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第十話『突然の転機』

――この生き地獄は、いつまで続く――


 仕事を終え、まだ街路灯が消えない道を急ぐ。

 いつもの帰り道が、今日に限ってやけに遠く感じる。足取りは重く、まるで鉄球でも繋がれているみたいだ。夜の名残が漂う早朝、物静かな街路を息を切らしながら進む。早く安心できる場所に逃げ込みたくて、歩幅だけが勝手に大きくなる。

 今もなお、執拗な好奇の視線が皮膚に貼りつき、私を嘲る笑い声が耳の奥で反響している。怒りの熱はまだ血を巡り、内側を焼いていく。

 この抑制の効かない感情を、どう扱えばいい。どこへ向ければいい。分からないまま、それは出口を求めて胸の内側を爪で激しく掻きむしっている。

 あの後、残る勤務時間のすべてを、無遠慮な他人の言葉に耐え、噴き出しかけた激情を抑え込んでいた。

 それは、地獄の責め苦のような時間だった。


――この生き地獄を、あとどれだけ耐えればいい――


 心の中で叫ぶたびに、足が勝手に速さを増す。

 金属とコンクリートで押し固められた空は、群青にミルクを一筋垂らしたような薄青へほどけていく。ビルの稜線に視界は遮られているが、地平のどこかで光はもう立ち上がっている。

 長く、辛く、耐えがたい夜が終わろうとしている。夏の早朝、まだ夜気の濃い湿りが皮膚に貼りつく。

 頬を熱い何かが伝い落ちる。汗か、涙か、鼻水か。それが何なのか、私には分からない。

 首に掛けたタオルで拭うたび、重さが増す。拭えば、すぐまた濡れ始める。壊れた蛇口のように、いくら締め直しても、漏れ出した感情が止まらない。

 胸の底から何かがこみ上げ、嗚咽が勝手に口をこじ開ける。四十にして、癇癪を起こす子どものように感情の手綱が切れた。堰を切ったようにあふれ出るものを拭うたび、タオルはみるみる重くなり鉛のように重く感じる。

 なんで、こんな思いをしてまで生きなければならない。あと何度、こんな辱めを受けなければならない。いつまで、この苦しみに耐えなければならないんだ。


――こんな人生を生きるくらいなら、いっそのこと――


「殺してくれ、殺してくれ……死にたい、死にたい」


 声が漏れる。胸で暴れるものが、言葉となって外へ吐き出される。

 幸い、早朝ゆえか人の姿は見当たらない。こんな姿を見られていたら、きっと異常者か変人に思われ、怪しまれただろう。最悪、警察を呼ばれるか、ネットにさらされるか。考えるだけでも今以上に最悪なことになるのは確実だ。想像するだけでも嫌な汗が嫌な汗がにじみだす。

