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3. ロリ少女とお嬢様

 やっとの事で蘭子から逃れた悠也は、教室に向かった。

教室に着いた悠也は、ドアを開け教室内を見渡すも、目的の人がいないのに肩を落とす。

「はぁ~、此処にはいないかぁ~、咲ちゃん何処にいるんだろう。早く、咲ちゃんを見つけないと……」

と、教室の窓辺からグラウンドを見つめた。

グラウンドでは、男子、女子共に悠也を捜すのに必死になっていた。

「ラッキーボーイの櫻井くんは、何処にいるのよ~」

「あんにゃろー、見つけたらただでは済まさん」

など、様々に叫びながら悠也を捜している。その姿を見ながら悠也は

「何が、ラッキーボーイだよ。僕にしたら全然ラッキーでも何でもないじゃないか。咲ちゃんも見つからないし……最悪な一日になりそうだよ」

と、呟きながら机の上に突っ伏した。

しばらくの間、教室でぼんやりしていると、突然、ガラガラっと勢いよく教室のドアが開かれた。

 ドアを開いたのは、誰が見ても小学生ぐらいの身長で、スタイルも小学生並。髪の毛は、可愛いらしい大きなリボンを頭に乗せてくくっている。何処から見ても、美少女小学生だった。

「あっ、お兄ちゃんみっけ~、お兄ちゃん教室で何してるの?」

悠也は、声をかけられた方を向くと

「何だ、由美ちゃんかぁ~、びっくりしたよ」

悠也が、由美と呼ぶ女の子の名前は、椎名由美。彼女は、悠也と同級生だ。

 悠也と由美は、高校入学の時に知り合った。悠也が寝坊して入学式当日遅刻ギリギリで走って学校に向かって校門をくぐった際に、由美とぶつかったのが始まりだった。悠也は、最初に由美を見た時

「痛ったぁ、ごめんなさい! 大丈夫ですか?」

「私は大丈夫だよ。そっちは、怪我ないかな?」

「うん、大丈夫」

と、悠也は、顔を上げた時小さな女の子が目に入った。

「あれ、ここ高校だよ。君、小学生だよね。どうしたの?」

「私、小学生じゃないもん。れっきとした高校生だよ。私、人より少し成長が遅いだけだもん。イジメちゃ嫌だよ」

と、泣き出した。

急に泣かれ、悠也は焦って

「あっ、泣かないで。ごめんね。君があまりにも可愛い小学生に見えたからつい……ごめんね」

「私、君って名前じゃないもん。由美だもん」

「そっかぁ、由美ちゃん、お願いだからもう泣かないで、ね!」

と、悠也は由美の頭を優しく撫でた。

「ふぁ~、頭撫でられたら気持ちいいよぅ。お兄ちゃん」

由美は、顔を真っ赤にしながら照れていた。

「あのさ、僕はお兄ちゃんじゃないよ。櫻井悠也って言うんだ。これからは、よろしくね由美ちゃん」

「うん! よろしくね。お兄ちゃん!」

「あ~、まっ、いっか、じゃ、早く行かなきゃ遅れちゃうよ」

と、悠也は、由美の手を取りそのまま校舎の中へと向かった。

それからというもの、由美は、悠也の事をお兄ちゃんと慕うようになったのだ。


 由美は、悠也のいるところに行くと

「お兄ちゃん、何してたの? 何かね、みんなお兄ちゃんを捜し回ってるみたいだよ。何かあったの?」

と、心配そうな表情をして悠也を見つめる。そんな由美に悠也は

「由美ちゃんは、知らないの? 僕がみんなに追われてる理由を」

「うん、どうして?」

「あのね、実は……」

悠也は、事の始まりを由美に全て話した。

「へぇ~、お兄ちゃんがイベントのラッキーボーイに選ばれちゃったんだ。で、女の子達はお兄ちゃんとチューするために走り回ってたんだね」

「そうなんだよ、だから、教室なら大丈夫かなって思ってここにいたんだよ。由美ちゃんも、この話聞いて参加する気になっちゃったかな?」

「ううん。私は、参加しないよ。私にとってお兄ちゃんはお兄ちゃんだもん。私の夢は、スタイル抜群の女性になる事だし、お兄ちゃんとは、チューしたいけど……チューしたとこで、スタイル抜群になるわけでもないもん。お兄ちゃんが困ってるなら私は、お兄ちゃんを助けるからね」

「ゆ、由美ちゃん、ありがとう」

悠也は、由美の頭を優しく撫でる。

「はうぅ~、お兄ちゃんに頭撫でられると幸せだよぅ」

「あはは、由美ちゃんは可愛いね。将来が楽しみだよ」

「えへへ、見ててね私、お兄ちゃんに相応しい女の子になるんだから」

「はいはい、分かったよ。由美ちゃん!」


 一方、咲はというと、グラウンドを離れ、体育館に来ていた。

「はぁ、悠也くん……此処にもいないよ。何処にいるの? 悠也くん? 会いたいよぅ」

咲は、なかなか悠也に会えないのが、悔しくて仕方なかった。

「まぁまぁ、咲! 落ち着きなよ。そのうちばったり会うと思うからさ」

「もう、結花はぁ~、人事だと思ってぇ~! いいもん、意地でも悠也くんを捜してみせるわ」

咲は、そう自分に言い聞かせ体育館を後にした。


 その頃、悠也は由美とたわいもない会話で盛り上がっていた。しかし、その楽しい時間もつかの間、再び教室のドアが勢いよく開かれた。すると 「お~ほっほっほ。私は、綾瀬川麗子と申しますわ。貴方ですわね~、ラッキーボーイの櫻井悠也は!」

「えっ、そうですが……何か?」

「聞きましたわよ。貴方にキスをすれば、願いが叶うと! 喜びなさいな、この私、麗子お嬢様がキスをしてあげようと言うのですから」

「いや、勘弁して下さい……」

「そうは、いきませんわよ。この学校一美しい私の誘いを断るなど許せませんわ。そこで、じっとしときなさい。では、いっただきますわ~!」

麗子は、悠也目掛けて飛び込んで来た。

咄嗟に悠也は、麗子をかわす。

「ちょ、ちょっと、逃げないでくださいますぅ。じっとしてなさい」

「無理ですよ。僕は、心に決めた人がいるんです。だから初めてはその人の為にとってるんです。勘弁して下さい」

「そんなの関係ございませんわ」

悠也が麗子から逃げ回っている中、由美が

「もう、いい加減にしてよぅ~、お兄ちゃんが困ってるじゃない! 私のお兄ちゃんをイジメないでよぅ~。うわぁ~ん」

由美は、大声で泣き出した。それに麗子はびっくりして

「な、何ですの? この娘は! うるさいですわねぇ~」

「うわぁ~ん。お兄ちゃんから離れてよぅ~、お兄ちゃんをイジメないでよぅ」「うっ、仕方ないですわね! 今回は、引き下がりますけど、今度はそうはいきませんわよ。では、また! お~ほっほっほ!」

麗子は、バツの悪そうな顔をしながらこの場を離れた。

「由美ちゃん、ありがとう。助かったよ!」

と、頭を撫でた。

「ふぁ~、お、お兄ちゃんが困ってたんだもん。お兄ちゃんを虐める人は許さないもん」

「うん、ありがとうね。さてと、ここにいることバレたみたいだし移動しないと……じゃ、由美ちゃん、またね、バイバイ!」

「うん、お兄ちゃん頑張って逃げてね」

由美は、大きく手を振って悠也を見送った。

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