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第9話「50M走と犬飼の妹」

沢山の方に読んでいただける機会に恵まれたようで、とても嬉しいです!皆様読んでいただきありがとうございます!ブクマや感想や評価嬉しすぎます!


報告:地の文の重複表現、誤字、などを修正いたしました。また、子供っぽくないという指摘を頂いたので、慊人以外の子供の台詞を、平仮名に変えたり、言い回しを変えて子供らしくしてみました。※内容や話の流れに変更はありません


一度これで様子を見たいと思います。意見や指摘をいただいた方々、本当にありがとうございます!かなり参考にさせていただきました。

「犬飼、ここからはボイスレコーダーで録音していいぞ。雅彦、発言には気を付けろよ」

「はい!ありがとうございます樫宮様!」


 犬飼は狗神からボイスレコーダーを受け取ると、嬉しそうにスイッチを入れる。

 なんか馬鹿っぽくて、憎めないやつだな。

 俺はそれを確認してから、結城と雅彦に、委員会で配られたプリントを見せた。


「一人何種目出てもいいらしい。俺はポイントが2倍になる騎馬戦とリレーには絶対出ようと思っている」

「へーけっこうおもしろそうだな。おれたちA組は黒チームか」

「結城は玉入れなんてどうだ?」

「そうだね、それならぼくも活躍できそうかな」


 運動会が嫌いだと言っていた結城だが、結構やる気を出してくれているようだ。


「ところで、雅彦。うちのクラスは運動得意な奴は多いのか?」

「うーん、高比良くらいしか思いうかばないな。おれたちのクラス体育はびみょうかもな」

「雅彦は運動得意なんだよな?そうなると俺と雅彦が出来るだけ競技に出てポイントを稼ぐしかないか」

「へへ、まかせてくれよ」


 プリントを確認しながら俺が何競技に出れるのか計算する。

 50M走:男女2人ずつ、100M走:男女2人ずつ、玉入れ:男女混合8人、借り物競:男女2人ずつ、騎馬戦:男女4人ずつ、障害物競争:男女1人ずつ、リレー:男女混合5人で、俺のクラスは29人中13人が男子だから……。

 うん、全員割り振っても六枠空きがあるな。


 全部に出たいところだが、子供の体であることを考えると、体力的に俺と雅彦と高比良で3競技ずつ出たほうがいいかもしれない。


「取り敢えず明日の体育の時間で、みんなの足の速さを測って決めるか」

「そうだな、あしたの体育がたのしみだ」



 次の日。

 体育の時間に坂条教諭に事情を話し、クラス全員の50Mと100Mのタイムを計ることになった。

 この結果で50M走、100M走、1000Mリレーの選手を割り振るつもりだ。

 まず50Mから二人ずつ計ることになったのだが、雅彦の言う通りみんなのタイムはそれ程早くない。

 殆どの者が10秒を切れていないのだ。小学1年生なんだからこんなものか?


