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森の奥のほったて小屋

 エリシアとミスティは静かな森の中を進んでいた。


 二人は冒険者たちからエンチャント武器に関する情報を得た後、その情報を頼りに秘密のエンチャント職人を探していた。


 冒険者たちの間でまことしやかに囁かれる噂。それはどこかに武器に魔術を付与することができる不思議な魔法使いが住んでいるという。


「冒険者たちが話していたエンチャント職人、どこにいるのかしらね。」


 エリシアは周囲を見渡しながら呟いた。


 ミスティは黙って頷き、手に持った地図を指差した。彼女は話さないが、その動きでエリシアに方向を示していた。


「ここからさらに東に進むと、魔女が隠れ住んでいるというほったて小屋があるらしいわね。」


 エリシアは地図を確認しながら言った。


 近隣の街で情報収集した結果、ある老人がどこかの森には恐ろしい魔女がいて、近寄ってはならないという話を若い時に聞いたらしい。


「情報が正しければ、その小屋で彼女に会えるはず。」


 確かな情報ではないが、エリシアにとっては行く価値がある。もしこの噂が本当であればダンジョンの運営に新たな風を吹き込むことができるのだ。


 森の中を慎重に進んでいく二人。エリシアはミスティの行動を注意深く観察しながらも、自分の計画を頭の中で整理していた。

 彼女はエンチャント武器を手に入れることで、自身の権力をさらに高めることを目論んでいた。


「ミスティ、気をつけて進みましょう。この辺りは野生動物や盗賊が出没しますわよ。」


 エリシアは鋭い目つきで周囲を警戒しながら言った。


 ミスティは微笑みを浮かべながら頷き、静かに足を進めた。彼女の動きは滑らかで、森の中でもほとんど音を立てなかった。


 しばらく進むと、二人は目的のほったて小屋に辿り着いた。小屋の外見は古びており、苔むした木材と崩れかけた屋根が目立っていた。


「ここね。間違いないですわ。」


 エリシアは小屋の入り口を見つめながら言った。


「さあ、入りますわよ。」


 二人は慎重に小屋の中へと足を踏み入れた。


 中は薄暗く、ほこりが舞っていたが、さらに目立つのは部屋中に散らばったゴミと物の散乱だった。床には古びた紙くずや食べかけのパン、埃をかぶった瓶が転がっていた。


「なんて酷い有様…。」


 エリシアは呆れた表情で呟いた。


 奥に進むと、ほったて小屋の奥に一人の女性魔法使いがだらしなく椅子に腰掛けていた。彼女は薄汚れたローブを纏い、やる気のない表情で本を読んでいた。


 ちなみに、その本のタイトルは「世界の奇食に迫る!食えばわかるさ!」


「あなたがエンチャント職人ね?」


 エリシアは鋭い声で問いかけた。


 女性魔法使いは顔を上げ、二人を見つめた。彼女の目には淡い光が宿っていたが、その表情には明らかな無気力さが漂っていた。


「ああ、そうだけど。何の用?」


「ごきげんよう。私はエリシア。エンチャント武器に関する情報を求めてここに来ましたの。」


 エリシアは胸を張って答えた。


「あなたに仕事の依頼をしたいのですわ。」


 女性魔法使いは大きなため息をつき、本を閉じた。


「エンチャントね…。正直、面倒くさいのよね。やる気がないから、断らせてもらうわ。」


「ええぇ……?」


 エリシアは落ち込んだ。


「どうしてそんなことを?」


「簡単なことよ。私は仕事が嫌いなの。特に面倒な依頼はね。」


 魔法使いは無気力な声で答えた。


「だから、あなたの依頼は受けられないわ。」


 エリシアは冷静に魔法使いを見つめ、説得を試みた。


「あなたの技術は貴重で、多くの人々が求めていますわよ。」


 魔法使いは肩をすくめながら答えた。


「そう言われても、やる気が出ないものは仕方ないのよ。私は自分のペースで生きたいの。」


「そんな…。」


 エリシアは言葉を失い、途方に暮れた表情を見せた。


 ミスティはエリシアの肩を軽く叩き、静かに励ますように微笑んだ。


「仕方ないわ、ミスティ。別の方法を考えましょう。」


 エリシアはため息をつき、魔法使いに背を向けた。


「では、ごきげんよう」


 二人は小屋を出て、再び森の中へと歩き始めた。エリシアは新たな計画を頭の中で練り直しながら、次の一手を考え始めた。


 エリシアとミスティはほったて小屋を出た後も、エリシアの心は落ち着かなかった。彼女の心にはまだ納得できない思いが渦巻いていた。


「ミスティ、あの魔法使いをどうにかして説得しますわよ。」


 エリシアは決意を固めたように言った。


 ミスティは少し驚いた表情でエリシアを見たが、彼女の決意の強さを感じ取ると、肩をすくめて付いていった。


「もう一度小屋に戻りましょう。」


 エリシアは言い、二人は再びほったて小屋へと向かった。


 小屋の中に入ると、先ほどの女性魔法使いは同じ椅子にだらしなく腰掛け、本を読んでいた。彼女の無気力な表情は変わらず、エリシアとミスティが戻ってきたことに気づいても、特に反応を示さなかった。


