3:なにかがこぅ・・・芽生えた?
中々話がすすみません・・・
自分でもじれったいです(;´Д`)
この日 我はいつもの散策に出かけていた。
馬の散歩も兼ねているこの散策は 時折訪れる光の領域の住人が迷子になっていないかの確認の意味もある。
しばらくの間うろつき、しばし休憩を取ることにした。
適当な倒木の前に火をおこし、ケトルを取り出して火にかけ湯が沸くのを待ちながら倒木に腰掛けた。
時刻は夕暮れに差し掛かった頃であろうか。
もっともこの闇の領域では日差しなど無いので、闇の色が濃いか薄いかの差でしかないが・・・。
夕暮れとは一面がオレンジ色から紫色へとグラデーションが美しいのだとエルフに聞いたことがあった。
いつかは見てみたいものだ。
などと考えていたら、焚火を挟んだ正面の土が盛り上がった。
モコッ・・・モコモコッ・・・ボフッ
茸?・・・いや茸にしてはデカイような?
クネクネ プルンッ うにょーんっ・・・ ポテッ
まるでアンデッドの誕生のような・・・ゲフンゲフンッ失礼。
例えるなら地中昆虫が羽化するような感じだろうか。
土から最初に姿を現したのは背中のようだ。
モコモコと上に押し上げられ頭や手足が現れた。
容姿から察するに、ソレは中つ国の幼子のようであったが・・・
ハテ?中つ国の住人とは土から生まれたであろうか?・・・ゴーレムでもあるまいし。
近づきそっと触れてみると温かい。 呼吸も微かにしているようだ。
ふむ、体温があるとゆう事はやはりアンデッドではないようだ。
だが・・・・さすがに一糸纏わぬ姿とはどうした物か・・・
考えているとソレがプルルッと身を震わせた。
ん?目覚めるのか? 目覚めてすぐ我の姿を見ると驚くやもしれぬな・・・
離れて倒木に腰掛けて様子を見るとするか、湯も沸きそうではあるしな。
そしてソレはもう一度プルルッと身を震わせるとクシャミをした。
『ぶぇっくしょい あ"ぁ"~・・・』
見た目とは反する豪快なクシャミ、おっさんか!と心の中で突っ込んだ。
リーパーのじぃさんがするようなクシャミであるな・・・(苦笑)
「お目覚めかな?」
寝ぼけ眼なソレに声を掛けてみると、ソレは固まった。
やはり固まってしまったか、我としては驚かせるつもりは無いのだがな(苦笑)
自分の置かれた状況に理解が出来ぬのかソレは少しの間固まり続けた。
が、何かを思ったのかアタフタと地面を探っている。
そして視線を下に落として再び固まった。
一糸纏わぬ自分のその姿に気づいたのであろう。
うむ、幼子ではなかったな、ちゃんと凹凸が・・・ゲフンゲフン
どうするか・・・
このまま放置しておけばスルーアやバンシーなどの餌食になってしまうだろう。
生まれたばかりであれば、なおの事さら放置も出来まい。
取り敢えずは屋敷に連れ帰り考えるか。
あぁ、その前にソレをまず落ち着かせねばならんな・・・・
「取り合えず落ち着きたまえ。我に害意はない。」
そして今に至る。
アリアンの手で磨かれたグレンはなんとも愛くるしい姿だった。
土埃を洗い流してこざっぱりしたグレンのあちこちに擦り傷や打ち身の痕が見える。
アリアンが手当てもしてくれているのでその傷も数日で良くなるであろう。
クゥ・・・キュルルルッ・・・
これまた愛くるしい音が聞こえグレンは顔を真っ赤に染めた。
生まれてから何も口にしていないのだから仕方あるまいに・・・
「この程度の物しか無いが、腹も減っておろうから食べれそうなら食べてくれ」
そう言いながらテーブルの椅子をそっと引きながら微笑んでみる。もっとも見えないだろうが。
『デュラハン様が用意なさったのですか?』
アリアンが意外そうに言う。
普段はアリアンが食事を含む身の回りの世話をしてくれるのだが、我も多少のことは出来はする。
「この程度であれば我にでも出来はする・・・
だが、もう少し柔らかい物の方がよかっただろうか・・・」
『そうですね、グレン様の場合でしたらお肉は焼くよりもスープなどの煮込んだ者の方がよかったかもしれませんね・・・』
「むぅ・・・」
『いえ!大丈夫です!煮込み系より焼いた方が好きです!なんならミディアムレアが好きです!!』
勢いよく言うグレンに思わずアリアンと目を合わせて笑ってしまったではないか・・・
『ゆっくり噛んで召し上がってくださいね。』
アリアンの言葉に はーい! と答えてグレンは食事を始めた。
その姿を微笑ましく二人で眺めていると
『デュラハン様、いつまでそのお姿で?
