チョンセの謎と韓国不動産の法律④
これまで「伝貰」の特徴や、
日本の「敷金」「保証金」との比較、などについて解説してきたが、
なんとなく解説がぼやけるのは、
言葉の意味が地域と国によって違うからだろう。
日本では「建設協力金」を1970年代から「保証金」と呼ぶようになったことは、
既に解説済みだが、関西では戦前から「敷金」のことを「保証金」と呼んでいる。
そして韓国でも「月貰」ウォルセの賃貸借契約では、
日本の「敷金」の意味で「保証金」という用語を使っている。
ちなみに「月貰」とは「伝貰」のいらない毎月賃料を払う賃貸借契約の事であり、
毎月の家賃の事も「月貰」と呼んでいる。
しかし、韓国の法律用語では月々の家賃は「借賃」と呼ぶ。
ちなみに韓国には「敷金」という言葉はないが、
代わりに「敷金」の意味で「保証金」という言葉を使っている。
ゆえに「月貰住宅」の入居者募集広告では、
月貰○○ウォン
保証金○○ウォン
という表示になる。
そして韓国には「礼金」という用語もない。
その代わり「権利金」という言葉は頻繁に使われており、
「営業権利金」「施設権利金」「商圏権利金」とかがある。
これらの言葉は店舗・事務所の賃貸借契約で使われる。
それぞれの意味を解説すると、
「営業権利金」
これは1年間の前入居者の売上に対して生じる権利金の事です。
月額純利益×12か月分=営業権利金
となります。これは店主が誰であろうとこの場所ではこれくらいの利益が生じるんだという前提で計算される、つまり、日本で言えば・・・やっぱり「権利金」です。
日本にも駅前ビルなどで、普通にやり取りされてますが、慣習みたいなものです。
もちろん退去時には、次に入ってくる人に請求できる権利金です。
「施設権利金」
日本語で云う「居抜き」の状態で物件店主が変わって行くことが多いのが韓国。
開店時に投資した施設費用の事で、インテリア・看板・厨房機器・また広告費などを計算する場合もあるそうです。
同じ業種ならその居抜きの状態で借りても、減価償却などを適用し計算が立ちますが、全く違う業種が新しく入る場合は話し合いが必要となります。
「商圏権利金」
このパダク権利金がなかなか理解できない。
これは地勢権利金のようなもので人口流動などを見て決定される非常に曖昧な権利金です。
法的には払わなくてもいい権利金なのですが、払わないと地主が契約してくれないケースもあります。
従ってカンナムやミョンドンなど人が多く集まる場所に物件を借りる場合は注意が必要です。
日本においても「権利金」という言葉は商業ビルなどの店舗等の賃貸借契約で使われるが、
日本では、それ以外に住居における「借地権」の売買においても、
「借地権」の対価のことを「権利金」と呼んでいる。
そしてこの「借地権」は登記できる権利なのに、「営業権利金」などは登記できない。
商業ビルにおける賃貸借契約によって授受される様々な「権利金」も登記できない。
ここで韓国における「借地権」について解説しよう。
韓国には「借地権」という概念がない。
しかし、土地の賃借権の登記はでき、借地上に自分で建物を建て住むこともできる。
そして、その建物に所有権登記もできる。
ゆえに、韓国にも「借地権」は制度として、存在する。
しかし、何故か全く使われていない。
韓国には「伝貰権」というものが李氏朝鮮時代の昔から存在している。
それは権利としても広く認識されており、
「転伝貰」として売買もされていた。
しかし、韓国では「伝貰」のことを「権利金」とは言わない。
恐らく、韓国で「権利金」と言えば「営業用店舗の権利金」のことを指し、
ひどく不安定な権利だと認識されているからではないか。
韓国では「伝貰権」を登記する人は少ないが、
登記せずとも「住宅賃貸借保護法」が1981年成立してるように、
その権利は大変強い。
今では「未登記伝貰」も「引き渡し」「住民登録」「確定日付」さえしておけば、
登記された伝貰権と同等か、むしろそれ以上の対抗力をもっている。
(少額伝貰優先弁済権などがあるため)
カニ太郎は、「伝貰権」は「借地権」と似ていると考え、
「伝貰金」は「権利金」と呼んでもいいのではないかと思っている。
韓国の文献に「伝貰金」のことを「権利金」「伝貰権利金」などと呼んでる資料はないかと探してみたのだが、殆どの資料が「伝貰金」「保証金」「賃貸保証金」「伝貰保証金」という用語を使って解説していた。
残念ながら「権利金」「伝貰権利金」などと呼んでる文献は一つもなかった。
そんな中、コトバンクだけが「伝貰金」のことを
「不動産権利金」と呼んでいたので、下記に転載しておく。
>コトバンク 伝貰金(読み)でんせいきん
世界大百科事典内の伝貰金の言及
https://kotobank.jp/word/%E4%BC%9D%E8%B2%B0%E9%87%91-1374304
【大韓民国】より
…資金繰りに苦しむ企業の場合,制度的な金融機関を通さない高利の私債を応急の運転資金に利用することが多かった。私債市場のおもな貸手は専門的高利貸業者であるが,その基礎には庶民の小口資金を集積する契や伝貰金と称する多額の不動産権利金などの存在が指摘できる。高利の私債市場は,企業の財務構造を脆弱なものとし,しばしば金融市場のかく乱を招くため,政府は70年代前半から私債規制と企業の株式公開を通じた資本市場の育成策を展開した。…
※「伝貰金」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
※ちなみに『契』はケイと読み『無尽』の事である。<
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