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まさかの再会

 夜も更けた騎士団の本部。セリス、ミスティ、そしてシェイドが騎士団長の部屋に呼び出された。騎士団長は重厚なデスクの後ろに座り、三人をじっと見つめていた。


 騎士団長は言葉を切り出した。


「君たちの実力は見事なものだ。そこで、我々は君たちに正式に騎士団員になってもらいたいと考えている」


 セリスは一瞬驚いた表情を見せたが、すぐに穏やかな笑みを浮かべた。


「それは光栄ですわ。でも、私は冒険者としての自由を楽しんでおりますので……申し訳ありませんが、お断りいたしますわ。」


 一方、ミスティは黙々とソリティアをしていて、まるで聞く耳を持っていない様子だった。騎士団長が困惑した顔をしていると、シェイドが口を開いた。


「それは面白そうじゃないな……」


 三者三様の反応に、騎士団長は思わずため息をついた。


 騎士団長は再び口を開いた。


「我々は冒険者としての君たちよりも、さらに良い待遇を約束する。給料や装備、住まいなど、全てが一流だ。騎士団と冒険者、やることは基本的に変わらない。それに、断ればサンセットにいられなくしてやることも考えている」


 しかし、その脅しも通じなかった。セリスは微笑みながら首を振った。


「恐れ入りますが、私たちはこのままで十分ですの。冒険者としての自由が大切なんです。どうかご理解ください」


 ミスティは相変わらずソリティアに夢中で、カードを並べる手を止めなかった。彼女の無関心な態度は、騎士団長の言葉など耳に入っていないかのようだった。


 シェイドは冷たく笑いながら答えた。


「その手には乗らないさ……。興味がないんだ」


 騎士団長は肩を落とし、三人の固い意志に手を焼いている様子だった。


「どうしてもダメか……」


 セリスは静かに頷いた。


「はい。このままの立場で活動することが私たちの望みですの」


 シェイドも頷きながら、不敵な笑みを浮かべていた。


「無理に勧誘するのはやめておけ。俺たちの決意は変わらない」


 騎士団長はため息をつき、諦めた様子で話を終えた。


「わかった。これ以上は無理強いしない。ただ、今後も協力を頼む」


 三人はそれぞれの反応を見せながら、部屋を後にした。騎士団長はその背中を見送りながら、苦々しい表情を浮かべていた。


 セリスは部屋を出ると、心の中でほっとした。


(あと少しで帰れるのに、騎士団員になるなんてとんでもない)


 彼女の任務は、王国での派遣期間を無事に終え、収集した情報をエリシアのもとに持ち帰ることにあった。騎士団の勧誘を断るのは当然のことであり、セリスにとっては任務の最優先事項だった。


(もう少しの辛抱ですわ。情報をしっかりと持ち帰れば、エリシアも満足してくれるはずですの)


 セリスは自分にそう言い聞かせ、次の任務に向けて準備を整えるために足早に歩き出した。彼女の心は既に、宿場町へと向けられていた。


 任務のために移動中、セリスとシェイドは並んで歩いていた。周囲の騎士団員たちは黙々と進んでいるが、二人はひそひそと話をしていた。


 セリスが口を開く。


「今の話、どう思いますか?」


 シェイドは少し間を置いて答えた。


「切羽詰まっているということだ」


 セリスはその答えに少し考え込んだ後、軽く頷いた。


「そうですわね。王国もそれほど余裕がないのかもしれませんわ」


 シェイドは一瞬セリスを見つめ、その後再び前を見た。


「だからこそ、俺たちのような者が必要なんだ。だが、俺は自由を奪われるのはごめんだ」


 セリスも同感だった。彼女にとっても、自由でいることが何より重要だった。


「私も同じですわ。騎士団に入れば、確かに安定した生活が手に入るかもしれませんが、それと引き換えに自由を失うのは耐えられません」


 シェイドは微かに笑みを浮かべた。


「面白くないからな、そんな生活は」


 セリスはその言葉に少し戸惑いながらも、続けた。


「あと少しで派遣期間が終わりますわ。そうすれば、私は宿場町に戻れる」


 シェイドは頷き、再び前方を見据えた。


「そうか。俺もいずれはこの任務を終えて、次の面白い冒険に出たいものだ」


 二人はしばらく黙って歩いた。夜の森は静かで、彼らの足音だけが響いていた。


 任務が始まると、三人は魔物の群れに突入した。


 闇夜の中、魔物たちの咆哮が響き渡り、戦場は一瞬にして混沌と化した。セリス、ミスティ、そしてシェイドはそれぞれの戦い方で次々と敵を倒していく。


 セリスはアイスソードを振りかざし、冷気の刃で敵を切り裂いていく。ミスティは無言のままマジックジャグリングで火球や氷の玉を操り、敵を混乱させる。シェイドはその怪しげな魔剣で、魔物をじわじわと溶かしながら斬り伏せていた。


