夜の影
ダイアは衝撃波によりパラパラと舞う砂埃の中で立ち尽くしてたいた。
しばらく倒れていたシアは勢い良く立ち上がると言った。
「いやぁ、参った参った!降参です!」
再びヘラヘラとにやける。
「…」
「いやいやいや!もう戦いませんって!それにしてもあなたも強いんですねぇ!えぇ、正直見くびってました!」
ダイアはシアを少し睨むがすぐに表情はほころんだ。
「では、お詫びと言ってはなんですが、いいニュースと悪いニュースどちらが聞きたいですかぁ?」
こっちは殺されかけたんだぞ!と突っ込みたいところではあるが、ニュースというも気になる。
そこでダイアが口を開いた。
「…じゃあいいニュースから」
「かしこまり〜♪ではいいニュースはですね、私があなた達と同行すると言うことでーす♪」
「はぁ!?」
俺は思わず声をあげてしまった。
仲間が増えるのはいいがこいつは…。
「そして、悪いニュースなんですけどね…」
シアは思う存分にもったいぶってから言った。
「この先にあるディアナの街、そこで武道大会があるんですねぇ」
俺はそれのどこが悪いニュースなんだと言おうとしたがその前にシアが口にした言葉に俺は凍りついた。
「そこに、あなたと同じ魔剣士が出場して対戦相手を滅多斬りしたとか…」
ゴクリと生唾を飲む。
ん?待てよ、参加する前提で話が進んでないか…?
「というわけでですね、あなたも武道大会に出場しましょう!」
森に俺の絶叫が響いた。
「ぐあっ!」
「小汚い盗賊風情が私に喧嘩を売ろう等とは、無礼もはなだたしいですわ」
最後に盗賊の頭の首をとると、すぐ隣にいたクロロの前髪を掴んだ。
「さっ、ボスがお呼びですわよ」
「は、離せ!僕はもう戦えない、こんな、こんな力じゃ…」
拳をギュッと握り締めたクロロの姿をみて、その黒いゴスロリの少女は苦虫を噛み潰したような顔をしてクロロを蹴り飛ばした。
「あなたみたいなクソ野郎を見ていると吐き気がしますわ、さっさと死んで頂戴」
少女は抵抗するクロロの前髪を再び掴み、突然現れた光に包まれた槍でクロロの体を貫いた。
「はぁ、疲れた…ダイアとシアはそっちのテントで寝てくれ」
「…わかった」
「了解しました〜!さて、ダイア〜ちゃ〜ん今夜は寝かせないぞぉぐへへ♡」
「…やっぱり嫌だ」
好奇心の塊であるシアにダイアはあまりいい印象は持っていないようだ。
ワシワシと襲ってくるシアの両手を的確に捌く。
やれやれと思いつつ、俺は床についた。
深夜…
虫の鳴き声が響く森の中。
俺は異変に感づいて、起き上がった。
全く風がない夜で、擦れる草の音も聞こえない。
しかし、感じる、強大な魔力。
敵か?
俺は静かに剣が収まった鞘をとり抜刀する。
しばらくすると、周りの大きく茂みがガサガサと揺れ出した。
「…っ!」
「静かにして頂戴」
背後から耳元で囁かれている。
「ディアナの街で開催される武道大会、あなたを待ってるですって…」
そう囁いてその声の主は消えた。
「おい!一体誰…が…?」
ふりかえった時にはそこには何もなく、平和な夜が戻っていた。
いつの間にか感じていた魔力も消えていた。
「一体…」
俺は謎の人物がいた場所を見つめ、握り拳を作った。