 今はとにかく、閉じこもれる場所へ身を隠したい。誰の目にも触れず、誰の声も聞こえない、自分だけの空間へ逃げ込みたい。その一心がさらに私の足を速めた。

 滲む視界の先に交差点が見えてくる。薄暗い中、青の信号灯が水の中のように揺れている。私は立ち止まらず、横断歩道を直進する。

 とにかく家に帰りたい。この騒ぎ立つ感情を落ち着かせたい。野犬のように吠え立てる思考を鎮めたい。

 一人になって、怒り狂いそうな自分自身を抑え込みたい。そうでもしないと、自分が自分ではなくなってしまいそうだ。


「チクショウ、チクショウ、クソッタレが!」


 怒りを抑え込もうとするたびに、老害と腰抜けの顔が私の心をかき乱す。下卑た笑みと嘲る声が、石を投げ込まれたみたいに、心の水面に乱雑な波紋を広げていく。

 呪いと恨みと憎しみが黒い群れになって胸の内を旋回し、牙をむき出しにして噛みつき合うみたいに、声が飛び散った。


「無能のくせに、低能のくせに、クズが、カスが! 死ね、死んじまえ、くたばっちまえ!」


 憤怒と敵意と殺意が渦を巻き、心の器がきしむ。抑えたはずの息が喉の奥から漏れて、もう止められない。

 老害によって、私がかつて漫画家として描いていたことが知られたことで、勤務の終わりまで拷問みたいな時間が続いた。

 腰抜けにまで私の過去が漏れ、休憩の合間に職場にいる全員の耳へ広まった。腰抜けと老害は、初めて会ったばかりのくせに妙に息が合っていた。昨日のテレビの芸人みたいに、私の過去を“ネタ”にして回し続ける。

 何がそんなに愉快なのか。二人は終始、私をネタにして笑い続けていた。相手が年上というのが性質が悪い。私は反感も言葉も飲み込み、曖昧な笑みを浮かべたまま耐えるしかなかった。

 その話を聞いた職場の人間たちは、面白半分の好奇心を隠そうともせず、あれこれと私の過去を執拗に尋ねてきた。だが、答えるのはなぜか私ではなく、腰抜けと老害の二人だった。

 交差点が近づく。ちょうど青へ変わった信号に合わせ、私は足を止めずに渡る。こみ上げる、どす黒く熱い罵声が勝手に口を抜ける。


「どいつもこいつもバカにしやがって、どいつもこいつもクズのくせに。身の程をわきまえやがれ。俺を笑う前に、自分の低能ぶりを見直しやがれ!」


 抑えようとするほど怒りは膨らみ、口端から出ていく罵詈雑言は勝手に大きくなる。

 道端に空き缶が落ちていた。それを力の限り蹴り上げる。金属音とともに、私の悪態が朝の住宅街に反響する。この時間に大声を出すのは近所迷惑以外の何ものでもないと分かっていながら、もう構わなかった。心底、どうでもよかった。


「俺は、あんな奴らにバカにされるために漫画を描いていたわけじゃないんだ!」


 私が元ジャンプの連載漫画家だったという話が職場に広められてからは、就業時間が終わるまで、ひっきりなしに話しかけられた。普段は口もきかない、名前も知らない相手からもだ。彼らにとって、私の過去は週刊誌の安いゴシップでしかない。誰も彼もが無遠慮に私の過去へ聞き耳を立て、覗き込み、根掘り葉掘りと暴こうとしてくる。

 相手の傷口をえぐり、塩を詰め込んでいると自覚もせずに。

 その拷問に、俺がどれだけ苦しんでいるかも考えずに。

 ただの世間話の延長のつもりで、悪意もない笑みを口元に浮かべながら、俺の崩れかけた夢をただの残骸にしつくしていきやがった。


「バカにしやがって、どいつもこいつも、俺をバカにしやがって! 殺してやる、どいつもこいつも、全員ぶっ殺してやる!」


 激情が刃物のように喉を引き裂きながら口から飛び出す。叫びのあと、喉が鉄の味で満たされる。

 張り上げるたび、心は軽くなるどころか、むしろ自分への情けなさと虚しさが沈んでいく。心のどこかでは理解している。私が怒る筋合いはないことくらい解っている。笑われるのも、バカにされるのも、しょうがないことだ。

 事実、私の漫画は打ち切られた。その後に描いた作品もすべて通らず、とうとう出版社に見限られて契約を切られた。単に、私の漫画がつまらなかったからだ。面白い漫画を描く才能がなかったからだ。

 それでも「もう一度、漫画家に」と望み、夢にすがり続けてきたのに、今日まで何もしていない。実際、長いことまともに描いていない。夢だけを追っているうちに、気づけば四十歳になった。諦めもできず、努力もせず、ただ時間に流されてきた。