 突然、セリスの耳元で誰かが自分を呼ぶ声が聞こえた。


「セリス……」


 彼女は一瞬動きを止め、周囲を見渡した。しかし、戦場の喧騒の中でその声の主を見つけることはできなかった。再び戦いに集中しようとした瞬間、再びその声が聞こえた。


「セリス……こちらだ……」


 彼女は不安を感じながらも、声の方向に目を向けた。しかし、そこにはただ無数の魔物が押し寄せてくるだけだった。セリスは深呼吸し、再び剣を振るい始めた。


「誰が呼んでいるのかしら……?」


 心の中でそう呟きながらも、セリスは戦い続けた。彼女の剣は冷気をまとい、敵を次々と凍らせていく。しかし、その不安な気持ちは消えず、彼女の心の片隅に居座り続けた。



 セリスはその声に導かれるように、戦場から少し離れた人気のない茂みに足を踏み入れた。彼女の心臓は高鳴り、何か得体の知れないものに引き寄せられている感覚に包まれていた。


「セリス……こちらだ……」


 再びその声が響いた。セリスは茂みの奥へと進んだ。葉のざわめきとともに、月明かりが薄暗い茂みの中に差し込んでいた。その光の先に、見覚えのあるシルエットが現れた。


「アレクシス……?」


 彼女は驚きの声を上げた。そこに立っていたのは、かつて共に行動をした仲間、アレクシスだった。彼の姿は少しやつれていたが、その鋭い眼光は健在だった。


「久しぶりだな、セリス」


 アレクシスは静かに微笑んだ。その声は以前と変わらず、どこか落ち着いた響きを持っていた。


「どうしてここに……?」


 セリスは混乱した。


「説明は後だ。まずはここを離れよう」


 アレクシスはそう言い、セリスの手を引いた。彼の手の温もりを感じながら、セリスは一瞬の戸惑いを覚えたが、すぐにその感覚を振り払った。


 アレクシスは深い息をつき、セリスに向き直った。


「セリス、実は俺は魔族なんだ。魔界から来た存在だ」


 セリスは驚きで息を呑んだ。彼女の目は驚愕と疑念で揺れていたが、アレクシスの真剣な表情に言葉を失った。


「魔族……あなたが?」


「そうだ。俺は魔王様の命令で動いている」


 アレクシスの言葉は重く響いた。彼は一瞬の沈黙の後、続けた。


「魔界は資源に乏しく、食糧を確保するのが難しい状況にある。そのため、魔王様の反対勢力がサンセットに魔物をけしかけているんだ」


 セリスは困惑しながらも、アレクシスの話を理解しようと努めた。


「反対勢力が……?それが今のこの状況を生んだのですわね」


「そうだ。魔界では反対派の幹部が部下たちに『食糧を多く奪い取った奴は褒美を取らす』と命じた結果、こうなってしまった。彼らは食糧を奪うために、魔物をサンセットに送り込んでいるんだ」


 セリスはその事実に驚きつつも、今の状況がなぜこんなにも混乱しているのかを理解し始めた。


「それで、あなたは……?」


「俺は魔王様の命令で、サンセットがどういう状況になっているかを偵察しに来たんだ。そして、君にこのことを伝えるためにここにいる」


 アレクシスの目には決意が宿っていた。


「エリシアに、魔王様に協力するように伝えてほしいんだ。そうすれば、エリシアを魔界の幹部に据えることもできる。彼女の力があれば、魔王様も納得するはずだ」


 セリスはその言葉に驚き、しばらく黙り込んだ後、再び頷いた。


「わかりましたわ、アレクシス。伝えますわね。でも、彼女がどう答えるかは知りませんわよ」


「それでいい。君が伝えるだけでも十分だ。エリシアがこの状況をどう捉えるか、それを知ることが大事なんだ」


 アレクシスの目には希望と不安が交錯していた。セリスはその視線を受け止め、深く息を吸った。


「伝えておきますわね」


 アレクシスは微笑み、セリスの肩から手を離した。


 任務を終えた後、セリスは一人で宿屋の自室に戻った。窓からは夜の静かな街並みが見える。彼女はベッドに腰掛け、思考の渦に巻き込まれていた。


「魔王の存在、アレクシスとエリシアの関係、そして魔王の反対勢力……」


 セリスは小さな声で呟いた。彼女の頭の中で、これらの情報が複雑に絡み合っていた。


 アレクシスが魔族であり、魔王に忠誠を誓っていることは驚きだった。


 しかし、もっと重要なのは、エリシアが魔王とどのような関係を持っているのか、そして彼女が魔界の幹部に据えられる可能性があるということだ。


「エリシアが魔王に協力する……それが我々のビジネスにどう影響するのか」


 セリスは額に手を当て、深く考え込んだ。


 もしエリシアが魔界の幹部になれば、彼女の影響力は計り知れない。しかし、同時に魔王の反対勢力がサンセットに魔物をけしかけている現状は、さらに混乱を引き起こすだろう。


「いずれにせよ、エリシアに報告する必要があるわ」


 セリスは決意を固めた。彼女は立ち上がり、手紙を書くために机に向かった。ペンを取り、慎重に言葉を選びながら、アレクシスから聞いたすべての情報を書こうとした。


 しかし、ペンを握った手が止まった。


「もしこれが他者に手に渡れば、とんでもない大騒ぎになりますわね」


 セリスは深いため息をつき、ペンを置いた。手紙に書くことのリスクを考えると、直接エリシアに話す方が安全だと判断した。


「派遣期間が終わってから、直接エリシアに話すことにしましょう」


 セリスは心の中でそう決めた。彼女は手紙を破り捨て、派遣期間が終わる日を静かに待つことにした。情報を慎重に扱うことが、今後の展開において重要な役割を果たすだろう。

累計ユニークPVが1000を超えました

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