表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
33/42

第33話「白藤結城②」

間が空いてしまってすみません!



委員会の帰り道、ロイヤルルームに向かう途中僕は忠弘ただひろ達に声を掛けられ、囲まれた。


「おい、結城。元気そうだな」

「忠弘……」

「ちょっとこっちこいよ」


 忠弘とは保育園のあの事件以来全く喋っていなかった、それなのに何故今になって声を掛けて来たのか、今思えばもっと警戒するべきだったかもしれない。

 僕は忠弘達に人気のない校舎裏に連れてこられた。


「ロイヤル5だっけ? ずいぶん調子に乗ってるみたいだな」

「嫌な言い方しないでよ、周りが勝手に言っているだけだろ」

「樫宮慊人に守られて良い気になってるようだが、お前みたいなのがチヤホヤされてるとイライラするぜ」

「別に僕は良い気になんてなってない!」


 酷い奴だ、久々に声を掛けて来たと思ったら、嫌味を言うためだったんだ。


「そうやって皆藤かいどうさんに反抗するところが調子に乗ってるって言うんだよ!」

「うぐっ!」


 僕は突然忠弘の取り巻きに腹部を殴られ、その場にうずくまった。


「何をするんだっ……」

「おいおいお前ら気を付けろよ、目立つところを殴るとばれるぞ」

「判ってますよ皆藤さん!」

「結城ぃ~、昔は殴られたらすぐ泣いていたのに、強くなったなぁー」


 皆藤達はうずくまる僕を見てクスクスと笑った。


「お前ら……」

「樫宮慊人にチクるのか? 樫宮慊人にまた守って貰うのか? お前みたいなお荷物そのうち見捨てられるぞ、釣り合ってないんだよお前と樫宮じゃあ」


 僕はその台詞に言葉を失った。


「慊人は僕を見捨てたりしない!」


 慊人と僕は友達で、ずっと一緒だったんだ。

 そんなことあるはずない。


「樫宮慊人も昔はお前しか友達がいなかったみたいだが、今じゃお前意外にも沢山友達が出来たみたいだしどうかな?」

「そんなこと……」


 無いと言えるのだろうか……、僕は忠弘の言うことを自信を持って否定出来なかった。


「まぁ今日はこれぐらいにしとくか、明日も授業終わったらここに来いよ」

「こんなことされて来るわけないだろ!」

「いいのかそんなこと言って? お前が来ないなら柚姫に相手してもらおうかな~?」

「なんだと!!」

「待ってるからな」


 そう言うと忠弘達は嫌な笑みを浮かべながら去って行った。


「くそっ……」


 僕はその後ロイヤルルームに寄った後自宅に帰って、柚姫に学校で人気ひとけの無い所には行かないように、休み時間一人でいないようにと言い付けた。


「結城兄様……、なんでいきなりそんなことを言うのですか?」

「なんでもだ」

「意味がわかりませんよぉー」


 柚姫は納得のいかない様子だったが、学園じゃ結構人気者のようだし恐らく大丈夫だろう。

 忠弘が本気で何かするとは思えない。

 自分にそう言い聞かせながらも心の中は不安で一杯だった。

 

「結城兄様?」


 僕の顔を覗き込むように心配そうに柚姫が呼びかけて来た。


「なんだい柚姫?」

「いえ……」


 くそっ、忠弘の奴、柚姫に何かしたら絶対に許さないぞ。



 次の日の授業後。


「結城そろそろ部屋に行こうぜ」

「ごめん慊人、ちょっと今日は用事があるんだ」


 僕は慊人から逃げる様に忠弘達のところに向かった。

 今日も昨日と同じように嫌な事を言われて、殴られた。


 忠弘達はこんなことして何が楽しいんだ!

 怒りと共に自分に対する情けなさに僕は泣いた。



 土曜日の朝、柚姫がお洒落をして家を出て行こうとしている姿を見つけた。

 

「柚姫、どこかへ行くの?」

「お友達とケーキを食べに行くんです」


 忠弘のこともあり、僕は凄く不安な気持ちになった。


「結城兄様、心配しなくても大丈夫ですよっ、執事の高尾たかおも一緒ですし、最近結城兄様変です」

「全然変じゃないよ、兄が妹を心配するなんて普通のことだよ」

「そうですけど……、とにかく大丈夫ですから」


 そういうと柚姫は高尾と一緒に出掛けていった。

 

 それを見送っているとポケットのスマートフォンから、音楽が流れた。

 服部くんが最近はまっているアニメの歌だった。

 勝手に変えられてそのままにしているけど、未だにすこし違和感がある。


 画面を見ると皆藤忠弘の文字が目に入って、僕はとても嫌気持ちになった。


「もしもし……」

「よう結城、柚姫はどっか出掛けるみたいだな?」


 その言葉に何とも言えない気持ち悪さを感じた。


「なんでそんなこと知ってるんだ!? どこにいるの!?」

「大きな声出すなよ~、おまえん家の前だよ、結城と遊ぼうと思ってな」


 家の前……、休みの日まで忠弘の相手をしなければいけないのかと思うと、僕の気持ちはすごく沈んだ。


「嫌なら柚姫と遊ぼうかな~」

「い、行くよ!」



 玄関を出ると忠弘が腕を組んで待っていた。

 後ろにはいつもの取り巻きが二人。

 僕は一人足りないのが凄く気になった。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