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勘違い

今回は一人称です。

前回、前々回と三人称にしたのですが、物凄い不評でした。


 ゴブリンに止めを刺した瞬間、体の中に何かが入り込んでくるのがわかった。おそらく、これがLvアップに関係するものなんだろう。

 たかが、ゴブリン一匹分なのに、俺のLvが低いせいなのかガッツリきた感がある。


『それでどうですか? 始めてモンスターを殺した感想は』

『いや、思ったほど、ショックとかそういうのは無いな。ゴブリンの見た目が酷かったのもあるが、やっぱ殺らなきゃ殺られるってのが大きいかな』

 

 戦いには二種類あると思っている。守る戦いと奪う戦いだ。今回のゴブリンは自分の身を守る戦いだった。そういう意味でも抵抗は少ない。


『実際、スキルによる部分も少なからずあると思うよ。日本で普通に暮らしていた俺が、敵とはいえ頭に鈍器をフルスイングできるのはさ』


 しかし、なんらかのアシストがあったにせよ俺が生き物を躊躇なく殺せたのは事実だ。

 当初、冒険者になろうと思った時に設定した第一関門は突破できた。

 ちなみに第二関門は盗賊、つまり人間を殺せるかどうかだ。

 

そういえば、Lvとか上がったのかな?


(ステータス)

――――――――――――――――


【名前】 :リンドウ

【LV】 :2(1UP)

【スキル】:★棒術 1

      ★土魔術 2(1UP)

      ★錬金術 1

       算術 2

       交渉 2

       光魔術 1

【カルマ】:-49


――――――――――――――――


『ウェヌス、Lvが上がったようなんだが』

『おめでとうございます。何か問題が?』

『いや、こんなに簡単に上がるもんなのかなって。土魔術も上がってるし』


 ゴブリン一匹でLvが上がっていたら、半年もあればカンストしてしまう気がするんだが。


『そもそも、冒険者になろうっていう成人男性がLv1というのが異常なんですよ。農夫であっても、畑を荒らすボアくらい狩ったりすることはありますし。Lv5くらいまでは戦闘を生業にしていない人でもあると思っておいてください』

『じゃあ今回はLvが低かったから、すんなり上がっただけなんだな』


 やはり、普通にLvは上がれば上がるほど必要経験値が増えていくシステムらしい。


『でも、敵を倒した時に何かが入ってきたのは分かるんだが、力が増したという実感はないぞ?』


 ファンファーレもならなかったしな。


『当然ですよ。変化が起きるのは基本的に寝ている間ですから。Lvアップによる身体の変化は多岐に渡りますから戦闘中に起きたりしたら、それが原因で死にかねませんよ?』


『え?つまり……もしかして痛い?』


『Lv1程度のアップなら寝ている間に勝手に終わってますよ。複数Lvだと、場合によってはのた打ち回る事になるかもしれませんね』


 聞いておいて良かった……。何事もコツコツが大事だよな。


『じゃあ、実感は明日の朝のお楽しみだな』


 そう言って俺は、叩き殺したゴブリンを引きづり、街道の脇に投げ捨てた。

 

 それから、街に向かってまた歩きだしたところで、街から人が走ってくるのが見えた。確実に武装しているようだ。


『ウェヌス、敵だと思うか?』


『身なりからして衛兵でしょうね』


 なるほど、ゴブリンから距離を取る時に思ったより街に近づいていたようだ。


 さて、ここからが問題だな。なんとか上手い事やれるといいが……。とにかく、重要なのは無害な存在だと印象付けることだな。そうすれば、ゆっくり説明して分かって貰える可能性も高くなる。


 向かってくる鎧を着た若い男をできるだけのスマイルで迎える。


「こんにちは、お仕事ご苦労様です」


 うん、まずは挨拶が基本だ。それは前世の会社で嫌と言うほど味わった教訓だ。


「おい、お前さっき何をした!」


 え?いきなり怒ってるんですけど……難易度ハードすぎるでしょう……。


「おい、答えろ!」

「何をってゴブリンを殺した事ですか?」


 他に思い当たる事もないしな……。


「殺した其の後だ! 魔石も取り出さず街道脇に放置したな」

「いや……えっと、忘れてました。すみません、勿体無かったですよね」


 そっか、魔石をね。ギルドかどこかで売れるんだな、きっと。


「勿体無かっただと?貴様、おちょくっているのか!!」


 ヤバイ、地雷踏んだっぽい……全然分からん、ウェヌスさんヘルプッ。


『何を怒ってるかわからん、ヘルプだ』

『魔石を取り出さずに殺したモンスターを放置するとアンデッド化します』


 オウフ……先に言っとけよ、マジで!


