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1.ラッキーボーイ

 朝、カーテンごしに日差しが入ってくる。その日差しに起こされ、ひとつ伸びをして

「ふぁ~、もう朝かぁ」 と言いながらカーテンを開けた。

彼の名前は、櫻井悠也。 十七歳の高校二年生だ。 悠也は、机の上に置いてある写真を見る。その写真には、悠也のクラスメートの秋元咲が写っていた。悠也は、咲の事が中学生の時から好きだった。悠也は、咲の写真を見つめて、

「よし! 今日は、文化祭だし、いい機会だ、今日こそ咲ちゃんに告白しよう」

悠也は、そう言うと両手で自分の頬をバシッと叩いて気合いを入れた。

悠也は、制服に着替えて 学校へと足を運んだ。


 この後、学校で大変な目に合う事を悠也は知るよしもなかった……


 悠也は、学校に向かう途中、女子生徒が急いで学校に行ってるのが気になっていた。一人なら別に気にならないのだが、 すれ違う人のほとんどが走って学校に向かっていた。

「みんな、どうしたんだろう? 女子ばっかり急いでるみたいだけど……何かあるのかな?」

と、思いながら悠也も少し早足で学校に向かった。悠也は、学校の近くまで行くと、学生達のザワザワした声が耳に入ってきた。

「さすがに文化祭だし、皆楽しみにしてたんだなぁ~、僕も早く咲ちゃんに告白して文化祭を楽しまなきゃな」

悠也は、一つ深呼吸をして学校の校門へと向かう。学校の校門には、半円状のアーチがつけられていた。悠也は、校門に付けられたアーチをくぐった。その瞬間、ファンファーレの音が、学校中に響き渡った。悠也は、そのファンファーレの音にビクッと身体が反応し驚いた。悠也は、いったい何か分からずキョロキョロ辺りを見回す。すると、生徒会長の田嶋理央が悠也の前に現れた。理央は、悠也と同じクラスメートだ。理央は、黒い長い髪の毛をなびさせながら悠也に

「あら、櫻井君じゃない! 今回のラッキーボーイはあなたなのね。おめでとう。今日は、しっかり楽しんでね……」

と、何故か不適な笑みを浮かべて言った。悠也は、理央の不適な笑みの意味が理解出来ないでいたのだが、理央の次の言葉で唖然としてしまった。

理央は、拡声器越しに

「全校生徒の皆さ~ん! この学校の女子しか知らない、三年に一度のラッキーボーイ・キス争奪戦の開始でぇ~す! 今回のラッキーボーイは、二年の櫻井悠也君でぇ~す。女子のみんな頑張って櫻井君の唇を奪ってくださいねぇ~!」

「ええぇ~!! ちょっと、田嶋さん? どういう事なの?  三年に一度のキス争奪戦? ラッキーボーイ? 訳分かんないよ」

「それはそうでしょうね。この三年に一度の大イベントは、この学校の女子だけにしか伝えられていないし。そして、このイベント中にラッキーボーイに選ばれた男子にキスをすれば願いが叶うって言い伝えがあるのよ。で、今年がその三年目で由緒あるイベントのラッキーボーイに選ばれたのが櫻井君な訳よ。まぁ、私は、あんまり興味がないんだけどね……一大イベントは生徒会長として開催しなくちゃだからさ。櫻井君も今日一日女子全員からキスの催促があるんだから悪い気はしないでしょ! じゃ、頑張ってね! 櫻井君」

と、理央は言い残し行ってしまった。悠也は、辺りを見回すと段々と悠也の前に女子の姿がどこからともなく増えていく。そして、女子全員の目が獲物を狩る女豹と化していた。悠也は、じわりじわりと迫って来る女子達の迫力に押され、後退りしながらこの場を離れようとした時に、悠也の後ろの方から

「悠也~、放送聞いたぜ。こっちに来い。逃げてどっかに身を隠さないと、今日の女子はヤバいぞ。早く」

と、悠也にとって聞き覚えのある声が聞こえた。 悠也は、声がした方に振り向き

「琢磨! 助けてくれよ~」

「いいから、早く来い」 と、琢磨と呼ばれた男は悠也に向かって手招きをする。

白石琢磨。悠也とは、中学からの親友だ。何かある時は、いつも行動を共にする仲だ。

悠也は、琢磨の元にダッシュで向かった。悠也が逃げた事で、女子達もバラバラに散って悠也を追いかける。

「待って、逃げないでよぅ~、キスぐらいしたっていいじゃないの」

「私が先よ! 邪魔しないで!」

女子達は、逃げた悠也を追いかけながらそれぞれ キス争奪レースから蹴落とそうと皆必死になっていた。悠也は、そんな女子達を尻目に、琢磨の元へ何とか辿り着く。「琢磨、ありがとう!」 「あぁ、話は後だ。とりあえず人目に着かない体育館の裏にでも行くか」 琢磨と悠也は、女子に見つからないように身を隠しながら体育館の裏までやって来た。

「んで、悠也! 何でお前がラッキーボーイなんだ。何で俺じゃないんだ。なぁ~、オイ」

「そんな事聞かれても知らないよ。校門入ったら急だったから……俺だって何がなにやらで……」「ほう、で、お前は女子全員から追われていると……悠也とキスをするために……悠也くん、いいご身分ですなぁ~」

と、琢磨は悠也に向かって嫉妬に満ち溢れた視線を送る。

「た、琢磨? 何、その視線……」

「悠也、俺達は友達だよな?」

「も、もちろん友達に決まってるじゃん」

「俺も友達だと思ってる。だけど、今日は敵だぁ~!」

「えぇ~、何でだよ!」「一人だけ女子にチヤホヤされるのが悔しくてしょうがない。俺達男子は、お前が女子とイチャイチャするのを全力で阻止してやるからそのつもりでいろ」


 一方、その頃、悠也が想いを寄せてる秋元咲は 教室にいた。咲は、教室の窓辺からぼんやりとグラウンドを見ていた。「あ~あ、何でラッキーボーイが悠也くんなの……」

と、ため息をつく。それを見兼ねた咲の親友、唐川結花が

「咲、あんたさっきからため息ばっかりついてるよ。そんなに櫻井君がラッキーボーイになったのがショックなの?」

「ショックだよぅ~、悠也くんと今日は、一緒に文化祭回りたかったのに……よりにもよって悠也くんが選ばれるなんて……」

「まぁ、櫻井君になるとは思わなかったけど……咲は、前々から気合い入ってたもんねぇ」

「悠也くんが、私以外の女の子にキスされるのなんて見たくないよ……はぁ~……」

「咲ったら、またため息ついて、そんなに櫻井君の事好きなら告白すればいいじゃん」

「そうなんだけど……いざ悠也くんを前にしたら恥ずかしくなっちゃうのよ……」

「咲らしくもない、で、このキス争奪戦には参加するの?」

「私は、しないよ……」 「そっかぁ……」


 その頃、悠也は琢磨にも宣戦布告され琢磨の元を離れた悠也の前に一人の女子が現れた。

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