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悪役の舞台

悪役は裏舞台で悶える

「悪役」ブームに乗って書いてみたかった……。

*途中、主人公視点→三人称

「私のお腹には、ユージとの赤ちゃんがいるの? わかるわよね? 身を引いてくれないかしら?」


 目の前には、フワフワボブカット。大きな瞳に涙をためて、おモチみたいにモチモチでずっと触っていたくなるようなほっぺを真っ赤にさせている小動物みたいな童顔の女の子。(といっても、私と同じ年)

 もう、ヒロイン OF THE ヒロイン!! 本音言うと、ひれ伏したい。


 そんな絵にかいたような子を、上から目線で(あ、だって、身長170センチ+ヒールですから)昨日ネイルサロンで整えてもらった武装爪をしている片方の手は腰に当て、同じく片方の武装爪完備の手は髪はロングのストレートをかきあげ、釣り目を際立たせるアイシャドウに、意地悪そうな真っ赤なルージュ。


 はい!


 いかにも、ヒロインを虐める、悪役! 

 テレビでいったら視聴者の敵! 

 小説や漫画でいっても読者の敵! 

 敵! 敵! 敵!! なのをやってまーす!


 だって、しょうがないじゃない。

 悪役(わたし)がいないと、目の前の天然系ヒロインは素直にヒーローへの気持ちに気付けないし、なかなかくっつかないんだから。



 泣きながら、立ち去るヒロインの後姿を見て、ため息ひとつ。




「って、私、処女だし」








 私が愛でるのは、学校でのアイドル達や、会社でのホープや、社長の息子や、御曹司や、王子や、騎士やらじゃない。イケメン No Thank You!!


 断然! ヒロイン。


 ヒ・ロ・イ・ン。


 特に好きなのは、天然系の小動物みたいな女の子らしい子! 

 自然と、逆ハーレムを築き上げて、鈍感力100%を誇る、乙女ゲーのヒロインみたいな子。モフモフじゃないけど、ずっとかまい倒して、弄り倒したい! どこかで売ってないかな。ヒロインちゃん。


 思えば“彼女”と出会ったのは、高校の時。


 両想いなくせに、俺様系(笑)幼馴染とヒロインちゃんは、なかなかくっつかなかった。くっつかないから、ヒロインちゃんを狙う、後輩(ショタ)や先生( ロリコン)や先輩(腹黒)が現れて、もうぐちゃぐちゃ。


 男どもは、どーーーーーーでもいいけど、この世界はゲームじゃなくて現実で。現実だから、餓えた男ども…複数に狙われているヒロインちゃんが、不憫でならない。いい子だから、付き纏う野獣の強引なアプローチもなかなか回避できなくて、すぐ抱きしめられたり、頭を撫でられたり、休みの日とか誘われたり。


 触るな! 穢れる! (ヤロー)の癖に頬を染めるな! 気持ち悪い!


 あーー見ていられない。 

 中学の時から演劇部だった私は、ヒロインちゃんの気持ちを自覚させる為に、俺様系(笑)幼馴染と出来てる風を装って、揺さぶりをかけてみたわけ。


 キレた俺様系(笑)幼馴染が文句を言いに来たので、THE 修羅場。殴られそうになったので、サッと避けました。 やっててよかった通信空手。って、いくら憎らしいからって、女を殴ろうとする男?! ヒロインちゃん、本当にこんな男でいいの? なんて思ったけど、幸せそうに最後は抱き合っていたから良かったのかな。


 ついで、ヒロインちゃんに失恋しちゃった逆ハーレムメンバーにも睨まれて、後の高校生活はめんどくさかったけど、ヒロインちゃんの可愛い笑顔が見れたので幸せってわけ。


 それから、大学も同じようなヒロインちゃん(二代目と命名)に対して悪役を(勝手に)買って出てーの、社会に出てまた一人。今日会ったヒロインちゃん(三代目と命名)。次の修羅場でENDかな。






「はぁーーーー。落ち着く」


 一人暮らしの部屋には、私に似合わない可愛い物グッツがいっぱい。お城ですよ。お城。


 仕事が忙しくて、小動物は飼えないので(だって、飼ったら会社に行けなくなる!)もっぱらスマホのアプリでペット飼育ゲームをしつつ、休日はペットショップで仔犬や仔猫やハムスター、うさぎを愛でる日々。


