えてみる。萌が喜びそうなことはした覚えがないなぁ。出掛けるときだって普通だったし。うーん。

「私に何か言うことあるでしょ。」

「あっ。」

そう言われ、全てがつながった。

「あー、後でね。」

「今言って、今。」

「よして、恥ずかしい。」

「私しか聞いてないから。」

「・・・。うーん・・・。」

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