 自分でも分かっている。私は漫画家にはなれない。それでも、私は漫画家になりたい。

 長いことペンも握っていないのに、いつも漫画のことばかり考えている。気づけば、頭の中でコマが並び、キャラの姿が浮かび上がり、台詞が勝手に流れ出す。

 こんな妄想ばかりしている自分が、みっともない大人だということは分かっている。

 それでも、他人に笑われるのは我慢ならない。

 馬鹿にされるのは腹が立つ。

 つまらないと言われるのは、受け入れことができない。

 私の名前をネタにして、私の漫画を笑いものにされるのは許せるはずがない。


――分かっている。あぁ、分かっている。理性では分かっているんだ――


 世に出したものが評価されるのは当然だ。その評価が残酷でも、間違っていないことだってある。私の漫画は、たしかに面白くなかった。だから打ち切られた。

 それでも漫画家の夢だけは捨てられず、四十になった今も非正規で食いつないでいるのに、肝心の漫画は全く描がいていない。


 ――俺は結局、諦めの悪い社会不適合者。大人になりきれない、ダメなおっさんだ――


 笑われても仕方がない。頭では、そう理解している。

 それでも、怒りだけが、どうしても込み上げてくる。

 それは私のプライドのせいだろうか。ボロで安っぽいプライドなら捨てればいいのに。こんな安っぽい自尊心なんか捨ててしまえ、と理性では分かっていても、どうしても捨てることができない。もし簡単に捨てられたなら、こんな苦労はしていない。こんな人生にもならなかった。


「――――!!」


 言葉にならないものが、喉を裂いて外へ出る。

 早朝の住宅街に反響が走り、静けさにひびが入る。

 カーテンの隙間がわずかに揺れ、窓ガラスの向こうで影が止まった気がした。どこかで窓の鍵が外れる音も聞こえた気がする。

 まだ朝日も昇らぬ時間に叫べば、不審がられて当然だ。誰かに怒鳴られてもおかしくない。残った理性がそうした社会的リスクを次々に思い至らせ、沸騰した感情からわずかに熱を奪っていく。

 私はその場を離れるべく、小走りで角を曲がる。ちらりと周囲を見回すが、幸いなことに、人影はない。通りにも車は一台も走っていなかった。

 安堵した途端、そんなことでおっかなびっくりして、安心してしまう自分の弱さに苛立ち、怒りがまたこみ上げてくる。


「バカか、俺は!」


 がなり声を吐くと同時に、視界がまた滲み出す。

 夜空は刻々と明るくなる。都市の空から夜が薄らいでいく。早朝の街はなお宵闇の幕がかかって薄暗い。ふたたび交差点が見え、赤い信号が目に入るが、近づくと青に変わる。足を止めずに済んだ。足早に横断歩道を渡る。早く部屋の中に閉じこもりたい。

 まだ薄暗い早朝だからか、人影はどこにもない。それが今の私にとって唯一の救いだ。こんな情けない姿を、誰にも晒さずに済むからだ。


「バカ、バカ、バカ、バカ、俺ってやつは、なんてバカな男なんだ!」


 無人の静けさに、靴音と息だけがやけに響く。口から漏れる愚痴と嗚咽が、朝の空気の中へと沈んでいく。

 次の交差点に差し掛かる。まるで自動ドアのように青から赤へと変わる。信号機の赤い眼が瞬きをやめ、青の冷光が点る。歩幅を戻して渡る。人影はない。

 路地の信号を越えるたびに、夜が薄まっていく。家々の壁が暗さの底からせり上がる。どんどんと朝の気配が濃くなってくるのに、なぜか人と出くわさない。


「情けない、ふがいない、この臆病者が、この弱虫が!」


 声が震える。職場で何度も、同じ言葉を投げられた。好奇心と嗜虐心が混ざった視線に囲まれながら、「漫画家って本当なの?」「どんな漫画を描いてたの?」と、彼らは笑みを浮かべて訊いてくる。その間ずっと、腰抜けと老害の前で、私は愛想笑いをやめられず、道化を演じ続けるしかなかった。