屋敷に戻られたのですからお脱ぎになってはいかがですか?
私はかまいませんが、お脱ぎになった方がグレン様も安心なさるかと・・・』
ふむ、それもそうか。
この鎧を脱げば多少なりともグレンと似た容姿になるな・・・
「では着替えてまいろう・・・」
私はアリアン。種族としてはレイスです。
この闇の領域に存在するようになってからデュラハン様のお世話をしております。
デュラハン様とは同時期に存在するようになり、友人であり姉弟のような関係であります。
デュラハン様は一通りのことはご自分でなすことは可能ですが、その・・・
なんといいましょうか・・・
不器用でございます・・・。
洗濯をすれば力が入りすぎてしまい、衣服はボロ布へ・・・
パンを作っているハズが何故か炭に・・・
肉を焼けばこれまた炭に・・・
野菜や果物を切ればまな板ごと・・・下手をすればテーブルごと・・・
何故かお茶だけは、それはそれは上手にお入れになります。
なので私がお世話をしてさしあげる事にいたしました。
だって素材に失礼ですからねっ!フンスッ
普段はデュラハン様と二人で生活をしておりますが、もちろん恋愛感情などはございません。
もともと闇の領域には感情を持たぬ者が多いのですが
私やデュラハン様、時々お見えになるグリムリーパー様の様に多少の感情を持ち合わせる者も存在しますが。
我々の様な闇の住人は繁殖行動も無いので そういった恋愛感情のような物は無いのですよね。
自然と存在し自然と消滅する、そういった存在なのです。
ただデュラハン様は時折エルフなどの他領域の住人と交流があるためか、私よりは感情が豊かな気がいたしますね。
そんなデュラハン様がいつもの散策からお戻りに・・・
おや?
おやおやまぁ・・・
デュラハン様が腕に何かを抱えていらっしゃるようですが、マントでグルグル巻きにされているので把握しかねますが幼な子でしょうか?・・・
あ、好奇心の強いゲイザーが近寄ってしまいましたね。
驚かないとよろしいのですが・・・
ゲイザーは遠目だと黒いモフモフした、背中に小さな蝙蝠の羽のようなものが付いた毛玉に見えるのですが、モフモフではありません。黒い靄の塊と言えばよいでしょうか?
あぁ私もモフモフした物に触れてみたいものです、もっとも触れさせてくれるモフモフが居るかは解りかねますが。(苦笑)
あ・・・ヂュラハン様の眉間に皺が・・・そうですよねやはりゲイザーは最初驚かれてしまいますよね・・・
『ブフォッ』
えぇぇ、デュラハン様が吹いた・・・・のですか?
ええぇぇぇぇ・・・デュラハン様の肩が小刻みに震えて・・・笑ってらっしゃるのですか?・・・
ゲイザーが嬉しそうに尻尾を振りながらこちらにパタパタと飛んできましたね。
なになに? 風呂の用意を?
ではやはり腕に抱え込まれたグルグル巻きは幼な子?
