2:よりにもよって?・・・
危なかしい・・・
グレンは屋敷へと向かう道を我の後ろから付いて来るのではあるが・・・
この暗闇に慣れておらぬのか、木々にゴンッとぶつかるは小石に躓いてズベッとコケるはで非常に危なかしいのだ。
ぬぅ・・・どうしたものか。このままでは歩みが遅すぎる。
あまり遅くなれば深淵の刻限となりスルーアやバンシーなどが湧いてきてしまう。
我に害はないが、グレンは奴らの格好の餌となるであろう。
あまり気乗りはせぬが、致し方あるまい。
「失礼する」
そう声を掛けてグレンを抱え上げる。
『ふぇっ・・・』
なんとゆう声をだすのだ・・・
「グレン殿は・・・歩く事に不慣れと見えるのでな・・・。
失礼かとは思ったがこの方が早いと思った次第だ・・・。
心地悪いやもしれぬが、しばし我慢して頂きたい。」
あ・・・!というような顔をしてグレンははにかんだ。
『お手数をお掛けします・・・・』
足早に道を進み屋敷への門をぐるり抜けると庭をフヨフヨと飛んでいたゲイザーが近寄ってきた。
なになに?と興味津々にグレンを覗き込んでいる。
これ、よさぬか。グレンが怯えるではないか。
眉間に皺が寄る。
だがグレンは意外な言葉を発したので思わず吹き出してしまった。
「ゴフッ・・・ゲ、ゲイザー、アリアンに風呂の用意をと伝えろ」
誤魔化す様に指示を出すとゲイザーはコクコクと頷き飛んで行った。
平気なのかとグレンの様子を窺えば、おや?こちらも興味津々な顔をしておるではないか。
ふむ・・・グレンの様な中つ国の住人は我ら闇の住人の容姿を恐れるのではなかった?・・・
そもそもが・・・闇の領域に入いれなかったはずでは?・・・
確か異世界から来たと言っていたような・・・
ふぅむ・・・訳ありであろうか。
だが本人にも状況がいまいち把握出来ていなかったように思われる。
だとすればこれからどうする?
まずは風呂に入れて着る物を与え食事をさせるか・・・
考えている間に屋敷に着いた。
玄関にはアリアンが出迎えていた。
「グレン、屋敷内ならば歩けるか?」
『はい、大丈夫だと思います。ありがとうございました。』
ゆっくりとグレンを下すとアリアンに声を掛ける。
「客人だ。浴室へ案内してやってくれ。」
アリアンは頷くとグレンの手を取り案内して行く。
少し進んだ所でグレンはこちらを振り返りペコンと頭を下げて、其の後アリアンと共に風呂場へと姿を消した。
その様子を見送り、我は台所へと向かった。
さて・・・中つ国の住人が口に入れても大丈夫な食材があったであろうか。
ライ麦パン・・・は大丈夫であったはず・・・
ボアの肉も大丈夫だった・・・はず・・・
狭間の湧き水も大丈夫であった・・・はず
どれも自信はないが・・・大丈夫であろう。たぶん・・・
パンをスライスし 肉を程度な暑さに切り分けて焼く。
水はグラスに注いで パンと肉を皿に盛りつけテーブルに運ぶと
丁度風呂から上がり 衣服を身に纏ったグレンがやってきた。
ほぅ・・・随分と小奇麗になったものだ。
「この程度の物しか無いが、腹も減っておろうから食べれそうなら食べてくれ」
そう言いながらテーブルの椅子をそっと引いた。
見えん・・・
眼鏡が無いのだ・・・
視力0.1の儂がこの薄暗い森らしき道をマトモに歩ける訳が無い・・・
まして靴もないから痛いのだよ・・・小石や枯れ枝が・・・
デュラハンさん(紳士っぽいので敬称を付ける事にした)によければ屋敷にきてはと提案され案内してもらっているので後ろを着いて行くも、さっきから木にぶつかったり石に躓いたりとなんとも情けない姿を晒しているのだ・・・
時々後ろを振り返るデュラハンさんは恐らくこちらを気遣ってくれているのだろう
うん、やっぱり紳士だ
そんなデュラハンさんに申し訳なく思っていたら、デュラハンさんが近寄って来た。
『失礼する』
そう言ってヒョイと抱えあげられてしまった。
「ふぇっ・・・」
なんとも妙な情けない声が出てしまったがそれも致し方なし。
此の方お姫様抱っこなどという物の経験がないのだから・・・
『グレン殿は・・・歩く事に不慣れと見えるのでな・・・。
失礼かとは思ったがこの方が早いと思った次第だ・・・。
心地悪いやもしれぬが、しばし我慢して頂きたい。』
いぁ違うんです歩けはするんです・・・
ただ眼鏡がないとですね視界がですね・・・
普段靴になれているので靴が無いと足裏がですね・・・
心地は悪くないです、はい。むしろ適度についた筋肉で引き締まった腕が・・・
ってそうじゃない!
あぁぁぁ、気遣われてしまった・・・さすがは紳士・・・。
「お手数をお掛けします・・・・」
うーん、この場合視線は何処へ向ければいいのやら・・・
取り合えず進行方向に向けておこう。ボンヤリとしか見えんけど!
あ、前の方にボンヤリ浮かんで見える白い建物がお屋敷なのかな?
なんか某有名アニメに出てくる真っ黒クロ〇ケみたいなのがフヨフヨ飛んでる!
かわい・・・い?
なんかデカイな、手のひらサイズだったら可愛いかも?
ん?でっかい目が・・・1つ?
