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こんにちわ、異世界


目を開けるとそこは、教会らしきところだった。

ステンドガラスには陽の光がさんさんと差し込み厳かな雰囲気を醸し出していた。


…ドレスを着たアマテラスちゃんの銅像と。


「え、お姉ちゃん!お姉ちゃんどこー?!」

「よっしゃ、来たぜ!異世界!!」


——この、ガヤガヤとした雰囲気がなければ。


アマテラスちゃんは可愛い。確かに可愛い!だが、日本人の顔にゴスロリはないだろ!ゴスロリは!

もっと、ましなドレスがあったと思うんだよな…。


青が銅像を見てなんとも言えない顔をし。

周りの人たちの不安と苛立ちがMAXになろうとしたとき。


——その人は来た。


「神々の使徒よ。よくぞおいでくださいました、“知と建造物の国ファステスト”へ。私はここで働いている神官、名をカルネと申します。」

そこにはゆたりとしたシスターの服を着た色気溢れる少女がいた。雪のように白い肌。真っ赤な唇。頬は薔薇色。

そして…ボイン。シスター服の上からでも分かるはち切れんばかりのたわわなボインがあった。


青たちは急な展開に。いや、目の前のカルネの色気に女も男も動きを止める。

そして、カルネは口を挟む間も無く続ける。

「混乱もあると思いますが、まず現在の召喚による分断についてお話しします。

ごめんなさい。一箇所に大人数を転移させると混乱が生まれるため、私たちの要望によりランダムでAXIS・WORLD内の4つの国に転移させてもらいました。友達や兄弟と合流するのが大変だと思いますが、頑張ってもらいたいです。」

——なるほど。よく考えられてるな。まぁ、初期に大人数でチームを作っての狩場の独占や影響力の高いグループを作らないためにもあるんだろうが。

青はカルネの話を聞き、まぁ同然の処置だなと1人うなずく。

…カルネの揺れる胸を見ながら。


「あ、あの。4つの国の名前と場所を教えて欲しいのですが…。」

鼻の下が伸びきったエロガキがカルネに質問する。


「分かりました。

AXIS・WORLDの真ん中には位置する彼方の塔という魔物を生み出す塔が存在します。

その塔から見て北に位置するのが、今我々がいる“知と建造物の国ファステスト”

東に位置するのが“魔法と自然の国セカルド”

南に位置するのが“美と水の国サードマリン”

西に位置するのが“鉱物と武の国フォスト”です。

もちろん、どの国でも友好関係にあるため自由に行き来できます。

貴方方には彼方の塔を、踏破していただきたいのです。」


序盤は彼方の塔に行くまでに魔物を倒し、レベルを上げ。

行き詰まったら彼方の塔や周辺の魔物狩りでレベル上げ。

なるほど、よく出来たシステムだな。

——まぁ、俺には関係ないが。


「質問は他にはないようですね。これは神からの餞別です。皆様に神のご加護があらんことを。」


ピコン!

〈カルネから1000ドルとファステストの地図と幸運のブレスレットを受け取りました。〉


「幸運の腕輪をつけると自身の幸運値が上昇します。また、ファステスト内に限りですが商品の値引きもあるのでつけることをオススメします。」


そう、カルネが言い終わると同時に後ろのドアが開く。そこは、まさしく異世界。様々な種族が街を歩いていた。

皆が、我先にと駆け出す。

目指すは優勝。彼方の塔を誰よりも早く踏破するために。





「…おや?貴方は他の皆様のように行かないのですか?」

カルネが見つめる先には1人の少年。

先ほど貰った地図を片手に持ち椅子に座りブラブラと足を揺らしている。


「俺は勝つために最短距離で進みたいんだよね。」

「それなら、ここにおらず武器屋に行き草原で敵を倒すことをオススメしますよ。」

カルネは柔和な笑みを浮かべながら応える。

「俺もね、最初はそういう感じの出発を予想してたよ?でもさ、目の前に強くなるためのエサがあるなら飛びつくしかない思わない?」

「ごめんなさい。なんのことをおっしゃってるのか分かりませんね。」

困った顔をし、首をかしげるカルネに、青は尚も続ける。


「俺の職業、考古学者なわけよ。まぁまだ、レベル1だけど他の職業よりも秘密を探るのには向いてるんだよねー。」

カルネは一瞬ピクリと頬を動かす。

「予想外だったでしょ。だって攻略のために皆彼方の塔攻略のために役立つ職業選ぶと思ってただろうし、まさか役に立たなさそうな考古学者を選ぶなんて思いつかないわな。」

ザンネンでした、そう言いながら青は立ち上がりカルネに向かって歩く。


「まず、1つ目の疑問。

どうして、君は1人なんだ?しかもただの神官。神官長でもなく。」

そう、俺たちは神の使徒なのだ。言い方は悪いがただの神官1人ごときに任せる案件ではないはずだ。

「あと、君の顔をジッと見つめているたまに一瞬ユラリとゆらぐんだよ。

ここから導き出されるのは…

——魔法での変装。」

青は無表情のカルネの顔を覗き込み嗤う。

「そーすると、おかしなことになったな。

疑問、2つ目。

どうして、変装する必要がある?

