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二度目の派遣要請

 宿場町の市議会室。重厚な木の扉が静かに開き、ガレンとエリシアが入室した。議員たちは既に集まっており、厳しい表情で二人を迎えた。


「ガレン殿、来ていただいてありがとうございます。」


 議会の長が静かに言葉を切り出した。


「再び王国からの協力要請が来ました。今回は、最低派遣人数が定められており、その数字を満たす必要があります。」


 ガレンは少し眉をひそめた。


「具体的な人数はどれくらいですか?」


「最低でも二十名です。これは絶対に外せない条件です。」


 議会の長は厳しい口調で続けた。


 エリシアは一歩前に出て、冷静な声で応じた。


「私たちは既に多くの冒険者を派遣していますが、これ以上の派遣はギルドの運営に大きな負担をかけますわ。それに、我々の宿場町が独自の発展を続けている中、王国側のフォローがほとんどないことを考慮すべきではありませんか?」


「それは理解していますが、王国からの圧力は強まる一方です。」


 別の議員が口を挟んだ。


「我々もこの町の利益を守りたい。しかし、現状では王国との協力を拒むことは難しい。」


 ガレンは腕を組み、深く考え込んだ。


「我々のギルドは冒険者をサポートするために存在している。その冒険者たちを無理やり派遣することは本末転倒です。」


 エリシアは議員たちを見回し、微笑みを浮かべた。


「我々のギルドは、市政にも大きく貢献していることをお忘れなく。主導権は我々にありますわ。」


 議会の長はため息をつき、頭を抱えた。


「わかりました。しかし、この問題をどう解決するか、具体的な案を出さなければなりません。」


「そのためには、もう少し時間が必要ですわ。」


 エリシアは毅然とした態度で言った。


「我々も最善を尽くしますが、ギルドの利益と冒険者たちの安全を第一に考えなければなりません。」


 議会のメンバーは一様に頷き、議論は続けられた。エリシアとガレンは、この難題にどう対処するか、慎重に考えを巡らせながら会議室を後にした。


 ——その後。


 エリシアとガレンはギルドの奥まった部屋で密談をしていた。


 部屋の扉はしっかりと閉ざされ、外からの音を遮断している。エリシアは深い考えに沈んだ表情で、ガレンは腕を組んで壁にもたれていた。


「ガレン殿、今回の協力要請について、どう思いますか?」


 エリシアが静かに問いかけた。


「正直に言えば、気に入らない。」


 ガレンは厳しい表情で応じた。


「王国側は市議に対して報酬を支払い、冒険者に対してはサンセットの現地で報酬が支払われる。これでは我々に入ってくるのは市議会からの少しばかりのキックバックだけだ。」


「そうですわね。」


 エリシアは頷いた。


「私たちが冒険者をサポートし、育成するためにどれだけのリソースを投入しているか、王国側は全く理解していないようですわ。」


「その通りだ。」


 ガレンは苛立ちを隠せない様子で続けた。


「我々の努力や投資が全く報われていない。これではギルドの運営に支障をきたす。」


 エリシアは考え込んだ。


「このままでは、我々が望むような独立した運営は難しいですわね。何か対策を講じなければなりません。」


「具体的にはどうするつもりだ?」


 ガレンがエリシアに問いかけた。


 エリシアは少し微笑み、目を細めた。


「まだ考え中ですわ。ですが、一つ確かなことは、我々がもっと有利な立場に立つための手を打つ必要があるということです。」


 エリシアとガレンはギルドの職員会議を開いた。


 大きな会議室には職員たちが集まり、緊張感が漂っていた。エリシアが先に口を開いた。


「皆さん、王国から再び協力要請が来ました。今回の要請は最低派遣人数が定められており、その数字を満たす必要があります。」


 職員たちは顔を見合わせ、ざわめきが広がった。ガレンがそれを制するように手を上げた。


「落ち着け。まずは現状を把握し、どのように対応するかを考える必要がある。」


 エリシアは続けた。


「懸念材料としては、皆様、ダンジョンに夢中でわざわざ他の地域に行きたがらないだろうということですわ。サンセットに派遣される冒険者を確保するのは容易ではありません。」


「確かに、現在の状況ではダンジョンの魅力が強すぎる。」


 一人の職員が頷きながら言った。


「しかし、王国の要請を無視するわけにはいきません。」


 ガレンが重々しく続けた。


「何かしらのインセンティブを提供する必要がある。例えば、派遣された冒険者には特別な報酬やボーナスを用意するとか。」


「それだけでは難しいかもしれません。」


 別の職員が慎重に言った。


「冒険者たちはダンジョンでの成果を重視していますから、派遣のメリットをもっと強調する必要があります。」


 エリシアは考え込んだ。


 エリシアは、一旦沈黙した会議室で口を開いた。


「既に行っている冒険者の紹介制度を強化するのはどうでしょうか?」


 職員たちはエリシアの提案に耳を傾けた。


「具体的には、サンセットに派遣された冒険者が現地で誰かを勧誘し、宿場町まで連れて帰ってきた場合、倍近くの報酬を出す方針を固めるのです。」


 ガレンが頷きながら言った。


「それはいい案だ。現地での勧誘が成功すれば、派遣された冒険者もさらに報酬を得られるということだな。」


「そうです。」


 エリシアが続けた。


「この方法なら、派遣先でも積極的に動いてもらえますし、帰還後の報酬も充実させることができます。冒険者たちにとっても魅力的なインセンティブになるでしょう。」


「それならば、具体的な報酬額や条件を詰めていく必要がありますね。」


 一人の職員が指摘した。


「また、現地での勧誘活動が成功した場合のフォローアップも重要です。」


 ガレンは真剣な表情で言った。


「新たに勧誘された冒険者がスムーズにギルドに馴染むよう、適切なサポートを提供することが必要です。」


 エリシアは職員たちの視線を集めながら提案を続けた。


「冒険者を派遣するにあたり、宿場町のギルドスタッフを何人か現地でのフォローに回したいと考えています。具体的には、治療スタッフ、資材管理スタッフ、勧誘活動のフォロー担当者などです。」


