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第2話「前世の義妹はホームレス?」

現代転生の御曹司


2014/7/22投稿

 部屋を二人で少し探索した後、俺達は帰宅することにした。

 あの部屋はロイヤルルームという名前で、その名の通り見るからに特別な内装であった。

 キッチンにお茶やお菓子も置いてあり、トイレもシャワーもある。

 ここで生活する事ができそうである。

 テラス出ると、思ったよりも広く、大きめのテーブルと椅子が置いてあり、お茶を飲むには最適な場所であった。


 うん、流石ロイヤルだな。

 子供が遊びに使うには少々大げさすぎる部屋だ。

 しかも今の所この部屋を結城以外の他人に使わせる気はない。


 俺たちは部屋についてじっくりと話し合いたかったので、車は先に返して歩いて帰宅することにした。

 二人であの部屋で何をするか、何を持ち込むかと話し合いながら歩く。


 そして俺は目の端に気になるものを捉えて足を止めた。

 よく見るとそれはテントだった。

 帰り道に通る大きな公園にある林の中に隠れるように1つのテントが張ってあったのだ。


「慊人どうしたの?」

「いや、ちょっとあのテントが気になって。ここの公園にホームレスなんていなかったはずたが……」


 気にしてもしょうがないか、そもそもなんで気になのだろうか。

 

「わるい、行こう」


 結城に声をかけ、歩き出そうとした時、テントから人がもぞもぞと出てきた。

 俺はその人物を見て驚きを隠せなかった。

 テントから出てきたのはセーラー服を着た女で、髪型は肩に掛からない長さのボブで黒髪タレ目の温和な雰囲気の女だった。


 そして俺はその人物を知っていた。


 記憶よりも大分成長しているが、間違いない……。


 鈴木榛名すずきはるな



 俺の前世の義妹いもうとだ。



 父の再婚相手の娘で、俺が死んだ時はまだ8歳だった。

 計算すると彼女は今15歳の高校1年生はず。



「こんなところで何をやっている! 」


 俺はたまらず榛名に声をかけた。


「ひぃー!すみませんすみませんすみません!すぐに出てくので許してくださいぃぃ」


 そして何故か突然土下座をしだした。なんでやねん。


「俺に謝られても困るんだが……」


 そう言うと、恐る恐るという感じでゆっくりと顔を上げ、俺の顔を見て榛名は安堵の表情を見せた。


「え……、なんだ子供かー。脅かさないでよー」

「ここに住んでいるのか? 」

「うん、ちょっとねー」


 ちょっとねーじゃない!なんで榛名がホームレスの真似事なんかしているんだ!


「事情をはなせ」

「なーにを偉そうに、なんで話さなきゃいけなんだよぅ」


 実際には言えないので、心の中で兄だからだよ!と咎める。

 俺は脅してでも事情を聞くことにした。


「いいのか? 俺が通報すれば強制退去だぞ、ここの公園は管理が厳しいからな」

「う……、わかったよ……、話すから見逃してよね!」


 榛名は不満そうな顔をしながら事情を話し出した。

 ちなみに結城は完全に置いてきぼりで、ぽかーんと口を開けて俺達を見ている。


「実は貧乏ながらも家族3人で慎ましく生活していたんだけど……、三日前に家が火事で全焼しちゃって……」


 衝撃の事実!我が家燃えて無くなる!

 俺は必死に冷静な振りをして続きを促す。


「……それで? 」

「その火事でお母さんもお父さんも死んじゃって、身寄りのない私は施設で面倒見てもらうことになったんだけど、

実はうちには多額の借金があったんだよ!そのせいで施設に乗り込んできた借金取りに売り飛ばされそうになったの!

