5:僕頑張ったよ!
こんなつたない作品ではありますが、読んで下さる方々ありがとうございます。
次の日から我は古い記録を読み直し始めた。
リーパーのじぃさんや他の原初からの存在達も快く協力してくれた。
グレンは楽しそうに薬草畑の手入れをしている。
時に休憩を兼ねて皆で薬草茶と焼き菓子をつまみ、この温かな一時を楽しんでいた。
恐らくこの温かな心地良い時間はそう長くは続くまい、いや続かせてはならぬのだ。
手放せなくなる前に、手放したくないと欲が膨らむ前に・・・
それは我以外の者も同じだったかもしれぬ。
誰もがグレンと言葉を交わしあの笑顔を見ていると
この薄暗い灰色の闇の領域が ほんのりと色付いたような、そんな錯覚がしてしまうのだ。
初めて抱く様々な感情、それをどう言葉にすればよいのか誰も解らずにいる。
戸惑う自分に驚きつつも、誰もがその表情は柔らかい。
『ヒィッ!』 バシッ! ベチョ・・・
一度だけグレンが短い悲鳴を上げたことがあった。
サンダルを片手にオロオロするグレン。
『ご・・・ごめん・・・。ゲイザーくんゴメンねぇぇぇ』
涙を浮かべながらゲイザーに平謝りである。何事だろうかと問うてみれば
Gなる虫とゲイザーを見間違えて サンダルで思い切り叩き落としたのだと・・・。
Gと言うのはどの様な虫なのだと気にはなったが聞かぬ方がよいようだ。
ゲイザーは見事に平面に変形していた。
変形したとは言っても元々が靄のような物なのですぐに形は戻るであろう。
慌てるグレンの様子が愛らしく思い出して笑っていたらペシッと頭を叩かれた。
グレンの眉間に皺が寄っている。
まぁたまになら軽くペシッとされるのも悪くないやもしれぬな。
と呑気にお茶を飲んでいたら ハルピュイアが慌ただしく飛んできた。
何事であろうか。
『見つけたよ!前例があったよ!記録があったよ!』
なんと!前例があったのか!よかった!
よか・・・ったのか?
前例があると言う事はだ、どこまでマヌk・・・ゲフンゲフンッ
考えないようにしよう・・・。
『記録によると・・・前例の者は勇者で
ナニナニ?・・・
神様が何か話そうとした時に
神様がこけて突き飛ばされて・・・
気が付いたらハルピュイアの巣に居た・・・・』
・・・
・・・・・
目を伏せて大きなため息をついて 深呼吸した後に目を開いてみれば
サンダル片手にワナワナと震えるグレンの姿が見えた。
あー・・・うん。 戻ったらそのままサンダルで殴ってもよいのではないかな?
目の前にそのマヌk・・・神が居たら我も殴っておったやもしれぬ。
「してその勇者はどの様にして神の元へと戻ったのだ?」
まさか戻れなかったなどと無いであろうな・・・。
『待っても神様は迎えに来るか判らないし
勇者は落ち込んでいるしで気の毒なので
長が代表として神様の元へ 上へ上へと飛び続けた。
長の姿が見えなくなってしばらくすると
動かなくなった長を抱えて神様がやって来て
勇者を連れて戻っていった。
と書いてあるね。』
ふむ・・・
となれば、神が住まう場所まで上へ上へと天高く飛び続ければよいのだな?
む、我では飛べぬではないか・・・
どうするべきか、今回もまたハルピュイアに飛んでもらうべきか。
否、記録にもあったではないか。動かなくなった長を抱えてと・・・
すなわちそれは無に帰る、存在が消えると言う事だ・・・
消えてくれなど 同領の住民に言える訳もないではないか・・・
だがどうすればよいのだ・・・飛べぬ己が恨めしい。
『ボク イクヨ』
ゲイザー?!
『ボクナラ飛ベルシ 同胞モイッパイイルヨ』
だが・・・お前は消滅して・・・消えてしまうのだぞ。
『心配イラナイ ボク消エル ケド 消エナイヨ
ボク同胞ト意識共有 ダカラボク消エルケド 消エナイヨ』
ゲイザー・・・
『タダ グレン泣クカモ知レナイ
コノママスグ飛ブネ コッソリ ナイショ』
だがな・・・と言いかけて言葉を飲み込んだ。
我は何を言うつもりだ、そして言ってどうするとゆうのだ・・・
我の考えなど他所に ゲイザーはプルルンッと震えて小さな小さな同胞を生み出した。
『グレンヲヨロシク 小サキ同胞ヨ』
そうしてゲイザーは高く高く 羽をはばたかせて飛んで行った。
パタパタパタ・・・
上に・・・どんどん上に行けばいいんだよね?
