対決
「君の実力はそんなものなのかい?」
「…チッ!」
再び剣と刀がぶつかり合う。
だがしかし、悔しいが総合的なパワーではクロロの方が上だと見る。
「ア・ジノゾケハーブ・クロキス…」
背後からダイアの詠唱が聞こえる。彼女にも無理させてしまってはいけない。
そう思い俺は、一旦距離を取った。
「…なにかする気かい?」
俺は剣を両手で持ち、敵へと向けた。
俺が手の先から魔力を込めると、その剣は、縦にまっぷたつに分かれた。
「…へえ、そんなからくりがあったのかぁ」
クロロは相変わらずヘラヘラした態度で、俺に刀を振った。
俺は刀を左手に持った剣で受け流し、右手の剣でクロロの無防備な左腕を狙った。
クロロは身を翻し、紙一重で躱したが、俺の攻撃は終わらない。
剣を躱して体勢を崩したクロロに物凄いスピードで連撃を叩き込んだ。
「らぁぁあっ!!」
いくらクロロでも全撃躱しきれず、身体の数カ所に切り傷を負った。
「いてて、危ないねぇ」
クロロは傷口を抑えながら言った。
「今度は僕の番だね」
危険を察知して素早く上半身を捻った。右のこめかみを斬撃がかすって、少量の血が出る。
土煙が消えた先を見ると、ぱっくり地面が割れている。
「鎌鼬」
目に見えるくらい強烈な斬撃がうねりながら空気を斬ってゆく。その名の通り、鎌鼬のようだ。
俺は斬撃を叩き落としていくが、キリがない。次から次へと鎌鼬を放ってくる。
(しょうがない、奥の手…)
俺は両手に持った剣の刃を擦り合わせた。
「させないよ!」
容赦なく鎌鼬が襲ってくる。
俺は大きく飛んで、空中へ舞い上がった。
「はあぁぁぁぁあっ!!」
両手の剣が赤く発光し、炎の渦を作り出す。
炎の渦は一気に成長し太陽のように地面を照らした。
「りゃぁぁぁぁぁぁぁあ!!!」
俺は両手の剣から出る渦を操り、クロロへと向けた。
「くっ!」
クロロは黒い竜巻を繰り出したがもう遅い。
瞬く間に大きな炎の渦に巻き込まれた。そして炎は大きく広がり、爆炎を放った。
俺は二つに分かれた剣を再び一つに合わせて鞘に収めた。
敵も爆炎をポカーンと見つめると、クロロがやられてしまったのを理解したのかすたこらサッサと逃げ出した。
「あーあ、馬逃げちまったな」
「…うん」
俺は大きくため息を着くと、ダイアが立ち上がった
「…そうだ」
俺が頭に?を浮かべていると、ダイアは詠唱を始めた。
「…手を握って、目を閉じて」
俺は言われるがままにした。多少顔が火照っているかもしれないが、しょうがない。
「…目を開けて」
先ほどの荒い崖の景色が一掃され、辺鄙な町の景色になった。
「なるほど!空間転移か!」
ダイアも少し顔を赤くしたように見えたが、変わらず無表情である。
「…宿探そ…」
「ああ、そうだな」
立ち上がって、石畳につまずきそうになったが、なんとか立て直した。
そして、宿探しが始まるのであった。
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「へぇ〜、空間転移か」
謎の人物が針葉樹の上から双眼鏡を覗いている。
「ん?あの男どっかで…」
その時、乗っていた針葉樹の枝が折れて、その人物はドスンという音共に落下した。
「あいたたた…ははん?思い出した♪」
謎の人物はよっこらせと起き上がると、森の奥へと駆け出した。