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6.黒魔術研究室にて

 悠也が、麻奈美の手から難を逃れた頃、ある部屋で集会が行われていた。そこには、額のすみに四つ角をつくった男子達が大勢いた。そんな男子達のリーダーらしき男が 「よぉ~し、いいか、お前等ぁ~! よく聞け! 今、開催中のラッキーボーイキス争奪戦というイベントは不公平だと思わないかぁ~? 何故、一人だけ女子にチヤホヤされるんだ! しかも、キスまでせがまれるとは羨ま……いや、けしからん。断固反対だ!」

「もちろんだぁ~! アイツだけにいい思いさせてたまるかぁ~」

と、それぞれ拳を突き上げ叫んでいた。


 その頃、悠也は部室棟の一番端に来ていた。一番端で日の光も届かない部屋のドアの上には『黒魔術研究同好会』と書かれていた。

「へぇ~、こんな同好会もあったんだ。どんな事してるんだろ?」

と、興味津々で黒魔術研究同好会の部室のドアを少しだけ開けて中を覗いてみた。部屋の中は、薄暗く白いモヤモヤがたちこめて部屋の奥の方に蝋燭らしき炎がゆらゆらと揺れながらうっすらと部屋を灯していた。

そんな部室の中を眺めていると

「誰?」

と、女の子の小さな声が聞こえた。

悠也は、見つかったと思いその場を立ち去ろうとしたとき、

「姿を見せないと……呪う……」

と、また小さな声が聞こえた。悠也は、背筋に悪寒が走り呪われたらたまったもんじゃないと思い仕方なくドアを開け部屋の中へと入った。

悠也は、蝋燭の灯が灯っているところへ行くとそこに、黒のトンガリ帽子をかぶっている女の子を見つけた。

「あなた……誰?」

「えっ、あ、あの、僕は、櫻井悠也って言います……」

「櫻井……悠也……」

と、女の子は机の上にある魔方陣らしき紙の上の水晶玉に手をかざしながら言った。

「あの~、君は? いったい?」 

「私、夢野芹香ゆめのせりか

と、水晶玉から目を離さず名乗った。

「で、夢野さんはここで何をしてたの?」

「召喚……」

と、ボソッと言った。

「しょ……召喚? 召喚って呼びよせるやつだよね……? ちなみに何を召喚しようとしてたのかな?」

「悪魔……」

「へぇ~……!? あ、悪魔? ちょ、ちょっと……それは、や、ヤバいんじゃ……」

悠也、直ぐ様踵を返し部屋から出ようとドアの前まで行くと、ドアが勝手に勢いよく閉まった。

「うわぁ~」

悠也は、突然勝手に閉まったドアに驚き尻もちをついた。

「ダメ、逃げられない……」

芹香は小さく呟いた。

「ちょ、な、何で? もしかして……邪魔したから……」

「召喚の途中、邪魔したから……私の友達怒ってる……」

「友達って? 夢野さん以外誰もいないんだけど……」

悠也は、辺りを見渡すも芹香以外誰もいない。

「やっぱり、誰もいないじゃない」

「いる……あなたの後ろ……」

「えぇ~!? ちょ、ちょっと勘弁してよぅ~」 悠也は、背中がゾッとして後ろを振り向けなかった。

「ねぇ、夢野さん……どうしたらいいのかな……?」

「さっき、水晶玉であなたを見た……」

「僕の何を見たの?」

「櫻井……悠也。今、女子全員に追いかけられて大変な事に巻き込まれてる……」

「実はね……女子全員から逃げてるところだよ。唇を奪われそうだから」 「そう、そして今日その中の誰かとキスをするところが見えた……」

「えっ! そうなの? その子はいったい誰?」 「それは……教えれない……」

「ど、どうして……」

「それは……顔がハッキリ見えなかった……」

「えぇ~、そんなぁ~」 「もう一度……見てあげてもいい……ただ、一つだけ……条件がある」

「本当に! 見てくれるんだね! で、条件って何かなぁ~?」

「それは……あなたが私にキスをする……」

「あっ、なるほどね……!? って、無理でしょう! 今、ここでキスしちゃったら水晶玉で見ても意味ないじゃん」

「いや……なのか?」

「無理無理、僕達は初対面だよ! それでいきなりキスだなんて……外国じゃないんだし」

「そっか……では、仕方ない……」

そういうと芹香は、胸の前に手を出しボソボソっと小声で何かを呟いた。 その途端、床に魔法陣らしきものが光だした。

「うわぁ~、な、何これ……急に床が光だしたよ……」

悠也は、何かよくない事が起こりそうな予感を感じて、その場を立ち去ろうとするが、どうした事か、身体が動かなくなっていた。

「えっ! 身体が動かない……ど、どうして? 金縛り?」

「それは、私の友達に……あなたを押さえてもらってる……」

「な、何の為に……?」 「それは……あなたの唇をもらう為……」

そう言うと芹香は、じわりじわりと悠也に近づいて行く。


 一方、その頃咲は財布を片手に食堂の自販機の前にいた。

「はぁ~、悠也くん……会いたいよぅ~」

と、呟きながら自販機にお金を入れてジュースを購入する。その動作を何度も繰り返していた。それを見兼ねた結花は、

「咲~、あんた何本ジュース買うのよ! ちょっと買いすぎじゃないの……」

「いいの! こうなったらヤケだもん。飲みまくってやるぅ~」

「咲って、ハブてちゃうと手におえなくなるよねぇ~、全くもぅ~」

結花は、小さくため息をつき、咲の姿を見つめていた。

しばらくすると、咲が買い物袋を食堂のおばちゃんに何枚かもらい買ったジュースを袋に詰めて

「結花、もう行くわよ! 一個持って!」

と、結花にジュースが沢山入った袋を渡し食堂を後にした。


 その頃、悠也は動かなくなった身体をどうにかしようと必死にもがいていた。しかし、身体はビクともしない。

そうしてる間にも芹香が迫って来ていた。

そうして悠也は、芹香に腕を掴まれた。

「お願いだよ! 夢野さん! 止めて!」

悠也は、必死で懇願した。しかし、悠也の必死の懇願も聞き入れられる事はなく、芹香の顔が悠也の目の前に迫って来ていた。

「本当に許してよ! 僕は、好きな人がいるんだ。初めては、その娘とじゃないと嫌なんだ……」

「あなた……往生際が悪い……私の目を見て」

芹香にそう言われ悠也は、芹香の目を見た。透き通った綺麗な瞳に悠也は、引き寄せられるように意識が薄れていく。

悠也は、薄れていく意識の中、咲の姿が過ぎった。そして

「やっぱり僕は、咲ちゃんが好きなんだ~!」

と、声に出して正気に戻った。

「私の術が……効かないなんて……仕方ない」

芹香は、再び胸の前で手を組み呪文らしき言葉を唱える。すると、悠也の動かなくなっていた身体が動くようになっていた。

「あなたの……強い想いに負けた……」

「夢野さんありがとう」

悠也は、芹香に頭を下げて、芹香の元を後にした。

「櫻井……悠也……あなたのキスする相手は分かってる……」

と、芹香は悠也がいなくなった後ボソッと呟いた。

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