――いつから俺はこんなに臆病で、こんなに卑屈になった?――


 夢と、そのために費やした年月を笑われても、私は平然を装って流された。集団からはみ出すのが怖くて、迎合して、世間に自分から飲み込まれていった。漫画という大切な領域を踏みにじられ、唾を吐かれたのに、それを笑って受け入れた。

 それが、たまらなく悔しい。そんな卑しい弱さが、たまらなく腹立たしい。

 そんな自分を、俺は心底、嫌っている。

 馬鹿で、無能で、何もせず、弱く、情けない。心だけは尊大で、傲慢で、他人を見下す。それなのに、外では「いい人」の仮面をかぶり続けている。

 だから俺は、俺が嫌いだ。心底、嫌いだ。

「……チクショウ……」


 何よりも、一番辛かったのは、仕事が終わろうとしている就業時間間際に、自惚れ屋が申し訳なさそうな顔をして近づいてきたことだ。

彼は頭を下げながら言った。

「あの、何かすんません。調子に乗ってすんません。悪気があったわけじゃなかったんですけど、その、何かすんませんでした」

これまで見たこともないほど殊勝な顔で、謝ってきた。


 普段は仕事でミスをしても自分の非を認めず、他人のせいにばかりするろくでもない奴だと思っていた。横柄でふてぶてしいくせに、威勢のいい口だけが達者な男だと、私はずっと内心で見下していた。

 そんな相手に気を使われたという事実が、虚栄で膨らんだ私の自尊心を、これ以上ないほどみじめにした。相手の非を責めることもできない。その瞬間、浮き彫りになったのは相手の卑しさじゃなく、私の尊大さだった。胸の奥を暗い穴に放り込まれたような気持ちになった。


「いっそ、とことんまで悪人でいてくれれば気が楽なのに」


 人生で、ここまで惨めで哀れな気持ちになったのは、これで二度目だ。


「…………こんなことなら、あの時、死んでいればよかった……」


 心の底から、死にたいと思った。

 誰かに殺してほしいと、真剣に考えた。

 誰でもいい。この地獄から救い出してくれるのなら。あの時と、まったく同じように心から願った。


「こんな人生なんて……もう嫌だ……」


 歩く。歩き続ける。信号が赤から青へ変わる。横断歩道を渡る。止まらずに歩き続ける。ふたたび赤、すぐ青。止まらず進む。周囲は少しずつ明るくなっていく。無人の横断歩道を渡り続け、ふと前を見ると、いつものコンビニが見えてきた。アパートの近くのあの店だ。そして、今日は月曜日の早朝だ。


「……ジャンプでも読んでいくか」


 コンビニ手前の交差点。信号が赤から青へ。私は足を止めない。太陽はもう地上に顔を出している。それなのに、ここまで誰ともすれ違っていない。まるで世界から人が消えたみたいに静かだ。


「……?」


 おかしい。

 静かすぎる。人がいなさすぎる。

 ここに来るまで、いつも早朝に必ず見かけるジョギングや散歩の人々と、一人もすれ違わなかった。まだ薄暗いとはいえ、もう人が動き出す時間だ。

 それなのに、通りを走る車の気配がない。都内の住宅地で、車が一台も走らないなんてあるだろうか。そもそも、新聞配達のバイクすら走っていない。こんなことはありえない。都心の住宅街だというのに、人の気配も音もまったくしない。あまりにも不自然だ。

 まるで、本当に自分以外の人間が世界からいなくなってしまったかのようだ。

 横断歩道を渡る最中、私は異変に気づき、思わず足を止めた。周囲を見渡そうと顔を横に向けた瞬間、私は、実際に目で見ているはずの風景とは、まったく異なる光景を見ていた。

