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第15話「佳苗と妹と姉」

大変お待たせしました!イラストは櫻田佳苗です。

 佳苗の迎えには、俺と家にいる家族、樫宮亜美かしみやあみ樫宮愛衣かしみやあいと数人の使用人で迎えた。

 ちなみに母と父は仕事だ。

 亜美は俺の姉で今年11歳になる。長い黒髪に黒の長袖ロングスカートを来たとにかく黒い女で気が強くて怖い。

 愛衣は俺の妹で今年で5歳。肩まで伸ばした黒髪を両側で結んでツインテールにしている。服は黒いワンピースで天使のような妹だ。

 樫宮の人間は何故か一年中黒い服を好んで着ている。特に姉の亜美に関してはこの熱い日差しの中、黒の長袖ロングスカートでみているだけで暑苦しい。

 なんでも体温が低いらしく、夏でも運動しないかぎりは全く汗をかかないらしい。

 


「亜美様、愛衣様もお久しぶりですわ、この度はお招きいただきありがとうございます」

「招いたつもりは無いわ、あなたが勝手に来たのでしょう」

「そんな事ありませんわ、喜美江様が是非にと誘って下さいました」

「それにしたって一ヶ月は厚顔すぎるでしょう、流石櫻田の姫君は違うわね」

「樫宮の女王様と呼ばれてる亜美様には敵いませんわ」

「……」

「……」


 佳苗はヘリを降りると、俺の姉である樫宮亜美と火花を散らし出した。

 何故か判らないが、この二人はいつも仲が悪い。


「かなえさま、いらっしゃいませ」

「愛衣様!相変わらず可愛らしい!だきっ!」


 天使の一声が、嫌な空気を払拭した。

 佳苗は愛衣を見ると花が咲いたような笑顔を見せ、抱きしめながらくるくる回った。

 逆にこっちは凄く仲が良い。まぁその気持ちは良く判るが。


「喜美江様と慊雅あきまさ様はいらっしゃらないのですね」

「ああ悪いな、どうしても仕事を抜けれないらしい」

「かまいませんわ、それでは早速慊人様の部屋に行きましょう。取り敢えず荷物を置きたいですわ。夏芽なつめ

「はい、お嬢様」


 佳苗が声を掛けると、メイド服を着た女性が、大きなリュックを背負い、大きなアタッシュケースを引きながらヘリから出てきた。


「紹介いたしますわ、私のメイド兼護衛の倖月夏芽こうづきなつめですわ」

「よろしくお願いします」


 護衛も兼ねているのか、そんなに強そうには見えないが、櫻田が護衛として雇っているんだ、恐らくかなり強いのだろう。


「案内しよう」


 おれは二人を連れて自室に案内しようとした。


「待ちなさい」


 しかし歩き出そうとすると姉に止められてしまった。


「何故慊人の部屋に荷物を置く必要があるのよ、あなたの部屋は別に用意してあるわ」

「その必要はありませんわ、私は慊人様の部屋に泊まりますので」

「慊人の部屋に寝泊まりするなんて認められるわけがないじゃない、櫻田の長女はふしだらね」

「亜美様、何を想像してらっしゃるのか判りませんが、この事は喜美江様の許可も得ていますわ」

「母なんてしらないわよ、いない人を盾に私に逆らうのはやめなさい」

「亜美様こそ喜美江様の決定に逆らうなんて、立場を理解されていないようですわね」

「なんですって!」


 こいつら本当に仲悪いな。あと俺も佳苗を俺の部屋に泊める気なんてないんだが。

 俺が二人の言い合いに口を挟もうとすると、


「うわーーーーん!!!」


 二人の喧嘩のせいで愛衣が泣き出してしまった。なんて悪い奴らだ!こんな可愛い子を怖がらせて泣かすなんて悪魔かよ!