そして命からがら逃げてきた結果がこの状態なんだよ」


 父、母、死す!まじかよ流石にこれは辛い。もう少し大きくなったらこっそり家に会いに行こうと思っていたのに……。

 結局全く親孝行出来ず、それどころか会社クビになる原因作って死に逃げとか親不孝者どころの話じゃないな……。


それにしても借金か……、絶対俺のせいだな。


「それで、借金はいくらあるんだ? 」

「えっと……、5000万円くらい……」

「なんでそんなに借金があるんだ!! 」

「ええ!?な、なんで君が怒るの!? 」


俺が死んだ時は借金なんて無かったはずだ、会社をクビになったとしても5年半で5000万は多過ぎだろ!


「実は6年前にお父さんが会社をクビになって、しかもその次の日お兄ちゃんが死んじゃって……。

やさぐれたお父さんは酒とギャンブルに嵌って闇金で借金をしてしまった結果がこれだよ」


 親父いぃぃ!!俺のせいとはいえ、そんな話聞きたくなかったぞ!


「お姉さんかわいそう……」


 黙って俺達の話を聞いていた結城が同情の目で榛名を見ていた。

 すっかり結城の存在を忘れていた。


「悪いが結城、一人で帰ってくれないか? 」


 ちょっと邪魔だったので、不満そうにする結城を説得して先に帰らせた。

 俺は義妹いもうとをどうにかしないといけないのだ。

 遅くなると結城の両親も心配するしな。


「その借金俺が立て替えてやろう、その代わり俺のメイドとして働いて少しずつ返せ」

「え?え?立て替えてくれるの?君が!?ってゆうかメイドって!?」


 考えた結果、俺は榛名を家で保護する事に決めた。


「俺の専属の使用人は今の所執事の狗神いぬがみだけだ。メイドは空きがある。めんどうだから答えはYESかNOで答えてくれ」

「い……いえす?」


 なんで疑問形なんだよ。どっちだよ。

 まぁいい、話が急展開過ぎて付いて来れていないようだが、狗神にまかせておけば大丈夫だろう。

 俺は榛名の答えを聞いて使用人の統括である執事の狗神を電話で呼び出した。


「お待たせいたしました慊人様」


 まってねーよ、はえーよ。

 電話をして1分も掛からず狗神鋼夜いぬがみこうやは現れた。

 身長185㎝の金髪の男で、年齢は19歳と若い。


「お前近くで監視していただろ」

「そんな誤解です、偶然近くを歩いていたのです。」


 俺は狗神の事を信頼していたが、この過保護ぶりには少しうんざりしていた。


「まぁいい。狗神、この女をお前の下に付けようと思うんだが、どうだ?」

「こんな貧乏臭い女は慊人様のメイドにふさわしくないとは思いますが……。確かに借金を形に恩を売って働かせれば下手な者を雇うよりも信用出来るかもしれませんね。さすが慊人様です。早速雇用致しましょう。」


 しっかり話聞いてるじゃねーか!

 こうして俺は義妹いもうとである榛名を無事保護するのであった。




※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※




 夜部屋でくつろいでいた俺は、狗神にまかせた榛名が気になって様子を見に行くことにした。


「狗神、榛名の調子はどうだ?」

「今の所問題ありません。旦那様の許可をいただいて雇用契約も無事終わりましたし、闇金融にも借金を立て替えることを連絡しておきました」


 流石に手際が良い。


「教育は狗神にまかせる」

「かしこまりました」


「あ、慊人様!!」


 俺に気付いた榛名が凄い勢いで俺の名前を叫びながら迫ってきた。ちょっと怖いぞ。


「この度はなんとお礼を言ったらいいか、借金を肩代わりしていただいたうえに、職と部屋までいただいてしまって!」


 榛名は俺の至近距離で手をばたばたさせながら捲くし立てた。


「お、落ち着け」

「しかも月給20万で学校まで通わせていただけるなんて!昨日まで死を覚悟していたのに未だに自分の現状信じられません!

し、しかも部屋がすごく大きいんです!私が住んでいた家よりも広い部屋なんて!ほ、本当にいいでしょうか!?ぐべっ」


 教育係りの狗神は何故か興奮している榛名を見て満足気に頷いている。

 絶対何か変なこと吹き込んだだろ!