神様の居る場所ってどんな場所なんだろう。
僕たちの居る闇の領域とは景色が違うのかな?
うん、きっと違うよね。僕たちは闇の領域に居るから景色も薄暗いんだよね?
ボフッ
薄暗いけど分厚い雲の中に入ったみたい。
この雲を抜けたら神様に会えるのかな?
それとももっと上に行かなきゃいけないのかな?
パタパタ パタパタパタッ
もう随分と昇って来た気がするけど まだ雲の中だよね?
あ、でもちょっと明るくなって来たかな?
闇の領域はもぉ小さくなっちゃったかな?
あ、下も雲で見えないや エヘヘ・・・
雲に入る前に見ておけばよかったかな。
グレンはまだ薬草園に居るのかな?
それとも もぉ深淵の刻限になって寝ちゃってるかな?
デュラハンは大丈夫かな?
うっかりグレンに僕の事言ったりしてないよね?
あれで優しいし寂しがり屋だしね、ちょっと・・・かなり不器用だけど クスッ
アリアンが居ればきっと大丈夫だよね?しっかり者だし優しいし、料理もおいしいし!
パタパタッ パタパタッ
まだ・・・かなぁ・・・
周りも凄く明るくなってきて ちょっと体に力が入らなくなってきたかも・・・。
でも頑張らないとね?
神様にグレンを迎えに来てって言わなきゃね。
あとね・・・ちょっとそのドジも直してね?って言わなきゃね。
またグレンが落とされたら嫌だもんね。
パタッ パタッ ボスッ!
やった!雲抜けたー!
ここからどうすればいいのかな?まだ上に行けばいいのかな?
パタッ パタパタッ
あれ? 僕 少し小さくなってる?・・・
なんでかなぁ?
まぁいいや、神様みつけないとだもんね。
上に・・・上に・・・・
パタッ・・・パタッ・・・
神様ー、どこー?・・・
あれ? 僕 また小さくなってる?
明るい場所に来ちゃったからかなぁ?
うーん・・・でもまだ神様に会えてないから・・・
あんまり小さくなっても困るんだけどな・・・
神様に見つけて貰えなくなっちゃうよ・・・。
大きな声で叫んで見る?
あ、僕 声無いんだった・・・ヘヘヘ・・・
同胞みたいに意識共有できたらなぁ・・・
うーんうーん
神様何処ーーーー!
頭の中で叫んで見た。
けどやっぱり無理かぁ・・・・。
パタッ・・・ パ・・タッ・・・
だいぶ力入らなくなっちゃったし 僕の体 なんだか色が・・・
ゴメンねグレン 僕 神様に会う前に消えちゃうかもしれない・・・
出来るだけ頑張るけど グレンを迎えに来てって言えなかったらゴメンね。
パタッ・・・・・ポスンッ
何かに当たった・・・
温かい・・・手?・・・
でも顔の方まで もぉ見えないや。
あのね 神様 グレンを助けて 迎えに来て 闇の領域まで
それでね 神様にドジを直してって伝えて欲しいな。
『 闇の領域の小さき住人よ。必ず伝えましょう。
グレンも必ず迎えに行きましょう。
よく頑張りましたね。 疲れたでしょう、ゆっくりとお休みなさいね。 』
わぁ凄く優しい声だぁ
よかった 僕ちゃんと言えたんだね
戻らなきゃ
戻ったら・・・グレンと・・・また・・遊ぶんだ・・・
でも ちょっと・・・疲れ・・・ちゃった。
少し・・眠ったら・・すぐ・・戻るから・・・
・・・待って・・て・・ね・・・グ・・レ・・・ン・・・・
僕はゆっくりと目を閉じた。
「・・・」
手の平に 小さな それは小さな蝙蝠の様な羽が二枚
闇の領域の住人が この地に来る事は本来ありえない。
だがいつだったか数千年前 一匹の鳥がやって来たことがあった。
その時は愚弟がやらかしたのだが・・・
まさかまた愚弟が?・・・
愚弟に問い質したいところではあるが、まずはそのグレンとやらを迎えに行こう。
この小さな闇の領域の友人との約束を果たすために。
ゲイザー 「僕の姿見えなくなったよね!
グレンを落としたドジ神様何処かな?あれかな?
なんか他の人に囲まれて賑やかだなぁ。
うーん、今なら気付かれないよね?
ひとーつ デュラハンのぶん パコーンッ!
ふたーつ アリアンのぶんー スパコーンッ!
みーっつ グレンのぶん~♪ ベシベシッ!! ( ;゜皿゜)ノ☆」
「よーっつ ゲイザーのぶんーー ゲシッヽ( ・∀・)ノ┌┛」
あ、さっきの手の平の神様!