念のために衣服も用意しときましょうか・・・
・・・・
幼な子の衣服は・・・無いですね・・・
私の寝着を少し工夫してみるとしましょうか。
「おかえりなさいまし」
軽く頭を下げて出迎えると、デュラハン様の腕から解放されたのは
愛くるしい幼な子でした。
薄いハニーブラウンの髪は少し癖のあるフワフワで 猫の様に少しだけ釣り目の瞳もハニーブラウンで
どちらもこの闇の領域には存在しない色合いでしたから、迷い込んだのでしょうか?
よく見ればマントから出ている手足やおでこには擦り傷がアチコチについていらっしゃいました。
それに土埃・・・
まずはお風呂ですね、そして傷の手当もしなくては・・・
そっと手を差し出すとグレンと呼ばれたその幼な子は私の手を取りゆっくりと足を踏み出したものの
痛むようで少しばかり眉毛が下がっておられました。
「大丈夫でございますか? ゆっくりと参りましょうね」
微笑んで声を掛ければ幼な子も微笑み返してくださいました。
「でもそんなにお小さいのですから、何かと大変でしょうし。
お怪我もなさっていらっしゃるようなので、どうかお手伝いさせてくださいな。」
浴室に着いたので微笑みながらそう声を掛けると幼な子は微笑み返してくれたのですが・・・
おさ・・・な・・・・??
マントを取るとそこには立派に凹凸が・・・えぇ私よりも立派な・・・ゴホンッ
失礼を致しました。
幼な子ではありませんでした、はい。
小柄なレディでございましたとも・・・。
ご本人もお気づきになっていたかったのか、【お小さい】に反応していらっしゃいました。
『あの・・・アリアンさん。鏡ってあったりますか?』
「はい、一応は浴槽の傍にございますよ。」
通常の鏡では私たちの姿は沸りませんので特殊な細工をした鏡が浴室内には御座います。
一緒に中へと入りご案内してさしあげると、レディはその場で固まってしまわれました。
「グレン様?・・・ いかがなさいました? 大丈夫でございますか?」
反応はございませんね・・・
仕方ありません、今のうちに磨き上げてしまいましょう。
先程グレン様はご自分でなさるとおっしゃっていましたから、他者に世話をされる事に慣れていらっしゃらないのでしたら騒いでメンド・・・ゴホンッ。驚かせてしまいますものね。
フワフワの髪 洗っていても手触りもよくて心地よい・・・
スベスベの肌 なめらかでずっと触っていたいような・・・
このまま抱きしめてもよいかしら・・・
ハッ・・・ダメダメ。落ち着いて私・・・。私はレイス 感情には乏しい種族!・・・のハズ・・・ですわよね?
よく見れば体中に擦り傷や切り傷、打撲痕まであるではありませんか。
大きな傷ではありませんが、こうも数が多いと少々痛ましいですわね。
後で手当てをしてさしあげなければ・・・
グレン様の様子は・・・
まだ固まってらっしゃる・・・固まりながらも何かを考えこんでいらっしゃるようなのでそのまま浴槽に突っ込・・・入れてさしあげました。
体も少し冷えていらっしゃるようでしたので・・・。
湯上りに備えてタオルゃ衣服、傷薬など揃えていると
天を仰ぎながら マージーかーーー と呟くグレン様の姿が・・・
あらあら・・・このまま待っていたらさすがにのぼせてしまいそうですわね。
「あまり長く湯舟に浸かっているとのぼせてしまいますよ?」
そう声を掛けるとやっとグレン様は自分を取り戻しチラッとこちらを見た後遠い目をなさっておられました。
湯船から上がってきたグレン様をタオルで包み込み、水気を拭き取った後に衣服を着せて髪を乾かして差し上げると私の頭でリンゴーンッと金の鳴るような音がしたのはきっとキノセイでございます。
傷の手当ても済ませダイニングにお連れすると、そこには食事の用意がされておりました。
え?デュラハン様がお作りになったのですか?