 一瞬、会議室は静まり返った。職員たちは顔を見合わせ、疑問の色を浮かべた。ついに一人の職員が声を上げた。


「それは必要なのでしょうか?サンセットのギルドや騎士団がそのような役割を果たすはずでは?」


 エリシアは穏やかな笑みを浮かべながら答えた。


「確かに、その通りです。しかし、私たちが自らのスタッフを派遣することで、我々の冒険者たちが安心して任務に集中できるようにするのです。これは、私たちのギルド活動の独自性を貫くためでもあります。どこにいても、私たちのやり方を示すことで、王国側に対しても優位性を保つことができます。」


 ガレンが補足した。


「この提案には一理あります。我々のスタッフが現地で直接サポートすることで、冒険者たちの信頼も得やすくなりますし、サンセットのギルドや騎士団との連携も強化できるでしょう。」


 別の職員が手を挙げて意見を述べた。


「しかし、それには追加のリソースが必要です。我々のスタッフが現地で活動するためには、現地の状況に応じた訓練や準備が必要です。」


 エリシアは頷きながら答えた。


「その点も考慮しています。現地派遣のスタッフには事前に十分な訓練を施し、必要な資材も用意します。そして、それによって私たちのギルドがいかに効果的に機能するかを示すことで、王国側に対しても私たちのアドバンテージを見せつけるのです。」


 ガレンが最後に言葉を締めくくった。


 職員たちは一斉に声を上げた。


「そんなことしたらこの場所の人手が足りなくなります!」


「確かに、現地でのサポートは重要ですが、ここでの業務が滞るのは避けたいです。」


 エリシアは一瞬考え込んだが、すぐに決断した。


「わかりました。それでは、早急にギルドスタッフの募集を行います。そして、現地派遣のための引き継ぎ資料の整備を進めましょう。」


 ガレンが補足した。


「皆さん、迅速に対応してください。まずはスタッフの募集を最優先にし、その間に引き継ぎ資料の作成を進めます。今は全員で力を合わせて、この難局を乗り越えましょう。」


 職員たちは頷きながら席を立ち、それぞれの持ち場に戻っていった。エリシアは再びガレンに向かって言った。


「これで何とか人手不足を補うことができます。募集がうまくいけば、現地派遣の準備もスムーズに進むでしょう。」


 ガレンは微笑んで答えた。


「そうだな。まずはスタッフの募集がうまくいくことを祈ろう。そして、現地での活動が成功すれば、私たちのギルドの信頼も一層高まるはずだ。」


 エリシアは頷き、決意を新たにした。


「はい、そうしましょう。私たちのギルドが冒険者たちにとって最良の選択であることを証明しましょう。」


 こうして、ギルドは新たなスタッフの募集と引き継ぎ資料の整備に向けて動き出した。エリシアとガレンの指導のもと、職員たちは一丸となって取り組み、宿場町のギルドはさらなる発展を目指して歩みを進めていった。


 ——翌日。


 エリシアとガレンは市議会の会議室に入ると、緊張した面持ちで議員たちの前に立った。市議会の議員たちは、彼らの訪問を待ちわびていたようで、厳しい表情を浮かべている。


 エリシアが先に口を開いた。


「皆様、冒険者を派遣する件についてですが、もう少しだけお時間をいただけないでしょうか?」


 議員たちは互いに顔を見合わせ、不満げな声が上がった。


「何を言っているんだ。王国からの要請は急を要するものだ。すぐにでも冒険者を派遣しなければならないはずだ。」


 ガレンが一歩前に出て、頭を下げながら説明した。


「我々もその重要性は十分に理解しています。しかし、現在のギルドの状況を考えると、準備が整うまで少しばかりの時間が必要なのです。」


 議員たちはさらに声を荒げた。


「準備が整うまで待てなど、王国の要請に応じる気があるのか?ギルドが王国に対して協力を拒んでいると見なされるかもしれないぞ。」


 エリシアは深く息を吸い込み、冷静に応じた。


「我々は決して協力を拒んでいるわけではありません。ただ、現地での活動が円滑に進むよう、冒険者たちの安全を確保するためにも、しっかりとした準備が必要です。それに、市政への貢献を続けるためにも、ここでの業務が滞らないようにすることが重要です。」


 ガレンも続けた。


「このまま無理に派遣を進めれば、逆に混乱を招き、王国の要請に十分応じられない可能性があります。ですから、もう少しだけお時間をいただければと思います。」


 議員たちはしばらく沈黙し、考え込んだ様子だったが、やがて一人の議員が口を開いた。


「よろしい。今回はお前たちの言うことを信じて、少しばかりの猶予を与えることにしよう。しかし、その代わり、しっかりとした準備を整え、迅速に対応することを約束してもらいたい。」


 エリシアとガレンは深々と頭を下げた。


「ありがとうございます。我々は最善を尽くして準備を進めます。」


 こうして、エリシアとガレンは市議会からの猶予を得ることができた。ギルド内では新たなスタッフの募集と引き継ぎ資料の整備が急ピッチで進められることとなった。

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