「あなた、まだここにいるのね。」


 魔法使いは呆れたように呟いた。


「ええ、ここでのんびりしてるわ。」


 エリシアはその辺にある埃だらけの椅子にドカリと腰掛けた。


「私はエンチャント武器が必要ですの。あなたがやる気がないからと言って諦めるわけにはいきませんことよ。」


 エリシアは強い口調で言った。


「でも、私はやる気がないのよ。無理なものは無理。」


 魔法使いは肩をすくめて答えた。


 エリシアは深呼吸をして冷静さを保とうとした。


「報酬なら弾みますわよ」


 エリシアはニヤリと笑った。


「お願いされても、やる気がないものはどうしようもないのよ。」


 魔法使いは無気力な声で答えた。


 エリシアはその答えに苛立ちを覚えたが、それでも諦めなかった。


「あなたが動かないなら、私もここから動きませんわ。」


 そう言うと、エリシアは頭の後ろで手を組んで椅子に座り直した。ミスティも静かに彼女の隣に座り、一人でお手玉の練習をしている。


「ええ?何をしているの?」


 魔法使いは驚いた表情で二人を見た。


「あなたがエンチャント武器を作るまで、私はここから動きませんわ。」


 エリシアは強い意志を込めて言った。


 魔法使いはため息をつき、頭を抱えた。


「本当に面倒なことになったわね。でも、私は本当にやる気がないの。だから、ここに居座っても無駄よ。」


「それでも私は諦めませんわ。」


 エリシアは頑固に言い張った。


「必要なものは何としてでも手に入れる。それが私のやり方ですわ。」


 魔法使いは再び本を手に取り、無気力な態度を続けた。


 エリシアは決意を持って小屋の片隅に座り込み、魔法使いの無気力な態度にもめげずに居座り続けた。しかし、時間が経つにつれて、じっとしていることに耐えられなくなった。


「仕方ないですわね…。こうしているだけでは何も進みませんわ。」


 エリシアは呟き、立ち上がった。


「あなた、何をするつもり?」


 魔法使いは興味なさげに問いかけた。


「こうしているだけでは時間の無駄ですわ。少しでも役に立つことをするの。」


 エリシアは決意を込めて言った。


 彼女は部屋の隅に散らばったゴミや紙くずを拾い集め始めた。埃をかぶった瓶や古びたパンの欠片を片付け、部屋を掃除し始めた。


 魔法使いは呆れたようにエリシアを見つめたが、再び本に目を戻した。


「好きにすればいいわ。でも、それで私のやる気が出るわけじゃないのよ。」


 一方、ミスティは小屋の片隅に座り、持っていたトランプを取り出して遊び始めた。


 彼女は器用にトランプタワーを作り、静かに楽しんでいた。


「ミスティ、何をしていますの?」


 エリシアは一瞬手を止めて尋ねた。


ミスティは微笑みながらトランプタワーを指差し、楽しそうに続けた。


「まあ、あなたが楽しんでいるならそれで良いですわ。」


 エリシアは再び掃除に戻った。


 魔法使いはその様子を横目で見ながら、少しずつ興味を引かれ始めていた。エリシアの行動には驚きとともに、微かな感心も覚えた。


「何でそんなに必死なの?」


 魔法使いはやっと口を開いた。


 エリシアは手を止め、魔法使いに向き直った。


「私は何があっても目的を達成するために努力しますわ。諦めることはしませんの。」


「ふむ…。そんなに必死になる理由は何なの?」