 パンダの形をしたマグカップに砂糖いっぱいのホットミルク。

 外では顔に合わせて、ブラックコーヒーを飲んでいるけど、私は極度の甘党。家では、似合わないとわかりつつ、ピンクのうさぎ耳がついたモコモコパジャマと可愛いグッヅに囲まれて至福の時。


「……ヒロインちゃん、泣かしちゃってごめんね?」


 本当は、泣かさず……できれば“親友”ポジションでヒロインちゃんを応援したい。でも、無理なのだ。私の顔は、悪役面すぎる。見知らぬおじさん達に「踏んで下さい」「罵って下さい」「殴ってください」と言われるくらい、女王様顔なのだ。だから……ヒロインちゃんのそばにいられるわけがない。


 そんな私に届いたのは、一枚のはがき。


 “○×高等学校 77期生 同窓会のお知らせ”


「同窓会かーー。気まずいなー。ブッチしようかなー。……でも」


 高校時代の(私にとっての)初代ヒロインがどうなったか気になる……。

 俺様系(笑)幼馴染ともしかして結婚していたりして? で、エンジェル(子ども)を連れてきたり? 


 うわ! うわ! 超見たい! 見たい! エンジェル見たい! 


 女の子だったら四代目ヒロインじゃない?! 

 願わくば、俺様系(笑)幼馴染に似ていませんように!






 ――と、思っていた私が悪かったのでしょうか。



 とあるホテル会場。


 ヒロイン苛め(?)をしていた私は、コソコソと隠れて会場にはいったのに、なぜか初代ヒロイン逆ハーメンバーに囲まれております。お前たちは暇人なのか、どっかに行け! イケメンよ滅びろ! バルス!


「先輩。あの日以来かな?」

「久しぶりだな」

「相変わらずそうですね」

「はぁ……」


 って、なんで、学年が違う後輩(ショタ)と先輩(腹黒)もいるんだ!!

 後輩(ショタ)、先生( ロリコン)、先輩(腹黒)に囲まれて、ヒロインちゃんを捜せない私。そうこうしているうちに、俺様系(笑)幼馴染もやってきた。


「よぉ」

「……」


 思わず、キョロキョロと周りを見渡す。

 ヒロインちゃんはどこだ。小さいから見落としてるのかな? 


「あの…子は?」

「……来てねーよ」

「!!!」


 来ていない? もしかして、エンジェルがお腹にいて……悪阻が辛くてこれないとか?

 いや、それは考えすぎか……普通に、風邪? 病気? うわ、可愛そうすぎる! あんな小さくて可愛い子が病で寝込んでいるなんて!! っとに、この男は、同窓会なんて来ないで恋人(もしくは妻)であるヒロインちゃんの看病を、死ぬ気でやれや!


「何、睨んでんだよ」

「あんた、早く帰りなさいよ」

「はぁ?」

「いやいや、だって、あの子が来ていないんでしょ? やっぱり、寝込んでるの? だったら可哀想じゃない! ほっんと! 高校時代もはっきりしない男だったけど、デリカシーがないっていうか、乙女心の分からない男ね! だから私も苦労したのよ! 両想いのくせになかなかくっつかないでさ! ほら、もたもたしていたら、あんな可愛い子すぐに取られるわよ! さっさと帰ってあの子の所に!」


 私は、もし初代ヒロインちゃんと再会出来たら?! 願わくばお友達なって下さい!……なんて下心がいっぱいつまったクッキーの入った紙袋を手渡した。


「なんだよ、これ」

「クッキーよ! これ、あの子が好きなお店のでしょ? これを食べている時のあの子の至福そうな顔! もう! 可愛くて、可愛くて! こっちがあの子を食べたくなったわ! なんて、今はどうでもいい!! もう! これを持って、とっとと行く!」

「いや、お前、何を言って……ちょっと、待てよ」


 まだ何か言おうとする男の背中をぐいぐい押して、会場から出してやった。


「ふぅ」


 あの様子じゃ、まだエンジェルは出来ていない様子。

 全くの甲斐性なしだな。さっさと、私にエンジェルを拝ませてよ!