ここの神官ならば変装なんてする必要あるわけがない。

考えられるのは、教会の敵対勢力により嫌がらせか…敵国のスパイか(・・・・・・)。」


「豊かな想像力ですね。しかし、私が仮にこの教会の者でないとして…私は何のためにここにきたのでしょうか?私は別に貴方に何もしておりませんよ。」

余裕の表情で、問うカルネに、青。

「そう、君は何もしていない。まだ…ね。君が幸運のブレスレットって言って渡したこれ。鑑定したら面白い結果が出たんだよ。所属変更のブレスレット”って。まぁ、鑑定のレベルが足りなくて詳しい効果はわからないけど。」

カルネは顔を強張らせる。

このブレスレットは高レベルの物だ。最低、鑑定のレベル5はいる。今来たものにそんなレベルあるわけがっ!

「ここに来てからずっと鑑定してたから今の鑑定レベルはもう5だよ。いやぁー、考古学者っていいね。鑑定にMP使わないなんて!」

まるで、心を読んだかのように青は応える。

——この男はやばい。

カルネは無表情を演じながら冷や汗を流す。



「でも、名前だけでもまぁだいたい効果は分かる。

何かの条件を満たせが、俺らの所属がとごかの国に変わるとかそんなところだろ?」

青は悠々と歩きながら続ける。

「これは、2つの争いだ。

俺たちの誰が早く彼方の塔を攻略できるか。

そして…お前たち国同士のどの所属の国の者が攻略するか。

まぁ、当たり前だよな。これによって発言力とかは違ってくるし。そして、敵の力を削ぐ最適な方法はその国の所属の者を0にすればいい。」


「仮に…あなたの想像通りだとして。所属を変更させて私になんの利があるのです?私に何も得はないはずですが。」

まだ、こいつは想像で言っているだけだ。まだ詳しい事情はバレてない。こいつが、ベラベラと喋っている間に息の根をっ!

青の目を盗み、懐から短剣を取り出そうとするカルネに。

「君になくても君の雇い主には利がある。…おぉーっと。不遜な動きをしないで貰いたいなー。間違って大声で人を呼んじゃうかもしれないじゃん?そんなの…どちらも望んでないでしょ?それに、俺を殺しても意味ないよ。復活するしな。」

青はニヤニヤと笑い言う。


「…精神だけ殺す方法も別にありますし、魔法でこのまま息の根を止めても良いのですよ。」

暗に、立場をわきまえろと言うカルネに、青。

「確かに、精神だけ殺す方法もあるのかもしれない。だが、圧倒的に時間が足りないだろ?」

青は遠くの方で聞こえる足音に耳をすます。

これなら、あと5分後くらいには本物の神官たちが来るであろう。

「あと、ハッタリはやめたほーがいいよ。ここでは魔法は使えないだろ?既に使った魔法ならまぁ維持に気をつかえば使えるのかもしれないが。」


《魔導遮断の結界

——ここでは魔法を使うことができない。》


青は教会の壁を鑑定しながら嗤い告げる。

まだ、鑑定のレベルが足りなくて簡素な説明しか読めないがこれで充分だ。


「…あなたの要求はなんですか?」

暗に認めるカルネに青は応える。

「要求なんて物騒な。まぁこれはただのお願いだよ。俺に他の国に行けるそれぞれ転移石と君が所属する国の禁書を読める権利。この2つをくださいなー。」

「なっ!禁書なんて私の力でどうこう出来るやつでは!」

顔を引きつらせるカルネに、青は追い討ちをかける。

「君の雇い主ならその力あるでしょ?てか、その雇い主にもどーせもうこの状況連絡してるんだろ?さっさと許可書くれよ。」


「連絡なんてそんなこと『フハッ。面白い男だな。よいカルネ。後は余が話す。』

「…わかりました。」

ここからが正念場だと気を引き締める青に。

『まぁ、貴様の要求はわかった。認めよう。ほれ、これが証明書と転移石だ。』

黒幕はそうあっさりと告げ、転送させてきたのか青の手には証明書と転移石が握られていた。

あまりにもあっさりとした展開に逆に裏があるのではと警戒する青に。

『あぁ、気にするな。別に裏などない。楽しませてくれたお礼だよ。』

男は楽しそうにまるでゲームのように応える。

「そう、あっさりと信じていいのか?俺が言いふらすかもしれないぞ。」

『君はそんなつまらないことをしない人間だろ?それに、もし君が言いふらしたとしても支障はない。』

青は気圧され一歩後ずさる。


『まぁ、交換条件を加えるとするなら…。君の名前でも教えてもらいたいな。』

「はっ、俺の名前を聞きたいならもっと大きな物を貰わなくちゃな。例えば…お前の名前とか。」

「お前!口の使い方にきをつけろっ!」

青のあまりの傲慢不遜な言い方にカルネがキレる。


『よい、カルネ。ただのガキの戯言だ。まぁ、次会うときはその軟弱なステータスを観れる物にしてくるがよい。そしたら、相手にしてやろうぞ。』

青の虚勢を見抜き、相手にもならないと一笑する男に青は唇を噛む。


そして、瞬きし次に目を開けた時には


…そこには誰もいなかった。




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