9.男子軍団第二の刺客
悠也達が目指す屋上に 一人寂しくベンチに座る咲の姿があった。咲は、悠也達が自分のところへ男子軍団の襲撃を受けつつ向かっている事は知るよしもない。咲は、結花にコーラを頼んだのだがなかなか結花も戻って来ないことにいじけていた。しまいには
「はぁ~、結花も戻って来ないや……何してるんだろ? もしかして、結花も悠也くん争奪戦に参加しに行ったのかな……? そして、腕組んで悠也くんと歩いてたりしてたりするのかなぁ~」
と、被害妄想をする始末。咲は、大きなため息を吐き手に持ってたコーラの入った一升瓶を口に持っていき勢いよく飲み始めた。
その頃、とある一室に集まっている男子軍団は、次なる刺客を呼びよせていた。
「雪乃介が負けてしまうとは誤算だったな。次は、お前達に任せるぞ! 村上! 白石!」
「はい、分かりました。このバカげたイベントをすぐにでも止めさせて来ます! そして、櫻井悠也に天罰を!!」
と、村上と呼ばれた男が言った。
「リーダー! 必ずや悠也をこてんぱんにしてやりますよ」
と、琢磨も拳を天高く突き上げて言った。
「よし! その意気だ! 幸運を祈る!」
村上と琢磨は、悠也の元へと向かって行った。
その頃、悠也達は、校舎の前まで来ていた。
「やっとここまで来れたよ。あと少しで咲ちゃんに会える! これも、結花ちゃんや早乙女さんのおかげだよ」
「あはは、そんな事ないよ私なんて。むしろ早乙女さんのおかげだよ~。悠也くんに迫ってくる女子や男子を追っ払ってくれてるから」
「そうかもね。でも、二人には本当に感謝してるよ。結花ちゃんが一緒にいてくれなかったら咲ちゃんの居場所も分からなかっただろうし、分かったとしても一人じゃ、辿り付けないと思う」
「そっか、まぁ、あと少しだけど油断大敵だよ。今日の悠也くんはいつどこから狙われるか分からないんだから」
「そうだね……」
悠也達が、下駄箱のところに着いたとほぼ同時に、生徒会長の理央が校舎の中から下駄箱の方へと向かって来ていた。
理央に気づいた悠也は
「田島さぁ~ん! 何してるの?」
と声をかけた。声をかけられ悠也達に気づいた理央は、悠也の元に行き
「あら、櫻井くん! まだ唇は守れてるのかしら? それとも奪われちゃったかな?」
と、悠也の顔をまじまじと見る。
「えっ、まだ守ってるよ! その為に今、僕が心に決めた人のところに向かってるんだよ」
「なぁ~んだ、つまんないの! てっきり櫻井くんの両隣に女の子がいるからもう済ませたのかなって思ったのに」
「確かに……奪われかけたけど……ちゃんと分かってくれて、今はいろんな意味で助けてもらってるんだよ」
「へぇ~、そうなんだ! よかったじゃないの。私は、生徒会長って立場だからあからさまに櫻井くんの味方には慣れないけど……応援しておくわね!」
「あ、ありがとう! 田島さん!」
しばらくの間悠也達と理央が立ち止まって会話していると、そこに男子軍団の刺客村上が姿を現した。そして
「見つけましたよ! 櫻井悠也! 今すぐこのくだらないイベントを止めなさい! さもないと」
「えっ、このイベント始めたのは僕じゃないし……むしろ僕は被害者だよ……て言うか君は誰なの?」
「僕を知らないのかい? 櫻井悠也くん。僕はね、この学校の生徒会副会長の村上慎吾だよ。覚えておいてくれたまえ」
「へぇ~、そうなんだ? 副会長っていたんだ? 知らなかったよ! 本当なの? 田島さん!」
「えっ、あぁ~、村上ね! 一応列記とした生徒会副会長よ。ただ、コイツったらやたら影が薄いのよ。会議しててもいるのかいないのかが分からないし…ホント困ったものなのよ!」
と、理央は溜め息をつきながら言った。
それを聞いた村上は、
「会長!! ひどいじゃないですか! まるで僕が空気みたいな言い方をして!」
「いやいや、ほんっとに村上存在感ないから!」
