其の十一
――。
――。
――。
『――夢、かぁ』
女が眼を覚ます。
『懐かしいなぁ。楽しかったなぁ』
寂しそうにぼつりと言った。そして欠伸をし乍ら娘を見る。娘は女の横で眠っていた。その横には別の少女が眠っている。
『ちゃうかな。今も、それなりに楽しい、かな』
――けれど、出来ることなら、あの人も共に居られたなら、どんなに良かったか。
『ま、しゃあないわなぁ』
苦笑と共に髪を掻き揚げる。
いつしかぎこちなかった女の口調は、夫のそれと何ら変わらないものになっていた。それだけの時が過ぎたのだろう。
あれから、女は娘と共に夫との思い出の詰まった家を離れた。辛いから。悲しいから。どんなに待っても夫には会えなかったから。
夫を墓に埋めてやる事すら出来なかった。
家を出た瞬間、少しだけ身体が軽くなった様な気がした。もう、身体は無いのに。
それは、女が自分で自分を縛っていたのだろう。男の家に入ったあの日から。
自分の我儘から生まれた娘は、成長している。人間のそれとは異なるけれど。確実に成長し続けている。偶に少し、口が達者になり過ぎたとは思うけれど。
娘は人間になりたいと言った。自分の読んで聞かせた本の影響だろう。だから、旅を続けている。人間になれるのか如何かは判らない。けれど、その願いは叶えてあげたいと思う。
今はそれが、それだけが女の存在理由になっている。
二人の旅はそれまで続くのだろう。
――さて。思い出に浸るのも此処までやな。
すぅ、と大きく息を吸い込む。そして。
『いつまで寝とんのや!とっとと起きんかい!』
平素通りの朝がやって来る。
そのこはいつしかなんになる
そのこはいつしかただのひと
ひとりでいきてゆくのかな
いつしかのぞんだそのひとは
そのこにおいてゆかれます
かなしいけれどもしかたがない
さびしいけれどもしかたがない
それがそのこのためだから
それでも
人形をつくろう
人形をつくろう
人形をつくろう
いとくり 創造記 了