バレンタインデーの三点
「3点よ」
これは、僕が笑里に去年のクリスマスに告白した時の答えだ。僕の告白に付けた点数だろう。僕はそれを聞いて消沈したのだが
「でも可哀想だから付き合ってあげる」
こうして僕らは付き合うことになった。
笑里は、表面上はツンツンしているが実は甘々に優しいそんな女の子だった。
周りのみんなは笑里の普段の態度を見て敬遠しており、笑里はいつも一人だった。
僕も無愛想で周りからは浮いておりやはり一人だった。だからこそ笑里の魅力に気づけたのだろう。
笑里はみんなが嫌がるような仕事を進んでこなした。が周りからは評価を気にしてやっているだけだと思われていた。
困っている人を助けても感謝もされない。そんな子だった。
ある日、僕は傘を忘れた。どうしたものかと雨空を見上げていると笑里が僕に話かけてきた。事情を聞くと僕が傘を忘れたことに対してくどくどと説教を始めた。そして長い長いお説教を終えると笑里は僕に傘を貸してくれたのだ。
僕が「ありがとう」と伝えると笑里は顔を赤くして「うるさい」とだけ言うともう一本の傘をさして足早に帰っていった。
僕はそれ以来、笑里のことを目で追うようになった。
笑里のことを観察していると、そのツンツンした態度でどれだけ損をしているかに気づいた。この子は美しいのにトゲが多過ぎて誰も触れない薔薇のようだ。
そんな彼女を僕だけは愛そうと思った。
付き合ってからも笑里の態度は相変わらずだった。ツンツントゲトゲ。でも僕は笑里の優しさを知ってるから苦じゃなかった。
そして今日バレンタインデーの日。笑里が僕に手作りチョコをくれた。それは僕好みの甘々なチョコでとても美味しかった。だから僕は言った。
「3点」
「え?」笑里は絶望したような顔をした。
僕は続けた。
「3点満点でね。つまり満点!」
笑里は顔を真っ赤にして「ばか♡」と言った。とても幸せそうな名前にぴったりの笑顔だった。
僕は初めて見たそんな顔に見惚れて、笑里の肩を掴んだ。笑里は僕がこれから何をするのか察して耳まで赤くなって目を瞑った。
二人の唇が重なる。食べたばかりのチョコの味が僕らのファーストキスの味だった。