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靴道楽

「靴をプレゼントしてやろう。エルシリアとファーリの足のサイズを測らせてくれ。靴職人に命じて、最高の靴を作らせて見せようではないか」

今の俺なら何だってプレゼント出来るのだから、遠慮なく申してみよ。

「私靴には興味ないわ」

「キートン様のくれる物なら喜んでいただきますが、国民の血税ですよ」

まあそれは言いっこなしだ。

それに、太守が贅沢をしないと、国民が安心して働けないと思うぞ。

国王が倹約をして、民が幸せになった例は、案外少ない。

適度の贅沢は必要なのだと思うし、公爵の贅沢は公共事業も同様である。

適度にやらないと、経済が停滞する。

「だからって、靴道楽ですか?国民の反感を買わないといいですよね」

その辺は、イリヤに命じて必死に公爵を庇う予定であるが、期待できない。

多分経済が好景気なら、民も文句は言わないだろうが。

軍靴の注文なら、大量に注文しても民も文句を言えないだろうがな。

兵も削減と配置転換を進め、直属軍を1万6千人にする様に心がけた。

浮いたお金で靴を大量購入する予定であるが、この手で値切り倒すのだ。

値切り倒して、更にポイントも優遇させる。

寒村は無税なのだから、商取引は遠慮なく値切らせてもらうが、キートンはそれが世の為人の為だと、固く信じているのだ。

それが原因で、靴職人は靴の値上げを断行する事になった。

民衆が怒り出さない程度の値上げである。

そのせいで靴屋は儲かり、キートンの理不尽な値下げ要求にも耐え切った。

労働者不足の寒村では、定住希望者が増え、3万人に人口が増えている。

「この靴エルシリアが履いた靴として転売出来ないかな・・・」

そうすれば、靴道楽が金になるから、もう浪費などと言わせないぞ・・・。

「それやるならファーリに絵を描かせた方が高く売れますよ」

安い靴を大量購入して、ファーリが靴に絵を描くのだ。

ファーリは高名な画家であり、数百万ディルスのぼろ儲けが期待出来る。

「いいよ。私がご主人様の金儲けの為に絵を描くよ」

別に金には困っていないから、配分は9対1位で構わないぞ。

勿論ファーリが1で、キートンが9だ。

これ以上お金を儲けてもしょうがないし。

「それで良い。早速絵を描いて、南部で売りさばいてくれ」

ファーリは靴に絵を描くと、南部で売りさばく事にして、南部に向かった。

11月10日に、ファーリは3千万ディルスを所持して戻ってくる。

正確にはミスリル硬貨とオリハルコン硬貨も多かった。

「もう靴道楽を浪費などとは言わせん。立派な商売ではないか」

このファーリの靴は、ファーリの渾身の作品であり魔力まで備わっていた。

南部で売れに売れ、注文も5千万ディルス分承っている。

「ファーリの靴を買い付けようと、商人達が寒村に来ている」

ファーリの人気は寒村を好景気に導いていた。

最近ファーリは、冬眠に入っている。

活動期のファーリなら、もっと良い絵が描けるだろうと思うのだが。

「ご主人様。私眠くて」

眠気覚ましの水を用意してやるから、頑張ってくれ。

「一度描き始めた絵はちゃんと描いてくれ。靴が持ったえない」

一足銀貨10枚もしたんだぞ。

書き損じて捨てるなんて、持ったえない事が出来るか?

この貧乏領主のキートン様がよ。

「終わったわよ。今日は寝かせて・・・」

このドラゴンは、安眠を保証しないと、何をするか分からない。

「寝ていてくれ。多少値段は落ちるが、ディックの作品も売ってみる」

寒村に出向いてファーリの絵を待っている画商達に提案した。

「ファーリは今冬眠状態である。ディックの絵でよければ直に描かせる」

ファーリよりは才能は落ちるが、偽画商の腕前も中々のものだ。

「休眠期のファーリより上手な絵なら、考えましょう」

早速ディックが呼び出されて絵を靴に描かされた。

画商の目利きは節穴ではない。

この絵も相当の才能の画聖の描いた絵だと画商達も認めた。

「この絵なら直に用意していただけるので?」

画商はキートンに尋ねる?

コレクションの為に絵を求めるのではないから、画商にはどっちでもいい。

だが偽画聖の絵だと、売るのに一苦労だがな。

あえて困難に立ち向かい、偽画聖の絵を売る事にしよう。

「ディックの絵で構わない。ファーリが本気で絵を描いてくれるの待っていたら、春になってしまう」

画商達は納得して、ディックの靴を買い取って帰って行った。

「俺の靴道楽の御蔭で、7千万ディルスも儲かったんだぞ」

兵の削減も進み、1万5千まで減ってきているキートン軍である。

浮いたお金で新たな着物でも買う事にしよう。

「キートン様。このお金どう処分いたしましょう」

「鶏だ。鶏を買え」

キートンは養鶏家だから、鶏を買う。

増やした鶏の有望な奴に特殊訓練を施し、闘鶏家に売り飛ばすのだ。

最近は鶏卵より、闘鶏に力を注いでいる。

「最強の鶏を育て上げて、千ディルスで売りさばくのだ」

もう俺の商売を邪魔出来る奴は、エルザスにはいないぞ。

養鶏の邪魔をするなら今度こそ、キートンがリサの敵になるだけだ。

ミシェリアには、港の拡張工事を命令して、千万ディルスを与えておく。

この手の公共事業をケチってはいけない。

どうせ無駄遣いするなら、港を拡張して、エルザス1の港にしてやる。

「投資をするのも悪くはないな。キートン公爵の何において命ずる」

困窮度の高そうな靴職人やその他商人から、大量に買い物をして、経済の活性化を狙う作戦をとる事にした。

南部に持っていけば、7割位減で買い取ってくれる。

金は無駄になるが、商品は無駄にはならないだろうから問題ない。

下手にケチって、寒村が不景気化したら、西方は困るのだ。

最悪寒村だけでも守らないと、非常に困るのだが、経済はそう甘くはない。

よって都でも買い物に励もうと思うのだが、それまで寒村が持つだろうか?

