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美麗な執事のお出迎え

青灰色の髪をなでつけ、背筋をぴんと伸ばし燕尾服を着こなす姿は紳士そのもの。

ミッドナイトブルーの瞳を洒落たモノクルが彩り、じっとルネを見つめる眼差しからは知的な美しさを感じる。

「ルネ様でいらっしゃいますね?」

形の良い唇が紡ぐ言葉は深く低くルネの耳に響く。

「はい…あの、貴方は?」

「わたくし、執事のルシアンと申します」

執事?と思わずルネは首をかしげる。屋敷の主人であるおじいちゃんは亡くなっているのになぜ執事がいるのだろうか。そんなルネの疑問にルシアンが答えるように続ける。

「ヴァロン様から生前に屋敷の管理を任され、わたくしがこの屋敷の管理をしております。

お聞きになりたいこともあるでしょうし、続きは中でお話しましょう。屋敷にご案内いたします」

そう言ってルシアンがぱちんと指を鳴らす。すると門が勝手に動き出しゆっくりと開いた。

魔術師の屋敷らしく、魔法がかかっているようだ。魔法で勝手に開く門を見るのは数年ぶりだったルネは少し懐かしくなった。

「お荷物をお預かりしましょう」

「え?あ、ありがとうございます」

「いえ。では、参りましょう」

ルシアンにエスコートされ、門をくぐり、屋敷まで続く美しい庭園を通り抜ける。

外から眺めても十分に美しかったが、近くで見るとよりいっそう美しい。

植木はよく手入れされているし、咲き誇る薔薇も生き生きとしている。

滅多に見ることのできないような美しい庭園に見とれていたルネは、自然と歩みが遅くなった。

「お気に召されましたか?」

すっかり庭園に目を奪われ、無言になったルネにルシアンが声をかける。

「ええ!とても美しい庭園ですね」

「それはそれは」

「ここの庭師さんはとても良い仕事をしてらっしゃるんですね」

「恐縮です」

なぜルシアンさんが恐縮しなくてはいけないのだろうか。首をかしげるルネにルシアンが答える。

「ここの庭園はわたくしが手入れをしております」

「え?お一人で?」

「この屋敷にはわたくししかおりませんので」

……どうやら庭師に転職できるだけの腕を持っているらしい。それに美的センスもあるのだろう。

ルネはひそかに感心した。


庭園をしばらく歩いていくと、屋敷の入り口へとたどり着いた。

ルシアンが再び指をぱちんと鳴らす。門同様、大きな扉がゆっくりと開いていく。

扉が開き終わるのを見届け、ルシアンは扉の横に控えるように立つと流れるような所作と共に深く頭をたれた。


「お帰りなさいませ、ルネ様。貴女様のお帰りを心よりお待ち申し上げておりました」

「…ただいま」


ルネの返事を聞いて顔を上げたルシアンが静かに微笑する。初めて来た屋敷で、初めて言ったはずの言葉。なのに、その言葉は屋敷の空気の中にひどく馴染んでいった。

後々考えてみれば、この時どうして彼が私にお帰りなさいと言ったのかは分からない。もしかしたらルネの中に彼の前の主人の面影をみつけたのかもしれないし、屋敷に再び主が帰ってきたことに関してかもしれな。ただひとつ確かなことは、彼の低い声には何か想いが込められているような気がして、気づけばそれにつられるようにルネも返事をしていたということだった。


大変長らくお待たせしました。

いつもありがとうございます!貴女様に心より感謝を。


ゆっくりゆっくり言葉にしているので更新は遅いかもしれませんが、

温かい目で応援してくださると嬉しいです。

これからもどうぞよろしくお願いします^^


3/15 修正いたしました。詳しくは活動報告をご覧ください。

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