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4.体育倉庫にて

 悠也は、由美と別れてから体育館に来ていた。

さっきまで咲が体育館にいたのだが、悠也が来る三十分前に咲は体育館を後にしていた。

「ここにも、咲ちゃんいないのかぁ~、何処にいるのかなぁ~、早く見付けて文化祭を咲ちゃんと満喫したいのになぁ~」

悠也は、肩を落とし落胆した。

そんな悠也の前に、悠也に敵対心を燃やしている男子達が現れた。

「お前が、ラッキーボーイの櫻井か? テメェ一人だけ女子にチヤホヤされやがってムカつくんだよ! 一発殴らせろや」

と寄ってたかっていちゃもんをつけてきた。

悠也は、後退りしながら

「ちょっと待ってよ。何で殴らせなきゃなんないのさ。僕だって好きでラッキーボーイしてるんじゃないんだから……」

「問答無用だ! 覚悟!!」

男子達は、一斉に悠也に殴りかかる。

悠也は、殴られる! と思った瞬間、男子達の後ろの方から聞き覚えのある声が聞こえた。

「ちょっと! あなた達! 寄ってたかって卑怯なんじゃないの? この学校でイジメなんて許さないわよ!」

その声は、生徒会長の田嶋理央だった。

理央の声に男子達は驚き、悠也を取り囲むのを止めた。

男子の一人が

「生徒会長! 何でこんな奴がラッキーボーイに選ばれたんだよ! 納得いかねぇよ」

「あら、私はちゃんと厳選した上で櫻井くんを選んだのよ~。何か文句があるのかしら? まして、もし、あなたが運よくラッキーボーイに選ばれたとしても……そんな猿みたいな顔じゃ、女の子も寄って来ないわよ。あ~あ、嫌だわ! モテない男こそよく吠えて。バッカじゃないの? 一回、自分の顔を鏡で見てから意気がる事ね~!」

「言わせておけばぁ~、たかが生徒会長の分際で許さん」

理央にけちょんけちょんに罵られた男子は、額の隅に四つ角を作って怒っていた。悠也は、さすがにまずいと思い、理央のところへ駆け寄ると

「た……田嶋さん……何も、そこまで言わなくても……」

「あっ、櫻井くん! 大丈夫だった? 怪我してない?」

「うん、田嶋さんのおかげでね! ありがとう」

「そっかぁ~、よかった! 櫻井くんに何かあるとイベントが盛り上がらないしね!」

と、理央は悠也に対しニコッと笑って見せた。

「あはは……じゃ、僕は、今日一日しんどいな……」

「まぁ、それはともかくとしてこの場を立ち去るわよ!」

と、悠也の耳元で悠也にしか聞こえないようにボソっと話す。

「え、でもどうやってこの状況を打破するの?」

悠也も理央の耳元で小さく返答する。

その二人の状況を見ていた男子は、

「テメェ等! 何二人でイチャイチャしながら話してんだよ! 何から何までムカつきやがる」

「それは、あなたがモテないから仕方ないんじゃないの? 私は、櫻井くんの事好きだし! 別にあんた達に何言われようが私達のラブラブ会話を邪魔しないでよね! それと、今後、櫻井くんにひどい事するようなら今日は、学校から出て行ってもらうから! せっかくの楽しい文化祭の邪魔をしないで!」

と、理央は男子達に人差し指をピンッと伸ばし向けて睨みつけた。

男子達は、理央に少し驚き

「ちっ、仕方ねぇな! 今回は見逃してやるぜ。だが、次はそうはいかねぇからな! お前だけ女子とキス出来るなんて許せねぇ~、必ず阻止してやっから覚えてやがれ」

と、どこにでもあるお決まりの台詞を言って、体育館を出て行った。

理央は、男子達が体育館を出ていくのを見送ると、一つ深呼吸をして高ぶった気持ちを落ち着かせる。

「ふぅ~、全く男子達はこのイベントにかける女子の気持ちを考えなさいよ。三年に一度だけなんだから」

「田嶋さん……しっかり生徒会長してるんだね」

「当然じゃないの? みんなに選ばれた以上はしっかりやらなきゃだからね」

「そっか、でも助けてくれてありがとう」

「べ、別に櫻井くんを助けた訳じゃないわよ。イベントの為だからね。勘違いしないで」

「あはは、そっか、でもありがとう」

理央は、悠也の笑顔に急に胸が高鳴るのを感じたが、気持ちを抑え悠也から視線をそらす。

 しばらくの間、悠也と理央の間に沈黙が流れた。しかし、その沈黙も次の瞬間に打ち消される事になった。その原因とは、先程は、男子を追い払ったが、次に女子達の声が体育館の入口付近から聞こえて来た。

