大学デビュー計画
切実に願う。
中学高校と地味に過ごしてしまったが、大学こそは華やかな日々を過ごしたい、と!
サークル。ゼミ。飲み会。そして…。
そして出会う初めての彼女。
(ついに念願の三次元。)
輝かしいキャンパスライフを送るために、いわゆるリア充たちはどのようにしてその生活を手に入れたのか。
死に物狂いで調べまくった。
大学の寮や近隣の学生アパートで複数のターゲットを見つけては、あんパンと牛乳を持って張り込み(俺は形から入るタイプなんだ)、靴を二足ダメにするほど歩き回った。疲労骨折寸前だ。
まさに刑事の鏡。将来は警察官もいいかも知れない。努力家な俺に向いている気がする。
自宅から通学できる距離だが、まず一人暮らしを開始した。
いざという時都合がいい。
酔い潰れた友達を連れて帰って朝まで介抱し、酔い覚ましの味噌汁を作る。具は、肝臓に優しいしじみ。そのために単発で料理教室にも通った。あいにく、しじみ汁は習わなかったがパウンドケーキと同じ要領でできるだろう。
もし、酔い潰れたのが女の子だったら…。それも大丈夫だ。新品の下着とパジャマは用意してある。キミのシャツ借りようかな、なんて言われた時のためにそれも新調した。是非パリッと糊の効いたシャツに袖を通してほしい。
シンプルな家具で揃えた部屋には、おしゃれな観葉植物。そして間接照明とアロマ加湿器。俺の部屋はいつでもティーツリーの香りに包まれた癒しの空間だ。
ちなみにこれは、ネットで調べた人気のラブホテルを参考にした。実際に現地調査にも入った。
もちろん一人だと怪しまれるからちゃんと連れと行ったよ。いもうとの、みよ子と。
みよ子はジャンルで言うと人形だが、身長は150センチ近くあるからな。抱っこしてれば普通のカップルに見える。
準備は整った。
あとは入学を待つのみだ。
おっと、誰か来たみたいだな。
(新聞だったらとらないぞー。)
…ん、警察?
スカウトにしては気が早くないか。まいったな。
…え?違う?
あ、はい。学生アパートの前で…はい。いました。俺ですね。
いや、後をつけたっていうか…その…。
ストーカー!?違いますよ!
ラブホテル…あ、はい。行きました。えっ、あれは、いもうと…じゃなくて、人形っていうか…。
は…任意、ですか?
…。
♠︎張り切りすぎて空回りすることって、ありますよね。