「愛衣様!ごめんなさい!ちょっとムキなりすぎてしまいましたわ。よしよし」


 佳苗は泣き出した、亜衣を抱いて頭を撫でた。俺もよしよししようと思ったのに、先を越された。

 うーん、愛衣の情操教育のためにも、あまり言い合ったりするのは良くないな……。しかたない、もう俺の部屋でもトイレでも好きなところで寝てくれ。


「お姉様、母の決定ならばしかたないじゃないですか。俺は問題ありません」

「……そう」


 亜美は凄く不満そうな顔をしていたが、愛衣のおかげで引いてくれるようだ。

 また言い合いが始まる前にとっと連れていこう。


「佳苗行くぞ」

「はい、慊人様」


 俺は佳苗とメイドの倖月を部屋へと案内した。

 俺の部屋は三十畳くらいの広さで、入ってすぐのスペースには机とソファーとテレビを置いている。

 そして奥にはパソコンとベットが置いてある、広いがシンプルでありきたりな部屋だ。

 ちなみに大きな風呂と、トイレも付いている。

 これでキッチンもあれば完全にここで暮らせる。


 そんな部屋に入るとすぐに、佳苗は扉の鍵を閉めだした。


「えっ……、何故鍵を閉める」


 佳苗は俺の問いに答えるように、近くにあったソファーに俺を押し倒した。


「慊人、やっと二人っきりになれたわね」

「いやいや、お前のメイド部屋の中にいるし」

「夏芽なら大丈夫よ」


 何がどう大丈夫だというのか、俺は全然大丈夫じゃないんだが。


「どいてくれ佳苗、こうゆう事をするからお姉様がおこ、むぐっ!?」


 言葉を遮るようにキスをされた。歯と歯が当たってしまいなんとも間抜けなキスだったが、柔らかい唇の感触に、不覚にもすこし気持ちが高揚してしまう。

 小学生にしてなんとゆう肉食系女子……、将来が不安だぞ。

 俺は掌で佳苗の両頬を挟み掴んで、引き離して立ち上がった。


「小学生のうちは頬だけにしとけ、小学生に唇は早い」

「減る物じゃないんだからいいじゃない」

「そうゆう問題かよ……」


 俺の精神は確実にすり減ってるよ、ホント勘弁してください。




※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※




 夜になると母が帰って来て、亜美、愛衣、佳苗と俺で夕食を食べることになった。

 五人で無駄に広い食卓を囲み、無駄に豪華なディナーを口に運ぶ。


「運動会での慊人様は本当にカッコ良かったですわ、さすが樫宮の当主です」

「私は運動が苦手だったから心配だったのだけど、慊雅あきまささんに似て運動が得意でよかったわ」

「喜美江様に似て、とてもお勉強も御出来になるとお聞きしていますわ」

「慊人は二人の良いところを引き継いでくれて、私も鼻が高いわね」

「流石樫宮の次期当主ですわ」


 母は食事中ずっと上機嫌であった。

 怒ると怖い人だが、基本的に俺を褒めておけば機嫌が良い人なのだ。

 そのためか佳苗は母のかなりのお気入りであった。

 御三家の一つである櫻田の長女に手放しに褒められるのが嬉しいというのもあるだろう。プライドの高い人だからな。


 ちなみに亜美はその様子を面白くなさそうに眺めながら黙々と食事をしていて、何か怖かった。

 愛衣が泣くからもう喧嘩はやめてくれよ。


 食事が終わると母は、まだ仕事があると言って出かけていった。

 母を見送ってから佳苗とまた部屋に戻ると、佳苗がとんでもない事を言い出した。


「慊人、一緒にお風呂に入りましょう」

「は?嫌だよ、絶対に駄目だ」

「なんでよ、小学生なん大衆浴場では女性用のお風呂に入る事も珍しくないと聞くわ、小学生同士が一緒に入るなんて普通じゃない」


 勘弁してください。別に小学生と入ったからどうって事はないが、ないが勘弁してください。

 ってゆうか佳苗はどう考えても中身が小学生じゃないしな。


「そうですよ慊人様、何でそんなに恥ずかしがるんですか? わたしもお背中御流ししたいと申し出ても拒まれますし。まだ小学生なんですから大丈夫ですよ!」


 ここでまさかの部屋に控えていた榛名が佳苗に援護射撃!

 見た目が子供でも中身が大人ならアウトだと思うんだ。


「榛名さんは話がわかるわ! 慊人ったら恥ずかしがりやさんなのね」

「連行しちゃいましょう」

「ちょ! こら榛名!」


 俺は榛名に抱きかかえられてしまった。

 いつも俺の言う事に絶対に逆らわないのに、佳苗と仲良くなって悪乗りしているようだ。

 夕食前に佳苗に紹介したら、やたら仲良くなっていたので佳苗の相手を任せておけると安心していたのに、これは誤算だ。

 このままでは風呂に連行される。


「い、狗神! とめろ!」


 狗神に助けを求めると、今まで姿が見えなかった狗神がどこからともなく現れた。


「良いじゃないですか慊人様、樫宮の次期当主が女性とお風呂に入るくらいで戸惑っていてはいけませんよ」


 狗神はそう言って、見送るように手をひらひら振った。

 俺は狗神に見捨てられた事で、諦めて抵抗をやめた。


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