 私が、足を肩幅に開き、両手を腰に当てていると、後ろにまだあの三人がいた。

 そして、何か言いたげな顔。


「先輩?」

「お前……ひょっとして」

「いや、まさか」

「な、なによ……」


 一連の行動を見られて気まずくなった私は、誤魔化すようにバックからハンカチをだしたんだけど……。






 ――それが、これからの運命を変えることも知らずに。





 目を見開く三人。


「「「………」」」


 三人の目線が、がっちりとハンカチへ。


 え? なんで?


 額を抑えているハンカチを改めて見ると、それは私には到底似合わない(でも大好き!)な、可愛いキャラクターがついたピンクのフリフリハンカチ。


「!!!! え、あ、その、い、いいい妹のと間違えて」


 見られた――――!!!!

 因みに、私に妹などいない。いたら愛でてる! 病的なシスコンになる自信がある! 妹が小動物タイプだったらの話だけど……いや、今はそれどころじゃない。

 これは私のお気に入りのハンカチで……間違えて、つい家で愛でる可愛いコレクションのハンカチを持ってきてしまった。もしかして、エンジェルに会えるかも?! とか、あわよくば初代ヒロインちゃんと友達への階段を上るって……なーんて!! きゃーーーー!! 親友のねこにゃんグルミを抱きながらベッドでゴロンゴロンと一晩中妄想し続け、気が緩んでいたのが悪かったのかーーー!!


 顔中真っ赤になって、後退。高いヒールが災いしたのか、後ろにあったテーブルに足を引っ掛け、ひっくり返った。最近、仕事が忙しくて通信空手サボっていたのが仇になってしまったー!!


「ギャハッ!!」


 色気のなにもない声がでる。

 そして、三人の目線が……私の膝元……より上に。


 私が今着ているドレスは、黒を基調に赤いラインが悪女を演出している太ももまでスリットがはいったドレス。(本当は趣味じゃない!)

 いつもの私なら、こういう所では紫や黒や赤などの、いかにも私ってば悪役よ! っていう(本当に好みでもない!)勝負下着を選んで履いていたわけで。

 しかし、ここでも私は気の緩みをみせてしまって……。


 気合のはいったスリットがめくれ、レースに彩られたガーターベルトの近くには、これまた可愛いハンカチとおそろいのキャラクターがプリントされた綿100%の下着が、こんにちはと、三人に挨拶をしていた。


 ショーツというよりもパンツという言葉が似合うアレですよ!

 今時の女子高生の方が、もっと大人っぽいのを履いている。



「「「………」」」

「………う」



 これは、ドン引き間違いなしですね!

 24にもなろうかという……しかも高校時代は悪役に徹し、今も顔は女王様なのに!

 だって、可愛かったからしょうがないじゃない! 可愛いは正義なんでしょ!



「うわぁぁーーーーーーーん」


 たまらなくなって、そこらにあったおしぼりやらナプキンなどを目の前の三人に投げつけた。


「よくも見たなー! ばかーー!! あほーー! すけべー!」


 最後には子供みたいに泣きながら会場を飛び出してしまったわけで……。大失態。あいつらの目玉、えぐれろ! と呪いもかけながら逃げました。

 途中、さっき渡したクッキーのはいった紙袋を持ち、入口近くに立っていた俺様系(笑)幼馴染にも、ぶち当たって、これまたパンツを見られたけど(今度はバックプリント)もう! 知るかーーー! 一生会わないんだから! どうでもいいーーー!!






○ ● ○



 さて。


 会場に残された3人。そして、入口付近に居た1人は、先程の出来事に、唖然とし


 ――悶えていた。



 彼らは高校時代、ヒロインの事が好きだった。

 彼女は小動物の様で可愛らしく、高校生というのに子供っぽさを残し、庇護欲を駆り立てるものがあったからだ。しかし、彼女は変わってしまった。さなぎが蝶になるように、ただのそこらにいるような女になってしまった。


 高校時代に彼女を獲得した男は、永遠に続くと思っていた愛が終止符を打ち、日々淡々と過ごしていた。

 三人も同様、手に出来なかった彼女を思い出に、新しい恋も出来ずに悶々と過ごす日々。


 そんな時に届いたのは一通の同窓会への葉書。


 思い出すのは、彼女を虐めていた憎らしい女。


 ずっと変わらないであろうあの女。あの時は、女に色々かき回され、侮蔑に満ちた目でみられ、散々苦虫を噛まされたが、あの頃よりも大人になった自分たちが今度は、同じ目で見てやる。逆恨みと近いそんな感情だった。


 はず……なのに。


 なのに。


 さっきの女…いや彼女は? いったい誰なんだ?