「慊人、みとけよ?おれは早いぞ」


 雅彦は俺にそう言うとスタート位置についた。そして今までの奴等とは比べ物にならない速さで駆けた。やだ、かっこいい。

 一緒に走っている奴とはかなりの差をつけて雅彦はゴールする。


「慊人!さいこうしんきろく!」


 雅彦はストップウォッチを持ってゴールから俺のいるスタート位置に嬉しそうに戻ってきた。

 表示されているタイムは9秒1で、今のところこのクラスで一番早いタイムだ。自分で運動が得意だと言うだけはあるな。


「凄いじゃないか、トップだぞ」

「へへ、慊人におれをたおせるかな?」

「……慊人ならよゆうだよね?」


 得意げな雅彦の言葉に、結城が不安そうに俺に聞いてくる。結城よ、そんなに俺に勝って欲しいか。


「まかせろ結城、俺は負けない!」

「そ、そうだよね!」

「慊人の力見せてもらうぜ」


 ちなみに結城のタイムは11秒8で、凄く遅かった。

 他には鴻巣が10秒ジャストでまぁまぁ、高比良が9秒8で女子のトップだ。

 花屋敷は今俺の目の前で盛大に転んだ。そしてお得意の号泣をしながら鴻巣に連れられて保健室に行ってしまった。まさかの記録なし。うん、お前も玉入れね。


「俺以外みんな測り終わったか。結城、俺のタイムを測ってくれ」


 俺はみんなが測り終わるのを確認して、結城に測定を頼みスタート位置についた。クラスのタイムを把握しておきたかったので最後に走ることにしたのだ。

 騒がしかった運動場は静まり返り、俺に視線が集まる。もしかして俺って自意識過剰なんじゃないだろうか?とも思うが、間違いなく皆の視線が突き刺さっている。

 今までの軽い気持ちは吹っ飛び、観衆に晒されていることを意識した途端、緊張が俺の体を満たす。


 ただ体育の時間に50M走のタイムを計るだけだというのに、まるでアスリートになって競技に参加しているような錯覚が襲う。


「よーい!」


 50Mも離れているというの、静かな運動場に結城の声がよく響く。


「ドン!」


 俺は結城がドンの”ン”を言い終わる前に地面を蹴った。完璧なスタートだ。

 ただひたすら前へ前へと駆ける。遅いのか早いのかは判断がつかない。

 走る前の緊張感は走り出した瞬間に霧散し、意識することなく、ただひたすら走ることに集中する。

 もう周りの声は全く聞こえない。


 俺は勢いを殺すことなく全力でゴールラインを越えた。そのためかなりゴールから離れた場所まで行ってしまった。



「結城、タイムは!?」


 俺は息を整えながら結城に聞いた。


「す、すごいよ慊人!8秒5だよ!」

「う、うそだろ、たしかに早かったが」


 結城が心底嬉しそうに声を上げ、雅彦が驚く。するとそれに続いてクラスメイトから歓声が上がった。


 「慊人様、さすがですわ。わたくしかんどうしました」


 歓声の中から何故か高比良が出てきて、まるでクラスを代表するかのように俺を祝福してくれた。俺はこの活躍を花屋敷と鴻巣にも見せつけてやりたかったなと思った。

 まぁ本番で活躍すれば良いことか。


「慊人さま流石です。小学一年生の平均タイムは10秒以上だというのに、8秒5とは凄すぎですよ」

「慊人様!凄いです!結婚してください!」


 声に振り返ると、狗神と執事服を着た女が興奮した面持ちで立っていた。肩にかからない程度の長さの髪をキッチリと切り揃えていて、凛々しい顔つきでピンと伸ばした姿勢が印象的な初めて見る女だった。

 容姿はまるで違うが、なんだかテンションが榛名を彷彿させるな。


綾香あやか!なぜここにいる」


 俺が女を怪訝な顔で観察していると、雅彦が声を上げて近寄ってくる。なるほど、例の犬飼妹かな。


「雅彦、こいつが例の犬飼の妹か?」

「ああ、そうだよ。まさかこんなに早く、おれのしつじになるとは思わなかったけどな。慊人の電話のおかげで、おれの家おおさわぎだったぜ」

「そうなのか?何か悪かったな」

「めずらしく兄がおこられてるところが見れて、むしろ感謝だよ」


 雅彦は兄が怒られている姿でも思い出したのかニヤっと笑いながら言った。それ小学生の表情じゃないぞ。

 雅彦に迷惑が掛かってないのなら良かったが。


「慊人様お初にお目にかかります。犬飼綾香と申します。この度は雅彦様の執事に推薦していただき、ありがとうございます」

「確かに口添えはしたが、実際推薦したのはお前の兄だぞ?」

「慊人様がいなければ兄が私を推薦することなど絶対に無かったでしょう。全て慊人様のお陰です。私は犬飼家では、それは酷い扱いでした。それを救っていただいたのです」

「そうなのか」

「はい、私は雅彦様の兄である八尋様が大嫌いですから。代々斎藤家に仕えてきた犬飼家としては邪魔者でしかなかったのです」


 なんか今まで家族に不遇に扱われてきた者同士お似合いな主従かもしれないな。それにしても大きな家に生まれると苦労する奴が本当に多いんだなと実感する。


「今日は慊人様の活躍が見れると狗神様にお聞きしまして!一緒に見学に来たのです!」

「いや、授業中に執事が顔出すなよ。授業の邪魔だよ」


 坂条教諭も俺達を無視して100M走の測定に入らずに、この二人をちゃんと注意してもらいたいものだ。


「私慊人様のファンなんです!どうかお許し下さい!」

「ファンて……」

「良いじゃないですか慊人様。私は慊人様の活躍は確認する義務が樫宮家の執事としてありますし。彼女も雅彦様の活躍を確認しなければならないのです」

「はい!ついでに雅彦様の走りも見ました!」


 いや、ついでって言っちゃってるから!絶対そんな義務ないだろ!

 もう放っておこう。それよりも100M走のタイムだ。

 皆のタイムを確認して、俺達も計ろう。

 

 俺は執事二人を置いて、結城と雅彦と共にみんなのところ向かった


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