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プロローグ
何も変わり映えのしない夏の日だった。
蝉の喚き声に疲れ、太陽の熱に焼かれながら、いつもの帰り道を辿っていた。帰ったらまず冷房をつけて、買っておいたアイスを食べながらアニメでも見ようかとぼんやり考えていた。
その日はあまりにも暑くて、陽炎が立っていた。目に映るすべてが幻のようで、だから最初は自分の気が狂ったのかと思ったのだ。
だって、誰が信じられようか、目の前にいる男の言葉を。
この不審者のような男の虚言に付き合う義理などないと言うのに。
耳を貸してしまった。何故かこの男の姿が、言葉が、脳裏に焼き付いて離れない。
「僕は5年後の君だ。――どうか、彼女を助けてほしい」