『聞かれなかったので』


 くそ……コイツ……。


「何をさっきからブツブツ言っている! 街近郊で故意にアンデッドを作ろうとするとは、この都市に対する破壊工作と看做すぞ」


 うわ……最悪だ、いきなりテロリスト扱いかよ。


「っちょっと待ってください、故意ではないんです。久しぶりにモンスターを殺したので忘れていて……」

「忘れていただと……洗礼の時に最初に教えられることだぞ? お前、まさか邪教の類か?」


 そう言ったかと思ったら、若い男はいきなり抜剣しやがった。

 ちょと、これは洒落にならんぞ……。


「待ってください!俺は正真正銘、光神教の洗礼を受けています。もし、お疑いでしたらカルマを測ってみて下さい」


 最終手段、カルマ頼りだ。不確定要素が大きいがしょうがないだろう。


「光神教の教えを受けている人間がアンデッドに関する事を知らぬはずがない。カルマなど調べるまでも無いッ」


 そう言った目の前の男は今にも切りかかって来そうだ。

 クソッ……やるしかないのか……こんな勘違いで殺るのも殺られるのもごめんだ……どうすれば……。


「今すぐ、その武器を地面に置け。そうすれば光神様の慈悲によって命だけは助けてやる」

 

 ………………


「……じょ、じょおう……」

「……なに?何を言っている?」

「……き、霧の女王!」


 一か八かで教えて貰った魔法の言葉とやらを使ってみた。実際、教えて貰ってから何度もウェヌスに尋ねたんだが、秘密の言葉ですからの一点張りで詳しい説明はして貰えなかったから、意味自体は俺自身も全然分からないんだけど……。


「霧の女王だと……お前もしかして自分が霧の民だとでも言うつもりか!」


 霧の民って何だよ……また知らない単語出てきたわ。でも、これはもう乗るしかないよな。


「たぶん、そうだと思います……」

「多分だと?霧の民の詐称は死刑だと分かっているんだろうな?」


 はぁ?何それ?全然分かってないんですけど。


『ウェヌスお前、まさか俺を殺すつもりだったのか?』

『何言ってるんですか? 大丈夫ですから話に乗って下さい』


 ホントこいつ……もしかしたらすっごいサイコパスなんじゃないかと思ってきたわ。


「はい、分かっています……俺は霧の民です」


 あ~これで後には引けないな……もう行くとこまで行くしかない。


「そうか……霧の……それで記憶が……。なるほど、わかりました。一旦、貴方の事を信じますので、この後、ご同行願えますか?」

「あ、はい」

「それでは、先程のゴブリンの魔石をまず取り除いてから街まで案内します」


 そう言うと、彼は俺が来た道を戻り始めた。


『あれ? これ何とかなったか?』

『そうですね、あとはリンドウが霧の民として上手い事演じれれば』

『はぁ……やっぱり俺って霧の民じゃないのかよ……』


 もしかしたら、俺が知らないだけで、俺は霧の民ってやつなんじゃないかと思っていたが、それは甘かったようだな……。


『アイツがゴブリンを解剖してる内に一刻も早く霧の民について教えろ』

『う~ん、しょうがないですね。本当は秘密なんですが、特別ですよ』


 特別も何もそれを知らなかったら俺はこれから死刑だぞ?


『霧の民というのは、簡単に言いますと……〈集団神隠しの被害者〉って事ですよ』


 ウェヌスは勿体つけて言ったが、聞いても何もわからないままだった。





 



最後までお読み頂きありがとうございました

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