 魔法使いは興味深げに尋ねた。


「私のビジネスのために必要な力がエンチャント武器なのです。」


 エリシアは真剣な表情で答えた。


「あなたの協力がなければ、それを達成することはできませんわ。」


 魔法使いはしばらく考え込んだ後、再び肩をすくめた。


「まあ、あなたの熱意はわかったわ。でも、私はやっぱりやる気が出ないの。」


「けちんぼ」とエリシアがぼやいた。


 エリシアが掃除を続ける中、ミスティはトランプタワーを完成させたが、エリシアがゴミを雑に放り投げた振動で崩れ去った。


 エリシアは部屋の掃除を続けていた。ゴミを片付け、ほこりを払う中で、彼女は古びた本棚に目を向けた。本棚には埃をかぶった本が無造作に積み上げられていた。


「こんなところに本がたくさんありますわ。」


 エリシアは呟きながら、本棚に近づいた。


 彼女は本棚の中から数冊の本を取り出し、一つ一つのタイトルを確認した。その中には、驚くべきことに幾らかの料理本が含まれていた。


「『魔法のスパイスで楽しむ料理』、『異世界の珍味レシピ』、『伝説の魔法使いの家庭料理』…。」


 エリシアはタイトルを声に出して読み上げた。


「どうしてこんなに料理本が?」


 ミスティはトランプタワーを作りながらエリシアの様子を見て、興味深そうに近づいてきた。彼女も料理本を一冊手に取り、中を覗き込んだ。


「あなた、料理に興味がおありで?」


 エリシアは魔法使いに尋ねた。


 魔法使いは本から目を上げ、少し驚いた表情で答えた。


「まあ、そうね。世界の珍妙な肉や料理が好きなの。でも、料理自体はあまりやらないのよね。」


「珍妙な料理が好きなのですの?」


 エリシアはさらに興味深げに尋ねた。


「ええ、珍しいものには興味があるわ。でも、料理をするのは面倒くさくて。」


 魔法使いは肩をすくめて答えた。


「だから、こうして本を読むだけで満足してるの。」


 エリシアは本の中をパラパラとめくりながら、興味深げに言った。


「これらの本には珍しいレシピがたくさん載ってますわね。」


 彼女の中に何かが閃いた瞬間だった。


「そうですわ、これですわよ。」


 エリシアは声を上げた。


「何が?」


 魔法使いは無気力な声で尋ねた。


「あなたが動かないなら、私が動きますわ。」


 エリシアは決意を込めて言った。


「この本をいくつか借りてもいいですの?」


 魔法使いは肩をすくめながら答えた。


「どうぞ。使わないし、構わないわ。」


 エリシアは素早く本棚から数冊の料理本を選び出し、腕に抱えた。


「これで解決の糸口が見つかるかもしれませんわ。」


 ミスティもエリシアの行動に興味を持ち、彼女に続いた。


「では、私たちはこれで失礼しますわ〜。」


 エリシアは魔法使いに一礼し、小屋を出ていった。


 ミスティはトランプタワーを片付けることなく、そのままエリシアに従った。エリシアの中には新たな計画が芽生え、彼女の足取りは軽かった。


「ミスティ、この本を使って私たちの計画を進めますわよ。」


 エリシアは自信満々に言った。


「これでエンチャント武器の問題も解決するはずですわ。」


 ミスティは静かに頷き、エリシアの後に続いた。

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