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妄想夜  作者: 如方りり
6/9

肉欲ドラッグ

私は大がつくほど運動嫌い。

その上、超がつくほど食べるのが好き。

ダイエット?何それ?


でも、人並みにおしゃれしたいし、見苦しいデブにはなりたくない。

太らない体質の人なんているのか?ってくらい、私の身体は摂取したもの全てを必要以上に吸収して蓄えている気がする。

言い訳するみたいだけど、人より太りやすいと思ってる。

人一倍、食べることが好きなのに理不尽よね。


肉が食べたい!でも身体の肉は減ってほしい!

人はワガママと言うけど、欲望に抗えないこのジレンマを、私は『肉欲』と呼んでいる。


肉欲に悩まされる日々から救ってくれたのは、ある取引だった。


ー貴女の肉を売ってください。支払いはトラブルで。


姿の見えない相手は、私にだけ聞こえる声で話しかけてきた。


脂肪を引き取る代わりに、それに見合うトラブルを身体に置いていくってシステム。

面白そうじゃない。


まずは1kgで試した。対価は、ほくろ。

小鼻の横に、今まで無かった小さなほくろがポチッとできた。


じゃぁ3kgはどうだろう?今度は、爪の形。

細長かったのが丸っこい爪になった。


なるほどね。自然治癒できない変化の法則なんだ。

だけどまだまだトラブルって程じゃない。


少し痩せた私は前より誘われる事が多くなったし、自覚するくらい調子に乗った。

女子会。合コン。デート。

見栄を張った豪華な食事をご馳走になって、美味しいお酒を飲み、また太る。


そして肉を売る。

何度も何度も何度も何度も。

便秘体質になって、冷え性が酷くなった。

体毛が濃くなり、汗の量が増え、バストのサイズが落ちた。



もうすぐ私は結婚する。

ウエディングドレスを着るために最後の取り引きをして、スレンダーな身体を手に入れた。

これで肉を売るのはおしまい。


それなのに、トラブルが見つけられない。

どこが変わったの?

もしかして病気なの?


人間ドックに行ってあらゆる部位を調べてもらった。

数値も正常だしポリープもない。

自覚症状なんてないけど、目に見えない以上自分では見つけられない。

まだ発見されてないような新種の難病なのかも知れない。


絶対、どこか悪いはずなんです!もっとちゃんと調べてください!


…あぁ、また来たよ。どこも悪くないのに。


眠れない毎日を過ごし、過食を重ねた。

残ったものは、使わなかったウエディングドレスとトラブルだらけの太った身体。


お願いします、私は病気なんです!

検査してください!


…可哀想に。ストレスだろうね。



誰か教えて。

私は最後に、何を対価にしたの?

♠︎美への執着は、ある種のドラッグのよう。健康な心は失いたくないものです。

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