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本編第6話より クロヤ視点

第6話 「前を見て、笑っとけ。それが俺の、愛情だ。」より、クロヤ視点


「…そうか、ご苦労だった。ちゃんと墓を作ってやらなきゃな。」


雷が鳴る音の空間に、低い声が響いた。雨が降っているのもあるのか、その声の響きは水の振動で震えているように聞こえた。


「今日はもう…休んでくれ。後はこちらで保護する」


今出来る精一杯の思いやりだ。深入りすると雨になる。


「子孫はどうする?一緒に保護するか?」


あいつも、子供を放って寝てしまうとは酷い奴だ。


「おやすみ」ぐらい言ってやったらどうだったんだ。


「…ああ、お願いする。そっちの方が、そのジエンとか言うエルフ(キャット)も、喜ぶだろう」


そう言うと電話の向こうから鼻をすする音が聞こえた。向こうでは既に雨が降っているようだ。


電話を切る。雷の音がさっきよりうるさくなった。


「…ジエン」


故人の名を呼ぶ。彼とは真反対だったが、同情する。


何となく、壁に吊ってあるカレンダーを見る。


指差した日にちの週は、あのどこまでも自由を追い求めた奴が提案した事を初めて実践してみる週だった。


「…間に合わなかったか…。この週さえ過ぎれば、ジエンは本当の意味で自由だったと言うのに…」


運命と言うのは本当に怖いモノだ。こっちの事情関係無しに襲う。食らう。


足を動かして、いつも外で着ているコートを引っ張り出し、物で溢れかえった部屋を抜け出た。


長い廊下を真っ直ぐに歩いて行くと、知っている顔と出会う。


「クロヤ様」


中性的な声の主が呼び止める。立ち止まるとその人は目を開きクロヤを確認する。


「…クロヤ様、どうされたのですか?」


「…アマノ…それはどう言う意味なのだ?わざわざ目を開いて我を見る事に何か関係があるのか?」


「…瞳が、雨に濡れてらしたから…」


そう言い目を逸らすアマノ。


そういえばさっきカレンダーを見たところから視界がぼやけていた。


目を擦ると手に液体が付いた。


「我は…泣いておったのか?」


考えるごとにどんどん視界が曇っていく。溢れてきた感情を服の裾で拭い、上を向く。


そして、また歩き出した。


「クロヤ様、何処へ行くのですか?」


アマノが心配そうな声色で言う。クロヤはもう止まることも振り向くこともない。


「仕事だ」


それだけ言って外へ出た。


雨に濡れながら目的地に向かう。


目から溢れ出ていた感情も、今では本物の雨と化している。


せめて、顔ぐらいは見せてくれと、クロヤは微笑んだ。


1分後、赤くなった天使と雨に濡れた少年が見えた。







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