「そんなぁ~……いや、そんな事はどうでもいいです。櫻井悠也! どうしてもこのくだらないイベントを即刻止めなさい! いいですね!」
「いや、だから僕は被害者であって……このイベントは、この学校の古くからの伝統のイベントらしいし……田島さんに言ってよ! ここに生徒会長いるんだし……」
「フッ、無駄だよ。会長は僕の味方だからね! 会長も言って止めさせてくださいよ。こんなイベント!」
「はぁ~! 村上あんた影が薄いだけではあきたらずバカでもあるのね? このイベントは、私が正式に許可出したのよ! だから中断なんてありえないわ! 早く終わらせたかったら櫻井くんに早く誰かとチューさせる事ね!」
「なっ、会長まで僕の敵になるつもりですか? 会長が許可したなんて嘘ですよね? 僕は信じませんよ!」
「あんたねぇ~、文化祭実行委員会の会議の時いたんでしょ! その時の多数決で決まった事なの? だから無理! 止めれないの! これは会長の権限よ! 分かった」
「いや、でもこのイベントは、櫻井悠也しか得しないじゃないですか? 櫻井悠也以外の僕達男子はどうしたらいいんですか?」
「さぁね、それは自分達で考えなさいよ!」
「そんな……て言うか、そもそも何で櫻井悠也が選ばれたんですか? そこも納得出来ないし、僕とかでもよかったんじゃないですか?」
「はぁ~、そんなのどうでもいいでしょ! っか、まずあんたみたいな影の薄い村上なんか選ばないわよ!」
「よくないですよ! 教えてください!」
「うるさいわね! 分かったわよ! ちょっと櫻井くんがここにいるから言いたくなかったんだけど……櫻井くんをラッキーボーイに選んだ理由は、私が櫻井くんの事が好きだからよ! 分かった!」
と、少し頬を赤らめて悠也の方をチラッと見た。
「た、田島さん……そうだったの? その気持ちはうれしいよ! ありがとう」
「こんな事で悠也くんをラッキーボーイに選ぶのは迷ったけど……チャンスかなって思った訳なのよ。そういう事よ、分かった? 村上」
「会長……自分勝手な……すぐに中止してください」
「しつこいわね! だから悠也くんが誰かとチューするまでは止められないのよ! なんならここで私と悠也くんがチューして止めましょうか?」
「それも許しません! 会長は櫻井悠也には譲りませんよ!」
村上の言った言葉に結花は、ピンっときて
「ねぇ、田島さん? もしかして、副会長はあなたの事が好きなんじゃないかしら?」
と、理央に耳打ちした。
「いやいや、ありえないわ! 村上なんか私のタイプじゃないもの!」
と、思い切り首を横に振った。
理央の言葉を聞いた村上は、思い切り肩を落とし落ち込む。
それを見た悠也が
「田島さん……副会長傷ついたみたいなんだけど……?」
「いや、でもハッキリ言っとかないと! 私は、村上なんかこれっぽっちも好きにならないわ」
と、ハッキリと村上に告げた。
村上は、ますます肩を落とし
「会長……ひ、ひどいです~、うわぁ~ん」
と、泣きながら走り去っていった。
「やっといなくなったわね! 悠也くん、この先にいるんでしょ、好きな人が? 早く行って気持ちを伝えなきゃダメよ」
「う、うん! ありがとう、田島さん! じゃ、行くね」
と、理央に手を振り校舎の中へ入っていった。
その頃、もう一人の刺客の琢磨は、悠也を捜すどころか、一部の男子達と一緒に金髪美少女の麗子に見とれていた。
「お~ほほっほ。やっぱり男子は、私みたいな美人には弱いようね! ほら、そこの男子達! 私といいことしましょうか?」
と、琢磨達男子に投げキッスをプレゼントした。琢磨達男子は、投げキッスを受けて目がハートになり麗子の前に群がった。
「おっ~ほっほ。私の魅力は完璧ですわぁ~。では、あなたたち行きますわよ」
「はい! お嬢様ぁ~」
と、麗子の後について行った。