「都を第2の経済圏として、寒村に取り込む計画を立てる」

ギルドに命じて、貧困家庭に仕事を斡旋させよう。

黙って見ているとギルドは直に排他的になるから命令はしないといけない。

「分かっていますよ。都が不景気だと俺らも困りますからね」

ギルドの長は、あっさりとキートンの命令を受け入れた。

「その代わり仕事はキートン様が用意してくださいね」

キートンが用意した仕事は、埋蔵金探しだったが、都人は喜んだ。

お宝は数十ディルス位の金貨を街の各地に仕掛けておく。

暫くは好景気が続く事だろうと思うが、安心は出来ない・・・。

定額給付金とか国民に支払う総理もいるんだし、問題はないだろうと思う。

「まあ国民を手懐けるのは、欲で釣るのが一番ですしね」

「私お宝探ししたい~」

ファーリが面白がって、宝探しに参加していた。

こうなると国民は更に煽られて、宝探しに熱中してきた。

「お宝を手に入れるぞ~」

「お宝手に入れて、就職用の礼服を買うんだぁ・・・」

礼服も買えないと、面接もしてくれない企業は実に多く、失業者の悩みの種なのだが、どこの国家でも抜本的な改革がなされた例は聞かない。

この理屈だと、貧乏人は絶対に大企業に就職出来なくなるんじゃないか?

それで「こんなヘボい会社にしか就職出来なったから、無能に決まってる」とか言われるのである。

不条理な事このうえない。

「礼服の着用は、面接の必要条件から外せ」

どうしても採用したくないなら、仕方がないが話位は聞くように命令した。

企業もキートンの命令に逆らう心算もない。

そのせいもあって、多少は失業率が下がってきた。

11月15日。

早くも失業率0を達成する事になる。

皆キートンの治世に期待をして、将来の飛躍に備えているのだ。

人間見下していても、面接にさえこぎつければ、特に問題がない限りは、トイレ掃除位はさせてもらえるものである。

そこから成り上がるのは、本人の才覚次第だろう。

「キートン様。俺達は40ディルス儲けさせて頂きました」

「俺は30ディルスです」

「有難く就職の軍資金に使わせてもらいます」

この人達はフリーターの冒険者モドキである。

キートンの命令で、企業を説得するチャンスに恵まれ、就職する事の出来た若者が、お礼の品を持って謁見を求めてきた。

「貧乏ですので大した貢物は出せませんが、握り飯を食してください」

「部下の慰労に回すが良いか?もう食べきれないよ」

キートンに御礼を持ってきた近隣のサラリーマンが多いのである。

殆ど食糧だが、食い切れない。

「勿論でございます」

サラリーマンの許可を貰ったので、ファーリを呼んだ。

「ファーリ。貢物の食糧食っても良いぞ」

「ホントに?」

ファーリは貢物の食糧を片っ端から食い始めた。

「流石にファーリ様だ。俺の嫁にしたら一族が破産するな・・・」

大飯位とは聞いていたが、予想以上の食いっぷりだ。

キートンの財力がないととても養えないではないか。

ドラゴンは金は溜め込むが、実際に使用するのは珍しい。

「久しぶりに満足するまで食べられたわ」

サラリーマンは、この食欲に怖気付いたが、味方である事に感謝した。

「キートン様も良く食べる部下をお持ちだ」

「頑張って仕事に励めよ。そして俺に租税を納めてくれ」

キートンはサラリーマンに銀のかんざしを授けると、去らせる事にした。

残念だが仕事が忙しくて領民の声を聞いてる暇がない。

宝探しで儲けた冒険者とサラリーマンがカジノに大挙する可能性を考えた。

「ああちょっと待て」

立ち去ろうとするサラリーマンを、キートンが止めた。

「折角だから、靴を一足そなたに授ける」

靴は在庫が沢山あるから、褒美として授けてしまおう。

「感謝します。こんな高価な靴いただいて本当にいいんですか?」

何を言っている?

こんなものは必要経費に決まっている。

しっかり働いて(このサラリーマンは都在住)租税を納めてもらう為の。

只でさえ扱い悪そうなのに、靴のせいでミスをしたら、クビの口実にされるかも知れないじゃないか。

「では精進させていただきます」

サラリーマンは喜んで、都に帰って行く。

失業率が0のうちに、何か新しい景気刺激策を考えないといけないな。

困窮度の高い商人から買うように努力はしてるのだが。

だがそんな小手先の経済政策ではもう持たないかもしれない。

キートンは更なる資金を投入する覚悟を固めた。




礼服無くて、どれだけの失業者が困ってると思うんだ?

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