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第40話「潜入2」

ステラ女学院は福岡県の宗像市にある人気の無い山の中に立っており、場違いな荘厳な雰囲気で辺りを威圧してした。


敷地面積は俺達の通う桜城学園には敵わないまでも、流石は傲慢な大人達が箱入り娘達を飼う為の鳥籠言ったところで、かなり広い敷地を有するらしい。


塀に沿って車で何分か走っても中々正門が見えて来ない事でより学院の広さを俺に想像させた。

高い塀に無数の監視カメラ、鳥籠と言うよりも要塞と言った方がしっくり来るかもしれない。



「ここまで来てこんな事を言うのもどうかと思うが」



俺は窓の外の学院の塀を観察しながら横に座って居る結城に話かけた。




「やっぱり結城はともかく俺の女装は無理があると思うんだ」



結城に頼んだ手前やらないとは言えず流れに身を任せてここまで来てしまったが、やはり色々とまずい気がする。いや間違いなくまずい。



「そんな事ないよ、慊人凄く似合ってるよ!お姉様の亜美様にそっくりで凄く綺麗だよ」



隣の美少女……もとい、結城が目を輝かせながら言ってくる。

まさに結城の言う通りで女装をした俺は子供の頃の姉の亜美そっくりであった。


結城の言葉を喜んでいいのかは疑問なところである。


俺は窓ガラスに映る自分を見ながら、篠蔵未音という女の事を少しだけ心配した。

今回この未音という女として潜入する事になっていた。


狗神がお祖父様の力を使って桜城学院の生徒として登録された居ないはずの人物である。

とはいえ完全な架空の人物では探られた時に危険な為、探りを入れられた時の時間稼ぎも考え実在する人物の名前ある。


狗神家の遠い親戚の子らしい。

樫宮家の人間でなければ警戒はされないだろうが、迷惑をかける事にならんように祈るばかりだ。



「慊人様は女装していても素敵なんですね……天使……食べちゃいたいです……」



俺たちの使用人として付いてきてくれた犬飼妹が助手席から、怪しい笑顔を浮かべながら不吉なことを口走る。



「ちょっと何を言っているかわからないが、大丈夫か……」



俺がステラ女学院の制服を着てカツラをしている姿を見てからどうも様子がおかしい。

おそらく俺の恰好がかなり気に入っているからなんだろうが、食べちゃいたいは……なんか怖いな。


これなら元妹の榛名を連れてきて方が良かったか?とも思ったが、やはり戦闘力のある犬飼妹の方がいざと言う時の保険になる。


俺1人ならどうとでもなるが、結城もいるし佳苗もどういう状況かわからない。


それに奏人の取り巻きの牧原と左近と言う武闘派メイドも気掛かりだ。


何が起こるかわからない状況に、車の中は緊張感で包まれていた。

何か話そうと思っても、自然と口数が少なってしまう。


おそらくそれは結城も同じだろう。

俺の言葉に返事をしてもすぐに黙ってしまう。


犬飼妹の能天気さを見習いたいものだ。


それから数分ほど行ったところでやっとステラ女学院の校門が見えてくる。

綺麗に整備されている山で、塀の周りには木などは無かったが校門に続く道には、道に沿って左右に列に木が植えてあった。



「正門に続く道があるじゃないか、ずいぶんと遠回りをしたな」


俺は車を運転している、空港についてからずっと案内をしてくれていた女に問いかけた。

初めて見る女だったか、彼女もまた樫宮に使える人物とのことだった。


「いえ、あの道は歩道なんです。植えてある木は桜で春は凄く綺麗ですよ」


「桜か、お約束だな」



春には漫画のような光景が広がっているのだろうが、今は葉が色を変え掛けているだけのなんとも景観の悪いタイミングであった。


学院に入る門は、正門とは違い車専用の入り口が用意されていた。


運転手が窓を開けて警備員と話し、身分証明書を見せるといともあっさりと門は開かれた。

結城にはバレても殺されることはない、心配するなと言ったが。


やはりこの体も人の子の物だったようだ、心臓がいつもより早く唸っているのがわかる。


ここまでするのだ当然予感はあった、とても良くない予感が。

“この身体”が言っているんだ、おそらくこの予感は当たるだろう。


扉は開かれた、後戻りという選択肢はない。

ここに答えがあるとは限らないが、きっとここには何かがある。


これはきっと予感ではなく、既に確信であった。


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