作ると言ってもお肉を焼くだけではありますが 炭になってない!しかも一口サイズに切り分けられてる?!なんなら香草さえも添えられている?!
ええ?! グラスのお水にもライムのスライスが浮かんでる?!
ハッ・・・私としたことが動揺して言葉遣いが・・・失礼いたしました。
「デュラハン様が用意なさったのですか?」
『何を驚いておるのだ・・・アリアンの分も用意してある。席に着くがよい』
心外だと眉を顰めるデュラハン様の言葉通り テーブルには3人分の食事が並んでおりました。
『この程度であれば我にでも出来はする・・・
だが、もう少し柔らかい物の方がよかっただろうか・・・』
「そうですね、グレン様の場合でしたらお肉は焼くよりもスープなどの煮込んだ者の方がよかったかもしれませんね・・・」
『むぅ・・・』
『いえ!大丈夫です!煮込み系より焼いた方が好きです!なんならミディアムレアが好きです!!』
いぇあのグレン様そうゆう意味ではなくてですね・・・
お体の事を考えればもう少し胃に優しい物の方が・・・
あぁぁぁ豪快に食べてらっしゃる・・・余計な気苦労のようで大丈夫そうですね(苦笑)
「ゆっくり噛んで召し上がってくださいね。」
そう言ってデュラハン様を見ると デュラハン様もこちらを見ていた。
意外と肝が据わってらっしゃるのかもしれませんね、グレン様は。
さて私もデュラハン様がせっかく用意して下さったのですから頂くとしましょう。
パクッ モグモグ・・・
あら 焼き加減も塩加減も絶妙で美味しいではありませんか!
モグモグ・・・
それにしてもデュラハン様はいつその鎧を外されるのでしょうか?
鎧姿ではグレン様が委縮して・・・いらっしゃいませんね・・・
でもまぁお客様でいらっしゃるレディの前ですし?
「デュラハン様、いつまでそのお姿で?
屋敷に戻られたのですからお脱ぎになってはいかがですか?
私はかまいませんが、お脱ぎになった方がグレン様も安心なさるかと・・・」
食事を粗方終えたところでそう声を掛けておきました。
お食事が終わったら 今でお茶を飲みながらグレン様のお話を伺ってみましょうか。
デュラハン「愛らしいな」
アリアン 「愛らしいですわね」
デュラハン「抱き上げてクルクルしたくなるな」
アリアン 「私は抱きしめたまま眠りたいですわ」
デュラハン「む、それはズルくないか?」
アリアン 「私は同性ですし違和感はございませんでしょう?」ニッコリ微笑む
デュラハン「では添い寝くらいはよいであろう」
アリアン 「デュラハン様は異性でございますよね?」ニッコリ
デュラハン「むぅ・・・性転換してくるか・・・」真顔
アリアン・ゲイザー 「「落ち着け!」」
デュラハン「なぁアリアン、このなんともいえぬ気持が愛情とやらなのだろうか?」
アリアン 「かもしれませんね、なにやら温かいようなくすぐったいような」
ポッと頬を染める二人にゲイザーは突っ込みたかった
(それ愛情じゃないよ! 愛情ではあるけど父性愛に母性愛だと思うよ!
二人とも落ち着いてよね!グレンにドン引きされちゃうよ!)
あれ?二人が冷ややかに僕を見てる・・・
もしかして言葉にでちゃった?・・・(;゜ω゜)
「「ではゲイザーはどうなんだ!」」
僕? 僕は安定のペット確定でグレンの愛を独り占めさ!!
ゴンッ!!
三人(二人と1匹)の様子を遠くから眺めていたグレンは思う。
どんな会話をしてるのかは判らなかったけど、トリオ漫才かな?・・・w
ゲーザーくんの頭にタンコブみたいのが2つあるのは見なかった事にしよう。