 全身真っ赤になり、物を投げつけ(しかも当たっても痛くないような物ばかり)これまた子どもの様な悪態を叫んで、最後も子どもの様に泣いて立ち去った彼女。

 彼女の持ち物とは思えない、ファンシーなハンカチに、彼女らしい挑発的なドレスから見えたのは……。


 高校時代の彼女とは違う。

 悪役女王様顔の完全武装された下には……まさか、あんなものが隠されていたなんて?!


 彼女は、悪役だった。

 そして、行動も悪役だった――はず。

 しかし、蓋を開けてみれば、彼女が虐めていたはずの女の子は幸せに過ごしていた。

 女の子が幼馴染とくっついた途端、彼女は虐めをやめていた事実。

 時より、虐めていた女の子を優しい顔で見守っていた彼女。さっきの言動。

 それが、彼女の本当の内面なのか。



 戸惑う、男達。


 この胸の高鳴りはなんだろうか。


 その時の彼らは気付かなかった。

 俗にいう“ギャップ萌え”という銃弾に撃ち抜かれたという事を。


 

 3人と1人は、新たなはじまりに、それぞれ見えないように――笑った。







 悪役の彼女は、気が動転したまま日々を過ごしていた。


 その後、大学時代の二代目ヒロインの近くにいた友人(?)達にも会う事となり、なぜか同様の失敗を繰り返す。

 会社でも、憎い悪役女の仮面が剥がれ落ちる始末。三代目ヒロインとユージとの関係もうまくいっていない様子に申し訳がたたなくなり、更に焦って、次々と失態を繰り返していった。



 彼女に酷い目に合された男達は、今までの彼女。そして今の彼女の様子に混乱をしていた。


 彼らは考えた。

 罠かもしれない。あれがあの女の手なのだと。

 しかし、罠にしては、彼女の動揺振りに説明がつかない。


 日々、崩れ落ちて小動物の様にビクビクと慌てふためく彼女。

 周囲からバレバレになっているのに、それにも気付かず頑張って悪役の仮面を被る彼女。

 それから目が離せなくなる彼ら。


 男達は初代逆ハーメンバー同様、次々と撃ち落されたのであった。







「よし!」


(あの同窓会から、散々だったけど、今日もちゃんと“悪役”を演じなきゃ!)


 いつもより、気合十分の悪役に戻った彼女は、コーヒーショップのカウンター席で一人ごちた。


(ここで働いている女の子がヒロインっぽいのよね。マスターの事、好きなのかしら)


 なんて、次のターゲットを愛でつつ。

 苦手なブラックコーヒーをチビチビと飲んでいた。



 自分が、今まで騙していた男達から熱い目で見られているのも知らないで、自作の歌を口ずさむ。



「私は、あくやく♪あくやく♪ ヒロイン虐める悪いお~んな~♪ ヒロインのためにゃら演じてみせますぅ♪(以下繰り返し)」



 かくして、悪役だった彼女は、彼女が愛でていたヒロインたちを囲んでいた男達によって、知らず知らずに自ら“ヒロイン”として舞台へ上がらされるのであった。



「私は、悪役なんだってば!!」



結論。

逆ハーメンバーの男達の女の好みは同じで、ちょっとロリコンがはいっている。(どうしようもない)


初代ヒロインちゃんは、幼馴染を捨ててさっさと御曹司と結婚しました。

二代目ヒロインちゃんは、これまた主人公が頑張ってくっつけた先輩と別れて、もっとグレードの高い男とくっつきました。

三代目ヒロインちゃんも、ユージ君と付き合ったとしても捨てるでしょう。


実は、したたかで、計算高かったヒロインちゃんズ。知らぬは主人公だけ。(ヒロインちゃんを純粋無垢と信じているので)

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