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第10話「もうすぐ運動会」

評価ブクマ本当にありがとうございます!当初は100ブクマくらいを目指していたのですが、まさかの4桁!大変モチベーションになります!

感想も嬉しいです!

 100Mのタイムを計っている皆の所に行くと、鴻巣と花屋敷が保健室から戻ってきていた。

 俺達もタイムを計って、坂条教諭から皆のタイムを記録している紙を確認してみると、意外にも花屋敷が中々良いタイムを出している。


「すっごく意外だな」

「慊人さま、わたくし運動はとくいですわ!ぜひリレーに出たいです!」

「え……」


 何だろう、結果を出しているのにすっごく不安。何だろう。


「慊人様は呉羽をごかいなさってます。呉羽はやればできる子です」


 俺の不安そうな顔を見て鴻巣がそう言ってくる。

 それって褒め言葉じゃなくて、普段駄目な子を擁護する時に使う常套句だろ。

 未だに赤い目と、膝の絆創膏が俺を不安にさせるんだよ。


「慊人様、呉羽の足をあまりみないでください。だいじょうぶです呉羽ならやれます」


 俺が微妙な顔をしながら花屋敷の絆創膏を見ていると、視線を遮るように鴻巣が俺と花屋敷の間に入ってくる。

 いや、今更絆創膏隠しても遅いから!盛大に転んで大泣きしたところ見ちゃってるから!