 目の前にあるのは、座卓にかぶりつくようにして、一心不乱に漫画を描いている自分の姿。

 少し前の、いや、「かつての」自分だ。原稿用紙に怒りと憎しみを叩きつけるように、ペン先を走らせている。必死で、余裕がなくて、どこか歪んでいて――正直、痛々しい。

 なんのために描いているのか。

 なぜ漫画を描いているのか。

 見返してやりたい。

 今に見てろ。

 そんな感情に突き動かされて描くその姿は、私がかつて理想としていた漫画家像とは、あまりにもかけ離れていた。

 じっと見つめていると、目の前の自分の姿が、少しずつ変わっていく。

 若くなっていく。刻一刻と、時間が逆行していくように。

 担当編集と並んで頭を抱えながら、どうすれば少しでも面白くなるのか必死に考えている自分。

 ジャンプに持ち込むため、夜通し机に向かって漫画を描いている自分。

 さらに遡る。

 さらに若くなる。

 同時に、その頃の気持ちが、胸の奥から蘇ってくる。

 理屈じゃない、理由もいらない、ただ「描きたい」という気持ちだけで満ちていた、あの感覚。


「……あぁ、そうだ」


 思わず、そんな言葉がこぼれた。


「この頃は……何も考えずに、楽しかったから漫画を描いていたんだっけ」


 そして今、目の前には初めて漫画を描き始めたありし日々の自分の姿があった。

 拙い線。

 下手な構図。

 技術なんて、欠片もない。

 それでも、ノートにシャーペンで絵を描くその顔は、驚くほど楽しそうだった。

 ただ漫画が好きで、描きたくて仕方がない。

 それだけで、世界が輝いていた頃の自分がいる。

 その姿を見て、ふと思う。


――ああ、そうだ。そうだったっけ――


 そもそも漫画家を目指した理由なんて、そんな大層なものじゃなかった。

 自分の妄想を、形にしたかっただけ。

 頭の中にある世界を、誰かに見せたかっただけ。

 それを「楽しい」と思えたから、描いていただけだった。

 次の瞬間。

 まばゆい光が視界いっぱいにあふれた。続いて、耳をつんざく甲高いクラクションが、鼓膜を塞ぐ。激しい衝撃と共に体が弾き飛ばされる。不自然なほどに冷静で、状況は分かっている。不思議と痛みはない。視界が一度暗転し、次に見えたのは、空と地面がぐるぐる入れ替わる光景だった。

 時間がゆっくり流れる中、道路と空が交互に反転し、遊園地のコーヒーカップみたいに回転する。

 自分の身に何が起きたかは分かっている。私は車に轢かれたのだ。多分、助からない。

 そして今、私は空中に投げ出されている。不思議と恐怖はない。思考は異様に冷静で、ゆっくり流れる時間の中でゆっくりと回る世界を眺めている。

 首に掛けていたタオルが視界を横切る。人生というリングに、誰かが降参の合図として白いタオルを投げ込んだみたいに、それはゆっくり空を舞った。

 それが、心の底から不服だった。

 まだやれる。そう思った途端、練り上げて忘れていた数々のネームが記憶の奥から走馬灯のように流れていく。次々と頭の中に浮かび上がるコマ割りに、漫画を描きたいという欲望が沸き上がる。

 地面が迫る。落ちていく。あっけなく幕が下りようとしていることは頭で理解している。けれど、心はただ一つだけ叫んだ。


――まだ、死にたくない――


 あれほど絶望して、死を望んでいたのに。今この瞬間、私は心から死を恐れ、生を求めた。


――まだ、描いていないものがある――


 ここ何年もまともに描いていないのに、次から次へとアイデアが溢れてくる。


――これを描かずに、死にたくない――


地面が肉薄する。衝突の寸前、視界は真黒に塗りつぶされ、意識が落ちた。



 意識が戻り、目を開けると白い天井が見えた。

 すぐに、ここが病院だと分かる。

 自分が死んでいないことも分かる。

 自分の身に何が起きたのか。

 その後どうなったのか。

 すぐに理解できた。

 そして、その事実と現実に、私は心の底から絶望した。

今更ですが、この物語は異世界転生物です。

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