「うわっ! 今度は、女子かぁ~、どうしよう逃げないと……」

と、悠也がオロオロしだした。それを見た理央は 「もう、いちいちそんな事でオロオロしない!」

「いや、だって僕は嫌なんだよ……どうしても唇を奪われる訳にはいかないんだもん」

「全く……櫻井くんって変わってるわよね」

そう言うと理央は、悠也の手を掴み体育倉庫の中に入り

「あった! ここなら見つからないわ!」

と言って跳び箱の中に二人は身を隠した。


 一方、その頃、咲はと言うと、なかなか悠也に会えないのがだんだんと辛くなっていて、ついには、ハブてていた。

「あ~あ、つまんないよぅ~、私もう帰ろかなぁ~、折角気合い入れて来たのになぁ」

「咲ったらハブてないの、櫻井くんも絶対に咲の事捜してるよ」

と、結ぶ花が慰めるも

「いいもん、悠也くんは私の事なんて何とも思ってないよ……」

と、ますます落ち込んで行く。

咲は、下を向いたまま校内の廊下を歩いていると保健室の前までやって来た。咲は、そのまま保健室に入る。咲が、保健室のドアを開けると、保健の先生、柊杏子がいた。

杏子先生は、美人でスタイルも抜群で、いつも杏子先生の豊満な胸が男子生徒を虜にする大人の色気がある。

杏子先生は、咲に気付き 「あら、どうしたのかしら? ラッキーボーイちゃんを追い掛けてて怪我でもしちゃったの?」

「ち、違います。私は、参加してません……」

「あら、どうして? もったいないわよ、三年に一度しかないのに」

「そ、それは……」

「ははぁ~ん、自分に自信がないわけね、でも、ダメよ。女は度胸よ! やってもないうちから落ち込んでたらきりがないわよ」

「……」

咲は、自分の心を見抜かれてしまい黙ってしまった。

「まぁ、答えは自分で探しなさいね」

「は……はい、あの~、先生?」

「何かしら?」

「いや、先生の机の下にある空の一升瓶をもらってもいいですか?」

「あっ、これ? 別にいいけど、ただし他の先生には内緒よ! 私が隠れてお酒飲んでた事は」

「お酒飲んでたんですか? 分かりました。内緒にしときます」

と、咲は杏子先生から空になった一升瓶を受け取った。


 その頃、悠也と理央はまだ、体育倉庫の跳び箱の中で身を隠していた。 「あのさ、田嶋さん……今言っても遅いかもだけど……田嶋さんまで隠れなくてもよかったんじゃ……」

「う、うるさいわね……私だって好きで一緒に隠れた訳じゃないわよ。仕方なくよ、仕方なく」

「そうなの?」

「そうよ、私が一人体育館にいたら不自然じゃないの」

「この状況も不自然かと……」

「何? 櫻井くん、私とこうしてるの嫌なの? 私は、別に嫌じゃないわよ!」

「別に嫌じゃないけど、狭いし、田嶋さんと密着してて恥ずかしいよ」

「バカ、変な事考えないでよ!」

「そんな事考えてないから」

「ふ~ん、あっ、そうだ、今この状況だし、櫻井くん私とキスする~? 密室で男女二人きり……シチュエーションはいい感じよ」

「た、田嶋さん……何言ってんの……田嶋さんは興味なかったんでしょ。それに僕には好きな人がいるから……無理だよ」

「何だぁ~、つまんない! ちょっと本気だったのに……好きな人がいるんなら仕方ないわね……諦めるわ」

「ゴメンね……僕も早く捜さなきゃ」

「そっか……じゃ、そろそろ行きなさいよ。静かになったみたいだし」

と、跳び箱の上を開け跳び箱から出る。体育倉庫のドアの隙間から覗き女子達がいない事を理央が確認して

「今なら、大丈夫よ! 早く行って!」

「ありがとう田嶋さん」

悠也は、理央にお礼を言って体育館を後にした。

そんな悠也の後ろ姿を見つめながら理央は

「頑張ってね! 悔しいけど応援してるわ、悠也くん」

と、小声で呟いた。

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