「しょっくだよ……、ぼく花屋敷さんよりおそいよ……」


 俺の後ろにいた結城が、花屋敷のタイムを見てショックを受けている。

 気持ちは判るぞ結城。でもお前は花屋敷どころか、クラスの殆どの奴より遅い。


「まぁ結果は出しているんだ、問題はない。この後のホームルームで皆との相談だがな」



 その後、ホームルームで体育委員である俺と高比良が教壇に立って、誰がどの競技がに出るか決めていった。


 俺が50M走と騎馬戦とリレー。結城が玉入れ。雅彦は俺と同じく50M走と騎馬戦とリレー。

 女子は、鴻巣が100M走と50M走。高比良が騎馬戦とリレー。花屋敷がリレーとなった。

 ちなみにリレーのアンカーは俺で、騎馬戦の上に乗る騎手は俺と高比良だ。


 本人の希望とタイムを考慮に入れながら決めた結果、このようになった。

 花屋敷はリレーに出れると決まった時、とても嬉しそうにしていて、何だか微笑ましかったな。



 次の週、委員会でこの結果を専用の紙に書いて提出し、代わりに運動会のプログラムを貰う。

 プログラムは


 開会式 準備体操 50M走 100M走 玉入れ 借り物競争 騎馬戦 昼食 障害物競争 リレー フォークダンス 閉会式


 の順になっていた。競技数が少ないのは全種目に、全学年が出場して競うシステムのせいだそうだ。 


 俺達のクラスは体育の時間と、放課後の一時間を各競技に分かれての練習に充てた。

 結城には、玉入れは一つずつ投げるのではなく、いくつか纏めて投げるのがコツだと秘密特訓をしたりもした。


 そういえば練習中変な二人組に絡まれたな。



「かしみやあきと!おまえ早いらしいな!」


 俺に声を掛けてきた奴は、背が低い活発そうな少年だった。

 後ろには、肩まで髪の毛を伸ばした鼻の高い丹精な顔立ちをした少年がニヤニヤしながら立っている。


「おれはリレーのアンカーにえらばれた!おまえもそうだと聞いた!」

「あ、ああ」


 いちいち声がでかい。目の前でそんなに声を張り上げなくてもいいだろ。


「おれとしょうぶしろ!おれがかったら、おまえのおうしつをもらう!」

「いや、俺はそんな勝負しないぞ。良く判らないが応援するよ、アンカー頑張って!じゃ!」


 俺がそう言うとロンゲの少年はゲラゲラと笑い出した。

 それを横目に、めんどくさそうなので相手にせず退散しようとすると、腕を掴まれてしまう。


「ま、まて!おうえんするな!おれはてきなんだぞ!」


 応援している人間に、応援するなとは、何て酷い奴なんだ……。


「敵って言われても、俺お前のこと知らないし」

「なんだと!しらないならおしえてやる!おれのなまえは――」

「あ、友達来たからまたな」


 少年が名乗ろうとすると、ちょうど結城と雅彦が練習を終えて、こちらに歩いて来るのが見えた。俺は話を切り上げてそちらに向かった。

 後ろからまたロンゲの笑い声が聞こえる。


 練習はこの二人組に絡まれたくらいで、順調に進み、あっという間に運動会前日の金曜日放課後となる。

 今日は明日に備えて体育も練習も休みとなっていた。


 今、俺と結城と雅彦はロイヤルルームで英気を養っている。言い方を変えればだらだらとしていた。


「雅彦、うちのクラスはどうだ?勝てると思うか?」

「うーん、そうだな、れんしゅうは他のクラスよりもいっぱいやってるし、思ったよりもおれたちのクラス強いと思う」

「ぼくも玉入れなら、慊人に教えてもらったコツがあるし勝てるじしんがあるよ」


 結城は俺との特訓の結果、クラスの誰よりも多く玉を入れる事が出来るようになり、玉入れ組のエースとなっていた。

 ちなみに俺の教えたやり方は慊人式と呼ばれ、皆がこぞってマネをしている。

 うん、恥ずかしいから俺の名前を付けるのは辞めてほしい。

 生前にTVで見た知識で俺が考えたわけじゃないんだ。


「あーでも、1-Cはきょうてきかも」

「そうなのか?」

「運動がとくいなやつがおおいらしい、1年でとくに強そうなクラスはそこくらいかな」

「そうか、まぁ俺が騎馬戦とリレーで勝てばどうとでもなる。明日は絶対勝つぞ!」

「「おー!」」



※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※



 運動会当日、俺達は競技場の外で入場開始を待っていた。初等部全員が1年生から順番に並び待機している。

 みんな学園指定の運動服を着て、頭には自分たちのチームの色の鉢巻をしている。

 ちなみにA組黒、B組青、C組白、D組赤、E組緑である。基準が判らないがA組の俺達は黒チームだ。


 俺はどこで運動会が行われるのか知らなかったのだが、校内にあるすごく立派な陸上競技場で、見て驚いた。

 中を覗くと、客席も立派なもので、しっかりとした屋根が付いている。また生徒が控える場所にも集会用テントで屋根が作ってあり、その下に椅子が置いてある。おれの知っている運動会とは丸で違った。


「小学生の運動会ぐらいで、こんな立派な場所でやるとはな」

「そうか?ちゅうとうぶになると、ドームかしきって球技たいかいやるらしいぞ」

「まじかよ……」


 雅彦の発言に驚く。

 もう金持ちである事が普通になって来たと思っていたが、やはりまだ所々で凄いカルチャーショックを受けるな。


 辺りを見渡すと、俺の事を睨みつけている奴を見つけた。練習中に絡んできた奴だ。

 白い鉢巻をしているって事は白組か、たしか雅彦が言うには結構運動が得意なクラスのはずだ。

 そのクラスでアンカーとは、口ばかりではなく本当に早いのかもしれない。


「特にリレーは気合入れていくか……」


 勝負を吹っ掛けられた時は相手にしなかったが、ああ言われて負けるのもしゃくだ。

 

「絶対に勝つ……」


 俺はそう呟きながら少し離れた所にいる、白組のアンカー君と視線をまじ合わせる。

 それに気付いたアンカー君が、更に目に力を込めるのが判る。

 火花でも起こりそうな睨み合いをしていると、前回も一緒にいたロンゲの少年が、アンカー君の後ろから近づいて行き、目隠しをした。

 それをアンカー君に怒られながらも、ロンゲの少年は前会った時のようにげらげらと笑っていた。仲良いなあいつら。


「選手入場ー!」


 そんなことをしているうちに、入場の号令がかかる。

 いよいよ運動会の始まりだ。


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