縦穴と宇宙2
・・・リーン、リーン、リーン、リーン
・・・電話?・・・今何時?
ベッドから体を起こし、目を開けるがまだ真っ暗だ。
リーン、リーン、リーン、リーン・・・
まだ鳴り続けてるなー・・・。
はあ、仕方ない。
疲れが取れきれていない重い体を動かす。
ベッドから這い出て、手探りでスイッチを探す。
カチッ
・・・眩しい。
気を抜けば今にも閉じそうになる目をこすり、時計を見ると午前3時を回ったところだった。
リーン、リーン、リーン、リーン・・・
いつから鳴っていたんだろう。
こんな深夜、いや早朝か・・・に電話をかけてくるというのは
まさかセールス・・・なワケないか。
いたずら?これまでいたずら電話などかかってきたことは無いしなあ。
家族の誰かが事故にあったとか・・・いや、それなら携帯電話にかかってくるはず。
・・・もしかして・・・。
自分の考えが正しければ、電話の主はあの人しかいない・・・。
瞬時に眠気が吹っ飛び、心臓の鼓動が大きくなる。
慌てて部屋を飛び出し、リビングに走る。
リーン、リーン、リーン、リーン・・・
ガチャ
「・・・はい、三月です。」
「もしもし、賢木です。夜分遅くに申し訳ない。」
「さ、賢木教授!お電話を頂いたということは・・・」
「うむ、可能なら明日こちらへ来てはくれないか。見せたいものがある。それを見た上で君の考えが聞きたい。」
「はい!分かりました。明日すぐにでもそちらに伺います。」
・・・・。
・・・・・・・。
結局、朝まで一睡もできなかった。
ずっと興奮が抑えられないのだ、目が冴えて、頭はかつてないほど澄み切っている。
朝が待ち遠しかった。
もし、自分が車を持っていたらすぐにでも飛び出していただろう。
こんな興奮状態で車を運転したなら、・・・事故を起こしていたかもしれない。
車を持ってなくて良かったな、なんてバカなことを考えているうちに電車が動き出す時間になったようだ。
くそっ、マズイなあ・・・。
警戒区域内へ入るための立入許可証を発行してもらって、すぐに電車に飛び乗ったのだが、今になって眠気がやってきたのだ。
なんとか目をこすり耐えているが、外の光が眩しくて目を開けていられない。
まあ、どうせ目的地は終着駅なのだ。
少し眠ろう・・・。
・・・・・・・・・・・・。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。
「お客様、起きてください。終着駅ですよ。」
ハッと目を覚ます。
乗務員が起こしてくれたようだ。
「・・・すみません。」
慌てて電車を降りる。
もうホームには一人もいなかった。
階段を登り、改札口を出る。
電車で寝たのが良かったのか、疲れが取れている。少し首が痛いが。
ここはまだいさぎの市の警戒区域外のため、周りには歩いている人がちらほら見える。しかし、以前に比べて明らかに人が少なくなってきた。
おそらくは、不発弾の爆発で縦穴が出来たという噂が広まったためだろう。
不発弾から出たかもしれない有害物質に心配する人たちが遠くの街へ移り住んで行き、今では街の活気が完全に失せてしまった。
「タクシーは・・・やはり居ないか・・・。」
この人の少なさだ、営業もできないのだろう。
前回来たときも居なかったが、どうも期待してしまう。
検問所はここからすぐ近くだが、検問所から縦穴まで歩いて行くには遠い。
なんせ縦穴を中心に警戒区域が設定さているのだから。
「仕方ない、歩こう」