サイクロプス? んな訳あるか!アレは巨人だし!なんだったけな・・・
思い出そうとしてる間にソレは目の前に迫っていて、見つめ合う形になっていた。
瞳は濃い紫なんだ、ウルウルして綺麗だねー。そして睫毛
「睫毛ながっ!フッサフサ!」
羨ましい、儂睫毛無いんだよね。
いやあるけど!一応はあるけどもっ!お情け程度の睫毛だけどもっ!
『ブフォッ』
デュラハンさんが吹き出した・・・
あ、最初の睫毛ながっが声出てた?・・・ハハハ・・・
率直な感想だし!悪い事じゃない・・・ハズ・・・
『ゲ、ゲイザー、アリアンに風呂の用意をと伝えろ』
笑いを噛みしめながら指示してるよね?・・・
肩プルプル震えてるよね・・・
儂 何かツボるような事言ったっけな・・・まぁいいや・・・
ん?デュラハンさんゲイザーって言ってたよね?そうだ!ゲイザーだ!
某ゲームで可愛いからって頑張ってテイムしたゲイザーくんだ!よかった思い出せてスッキリ!
なんて思ってたら到着したみたいでアリアンさんらしき人に出迎えられた。
しっかり者のメイド長みたいな印象の美人さんだ。
『グレン、屋敷内ならば歩けるか?』
見とれていたらデュラハンさんに声を掛けられた。
「はい、大丈夫だと思います。ありがとうございました。」
ゆっくりと下ろして貰い、自分の足で立つと少しだけ痛みが走った。
こりゃ思ったよりも擦り傷多いかも?・・・
『客人だ。浴室へ案内してやってくれ。』
アリアンさんがにっこりと頷いて手を差し伸べてくれた。
うん、きっとこの人がアリアンさんだ、他に人の気配ないみたいだし。
アリアンさんは儂の足を気にしながらゆっくりと浴室に案内してくれた。
初対面でいきなり家にお邪魔してしかも風呂までって、自分でも図々しいとは思うよ?
でもさ、気失ってて気が付くまで地面に転がってたんだよね?全裸で!
全裸・・・
頭の上を空いた手でパタパタと仰いでその言葉を追い払う。
きっと土埃まみれだよね?下手すりゃ枯葉だの枯れ枝だのの木っ端付いてるよね?
さっぱりしたいよね・・・・擦り傷とかも洗っておきたいし!
あ!お礼!
慌てて振り向いてデュラハンさんにペコンと頭をさげた。
言葉は咄嗟には出なかった、情けない・・・。
『お風呂のお手伝いさせていただきますね』
浴室に到着するとアリアンさんにそう言われた。
「へっ? いぁいぁ自分で出来ますので大丈夫です!」
『でもそんなにお小さいのですから、何かと大変でしょうし。
お怪我もなさっていらっしゃるようなので、どうかお手伝いさせてくださいな。』
優しく微笑まれたら断れないじゃないか・・・しかも怪我の心配までされたらさ・・・
ん? んん? お小さいって言った? いぁ儂小さくないと思うけど?
「あの・・・アリアンさん。鏡ってあったりますか?」
『はい、一応は浴槽の傍にございますよ。』
滑って転ばないように、気を付けながらアリアンさんと浴室へと入った。
そして浴槽の傍の鏡を見ると・・・
・・・
一瞬思考回路が止まった・・・
誰コレ? 儂じゃないんだけど・・・いぁ儂なんだけどさ・・・
正確に言えば元々の儂じゃぁない。
うーん、これはアレか?
某ゲームで使ってた斧キャラか?
それとも某ゲームで使ってた弓キャラか?
ってどっちもゲームキャラじゃん!しかもミニマム種の!!!
幼女じゃないよ!ミニマム種だよ!(ココ大事!)
マージーかーーー・・・
なんでこのキャラよ?よりにもよってミニマムよ?他にもあったじゃん!
エルフとかダークエルフとかオーガとか人魚とか獣人とかさ・・・
むしろ普通にヒューマンで作ったキャラだって居たじゃーん。
色んなゲームでいっぱいキャラメイクしてたじゃーん!
武器もしくはクラスで固定されて種族選べなくって作ったミニマム種
なんでよりにもよってコレになってるかなぁ・・・
あれか、これ儂は変にリアルな夢見てるのかな?
うんそうだ、きっと夢だ・・・
『あまり長く湯舟に浸かっているとのぼせてしまいますよ?』
アリアンさんの声と微笑みで意識が引き戻された。
あぁやっぱりこれが今の現実な訳ですね?ハハハ・・・(トオイメ)
気が付けばアリアンさんの手によって全身綺麗に磨き上げられて湯舟に浸かっていたらしい・・・
湯船からでた儂は丁寧に体まで拭いて貰って、傷の手当までして貰って
大きめのTシャツを改良しました、て感じのラフなワンピースを着させてもらって浴室を後にした。
さて、デュラハンさんと話をしなきゃな。
何をどう話そうかと考えてたら
クゥ・・・キュルルとお腹が鳴った・・・。
『ダイニングでお食事にしましょうね。』
優しく微笑まれて赤面してしまった。
あぁ、穴が在ったら入りたい・・・。
グレン「眼鏡ないと見えんのです・・・
近視なんです
乱視なんです
ろうg・・・ゲフンゲフン なんでもないです」
デュラハン「案ずるなグレン。
我も老眼だ。」
グレン「そこはサラッと流せ!パーンッ( っ・∀・)≡⊃ ゜∀゜)・∵.」
アリアン「そもそもデュラハン様の目は何処に?」
デュラハン「グフッ(*゜Д゜)・∵.」