 しかたないので興奮して迫ってきた榛名の鼻をきつめに摘まんで黙らした。


「落ち着け、お前は樫宮家のメイドになったんだ。待遇でいえば悪いくらいだぞ」

「い、痛いですー!慊人様!鼻が取れます!」


 涙目になってきた榛名が少しかわいそうになってきたので摘まんでいた鼻を離してやった。

 榛名ってこんな性格だったっけ?不幸なせいで愉快な性格に育ってしまったようだ。


「俺の下に付いたからにはこの程度で満足してもらっては困るぞ。努力して結果を出せ。俺は結果を出すものにはそれに見合った待遇を与える」

「そうですよ榛名さん。慊人様は神のように慈悲深いですが、時に悪魔も裸足で逃げ出すくらい冷酷で残忍な一面も持っています。

ボロ雑巾のように捨てられたくなければ血反吐を吐いて頑張るしかありません」

「は、はいぃぃ~」


 義妹だぞ、捨てねーよ!とはいえ、周りの目もあるので特別扱いも中々に難しいのだが……。なんとか頑張ってもらいたいものだ。

 っていうか誰が冷酷で残忍で悪魔も逃げ出すだ!


「狗神。お前の中で俺の評価はどうなっているか一度じっくりと聞いてみたいものだな」

「そんな誤解です。これは慊人様の優しさに甘えないようにと、私なりの彼女への教育です」


 嘘付け!



 狗神と榛名の今後について話をしていると、メイドが俺を呼びに来た。


「慊人様。奥様がお呼びです。お客様がいらっしゃっています」

「客?」


 俺は2人と別れメイドの後に続いた。

 案内された応接間に入ると、母と花屋敷呉羽はなやしきくれは、そして恐らく花屋敷の両親がいた。

 何だこのメンツは……。


「「この度は呉羽がご迷惑をお掛けして、申し訳ありませんでした!」」


 部屋に入ったと同時に花屋敷家の3人に頭を下げられる。

 ええー、何謝ってんのこの人達。


「迷惑って……、もしかして自己紹介の時のことですか? いや、あれはこちらに非が……」


 むしろ俺が謝るべきなのでは……。


「そんな慊人様は悪くありませんわ!こちらが悪いのです!呉羽!」


 花屋敷母が呉羽を俺の前に押し出す。

 泣かされたうえに、悪くもないのに謝る羽目になるとか可哀想な奴……。


「慊人様、この度は不快な思いをさせてしまい、まことに申し訳ありませんでした」


 呉羽は深く頭を下げながら俺に謝罪する。

 このままほって置いたらこの人達土下座しそう。


「慊人さんどうするの? 許すの? 許さないの? 」


 母が冷たい目で呉羽を見ながら俺に尋ねる。

 だから俺が悪いのであって呉羽は悪くないと言っているんだが。

 というか許さなかったらどうなるのだろうか?こわい。


「お母様、許すも許さないもありません。今回の件は間違いなく俺に非があったのです。呉羽ももう頭を上げてくれ。お前に謝られたら俺の立場が無いぞ」


 俺の言葉に3人は安堵の表情を見せた。


「ありがとうございます!二度とこのようなことが無いよう、しっかり教育いたしますので! 」


 花屋敷父の言葉を最後に、この問題は一応解決した。

 あの程度の事で家まで謝りに来るとは、そんなに樫宮が怖いのか……。花屋敷もそれなりの家のはずだが……。

 どうやら樫宮の家は俺が思っている以上の力があるようだ。


 その後は、花屋敷の両親達が俺の事を褒めちぎり、不機嫌な顔をしていた母を上機嫌にして帰っていった。

 それにしても、樫宮が恐れているにしても、どう考えてもわざわざ謝りに来るようなことではなかった気がするのだが……。

 樫宮とのパイプ作りにこの件を利用したとか?だとしたら花屋敷は喰えないなー。一応要注意だ。

 俺は一応狗神いぬがみに花屋敷とのことを報告して部屋に戻った。


 何だか今日は疲れた。風呂に入ってすぐに寝てしまおう。

 やっと入学式初日が終わるのだった。


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