10.最終決戦(前編)
悠也達が校舎の中に入って行った頃、とある一室の男子達の集会では、リーダーのイライラが爆発していた。
「またしても、失敗したのか! おのれぇ~! 櫻井め! このままだとイベントが成功してしまう可能性があるではないか……! ダメだダメだ! そんな事は許さん! こうなったら総攻撃だな! ワシ自ら櫻井悠也に天罰を与えてやる!」リーダーは、悠也への怒り……いや、嫉妬心を爆発させ部屋を出て行った。
一方、その頃屋上に一人でいる咲は、相変わらず拗ねて一升瓶の中のコーラをグビグビとらっぱ飲みしていた。
「ったく、私がなぁんか悪いことでもしたのかよぅ~! 結花も悠也しゃんも私を捜しに来てくんにゃいし、早く私を見つけてチューしなさいよね! 全くもぅ~ヒック」 と、咲はコーラの炭酸で酔っぱらっていた。
「あ~あ、つまんにゃいなぁ~、何かいいことでも起きないかにゃ、ヒック……」
咲は、ひたすら一升瓶の中のコーラを飲み続けている。悠也達の苦労も知らず……
その頃、悠也達は屋上へと繋がる階段の下にいた。悠也は、そこで足止めをくらっていた。それは、悠也が麻奈美に見つかってしまったからだった。
「先輩~! やっと見つけましたよぅ~! ひどいじゃないですかぁ~、人をその気にさせておいて逃げるなんて」
「いや、だから麻奈美ちゃん……僕は好きな人がいるからって言ったよね。その子の為にキスをするわけにはいかないってさ」
「でも、あの状況ならキスしてくれてもおかしくない状況でしたよ。っか、先輩の両隣にいる女の人達は誰なんですかぁ~? もしかして先輩?」 「麻奈美ちゃん勘違いしないでね。この人達は、僕のクラスメートなんだ。それで、僕の好きな人の居場所を知ってるからついてきてもらってるんだよ。男子達の嫌がらせにも助けてくれてるんだよ」
「本当ですかぁ~? 麻奈美みたいに先輩の唇狙ってるんじゃないんですかぁ~?」
と、言いながら結花と蘭子をチラッと見た。
「まぁ~最初は、麻奈美ちゃんみたいに唇を奪いに来たけど……皆分かってくれて、今は僕の味方なんだよ!」
「そうなんですかぁ~? 先輩の唇が奪われてないんならいいんです」
「いや、だから……」
「冗談ですよ~! 私も無理して先輩の唇を奪おうなんて思いませんから。安心してください」
「本当に?」
「本当ですって! 先輩も疑り深いですねぇ」
「なら、いいんだけど」 と、悠也は、安堵のため息をついた。
「ところで、先輩? 先輩の好きな人って今は、何処にいるんですか?」 「今は、屋上にいるらしいんだ。だから早く行かなきゃなんだよ」
と、話をしていると急に後ろから大勢の足音が聞こえてきた。その足音は、だんだんと悠也のところに近づいてくる。
「悠也くん! そろそろ行かないと……めんどくさい人達が来ちゃうよ。早く行こうよ」
と、結花は悠也の手をとり先に進もうとしたが、すでに遅く悠也達の目の前に数十人の嫉妬心むき出しの男子達が現れた。 「見つけたぞ! 櫻井悠也ぁ~! ここでくだらないイベントを終わらせてやる! 覚悟しやがれ!」
と、悠也を睨み付けた時に男子達は、悠也が結花と手を繋いでるのを目撃し、なおかつ悠也の周りに他に女子が二人いるのに気付いて、ますます嫉妬心に火がついた。
「櫻井~! 何でお前の周りばっかりに女子が群がるんだぁ~! しかも、女子と手なんか握りやがってぇ~! ふざけんなよ!」
と、男子達は一斉に悠也へと飛び掛かって行く。 しかし、悠也に辿りつく前に男子達は次々と蘭子の竹刀の餌食にあい床へと倒れていく。
「貴様等は、悠也どのには近づけささぬ!」
「何だよ、櫻井悠也の味方をするのか? だったら、女だとしても容赦はしねぇぞ! いっそのこと櫻井悠也より先に俺がキスしてやるよ!」
と何人かの男子が蘭子に飛び掛かって行くも蘭子の竹刀にことごとく倒れていく。
「いくらやっても同じ事。いい加減諦めたらどうだ」
蘭子は、男子達に鋭い視線をぶつける。
男子達は、蘭子の視線に怖じけつきそうになったが、悠也に対する嫉妬心は強く、構わず突っ込んでくる。
「しつこい奴等だ! 悠也どの! ここは、私に任せて先に行かれよ!」「早乙女さん……分かったよ……」
悠也は、蘭子に言われた通り先に進んだ。
しかし、男子達はすでに先回りをしていたのか校舎内は男子達がうじゃうじゃいた。
悠也達が二階に着いた時には、もう男子達が待ち構えていた。
「ハッハッハ! 残念だったな! 櫻井悠也! お前はもう逃げられないぜ。校舎内はすでに俺達男子だらけだぜ! 観念しろや! 櫻井悠也!」 「そんなぁ~、勘弁してよ~!」
悠也が、焦ってあたふたしているのを見た麻奈美が、悠也の前に立ち男子達と向かいあった。そして、麻奈美は
「先輩~、ここは私が引き受けますよ。先輩は早く目的を果たして来て下さい」
と、悠也に言って麻奈美は白衣を広げた。
そして、麻奈美は、白衣の中の試験管を手に取り男子達に向かって投げつけた。
麻奈美が投げつけた試験管が男子達に当たった瞬間、爆発音とともに煙が舞った。
「うわ、何だこれ、目が痛い……」
と、男子達は慌てふためいていた。
「これ以上、私の大事な先輩を困らせないで下さい! さもないとあなた達全員私の実験の実験台になってもらいますよ」
と、麻奈美は再び試験管を手に取る。
麻奈美は、じわりじわりと男子達へと歩を進めていく。
そして
「ちょっと痛いかもだけど……我慢して下さいねぇ~」
と、男子達に不敵な笑みを浮かべ試験管を投げつける。
投げられた試験管が、男子達の足元に落ちた瞬間に大爆発が起きて、その後、男子達の悲鳴がこだました。
「ぎゃ~、やばいよ……この女……助けてくれぇ……もう、辞めてくれぇ」
など、悲鳴が飛び交う。
「これにこりたらもう先輩には手を出さないでくださいね~。いっそのことあなた達も私の実験台にしてあげましょうか? あはははは~」
麻奈美は、人が変わったかのように、高笑いをしながら男子達に試験管を投げ続けた。
「もう、勘弁して下さい……金輪際櫻井悠也には手を出しませんから……許してぇ……」
「分かってもらえたならよかったですぅ~! でも、あなた達は、もう私の実験台なんですから、実験が終わるまで我慢して下さいねぇ~」
「ひぃぃ~、そんなぁぁ~」
悠也と結花は、男子達の悲鳴を背中に受けつつ屋上へと続く階段を上がっていった。