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九十九邑我の物語

九十九邑我は帰還する

作者: 眞弥。

少し、後書きにお知らせをしてます。

「はぁ!?ありったけの魔石を用意しろと!?」


「あぁ。そうだ。とにかく大量に。それさえあれば、俺は元の世界に帰れる」



王との面会から時が経って。俺はこの世界に転移してから半年が経とうとしていた。

ある日、俺は国王に呼ばれたが、話を受ける代わりに魔石を提供する条件を最初に出した。



「…どういうことかね?ツクモ」



◇◇◇



『…僕は日本からの転生者なんだ』


『そうか。何となく、関係者じゃないかとは思っていた』


『…いつから?そんな素振り見せたかな?』


『言葉の節々に日本語を感じていた。特に大暴走(スタンピード)の時だ。この世界に寝首をかくなんて言葉は無い』


『あっ…そんな凡ミスしてたか。はは…大体皆気にしないんだけどね。でも、それなら僕からも一ついい?』


『何だ?』


『邑我ってさ…本当に人間?別に変な意味じゃないよ。ただ、転移者にしては随分とこの世界の事を知ってるように思えてね』


『…俺は日本に転生し、この世界に転移してきた元々この世界の住人だ』


『…なるほどね。だから戦い方が分かってたのか。前世は人間?』


『いや、魔族だ。魔力が多いのも、それが理由だと思っている』


『…凄いね。そんなことあるんだ。じゃあ、この世界の失われた歴史や魔法も知ってたりするのかな』


『何だ、それは』


『この世界の歴史は、今の文明が作られる直接的な因果ぐらいしかしか分かって無いんだ。だから、()()以前の事はそこに至るまでの僅かな事しか知られていない』


『…悪いが専門外だ。俺はそこまで古い時代を生きていない』


『そっか。引き止めて悪かったね。また、話せると良いな』


『時間があればな』



◇◇◇



あれから、王族の御目通り等が終わって、いっその事繋がりを最大限使う事にした俺は比較的短期で戻る方法の手掛かりを見つける事が出来た。


王宮の禁書庫でそれらしき記述を見つけたのだ。



-とある魔女が転移魔法を使用し、世界から姿を消した。が、その数十年後、その魔女だと名乗る人物が現れた-



これが事実なら、この魔女は時間軸を飛び越える事に成功したという訳だ。

普通なら、笑い話だろうが信じるに値する理由がある。それはこの本が禁書庫に有ることだ。


フィクションならば、そういうものだとすればいい。若しくは、この本から記述を削除すればいい。

だが、そうしなかったのはこれが実際に起きた事だからではないだろうか?


時間軸を飛び越える事が出来るなら、空間軸を飛ぶことも出来る筈だ…俺はそういう結論に至った。



「…とにかく莫大な魔力が必要だ。魔力の元になるものを集めないと」



◇◇◇



「…という訳だ。実験の為に大量の魔石が要る。用意してくれ」


「なっ…そういうことか…相わかった。だが、今我らもとんでもない事が判明しているのだ。貴殿を呼んだのはその為だ」


「なんだ?今度は何が起きてる?」


「…魔力を帯びた隕石が近づいている」


「なんだと。それは確かなんだな?」


「あぁ。最近魔物や魔獣の動きが活発化している。それだけじゃない。気付かないかね?」


「…魔素濃度が高いな」


「そういうことだ。魔石の提供が出来ない訳では無い。だが、それ以前の問題なのだ。手伝ってくれるか?」


「…まぁ、構わない。どれくらいの大きさだ?」


「…そのままの大きさで落ちれば、この国は終わるだろう。王都の半分が壊滅すると予想されている」


「拙いな…。俺も助っ人を連れてこよう」


「本当か!!有り難い!感謝するぞ、ツクモ殿!」



◇◇◇



翌日、イバンツィオよりアラン、ノエル、ロイドが招集される。

王城の一室を借りて話をする。



「悪いな、急に呼んで」


「仕方ないだろう。この国の危機だ。俺でよければいくらでも力を貸そう」


「またユーガさんとご一緒出来るなんて光栄です!」


「邑我…僕なんかでいいのか?」


「同郷の人間として、お前を信頼してる。頼むぞ」


「…ありがとう。期待には応えてみせるよ」


「ツクモ先生〜!」



遠くから、俺を先生扱いする声…

あいつだな…



「シルヴァン…お前、ここに何しに来た?」


「そりゃぁ勿論…先生の手助けに!」


「馬鹿野郎!」


「いったぁ!?何するんですか!」


「お前がここに居て良い訳ないだろう!帰れ!」


「お、おい…ユーガ…そちらの人は?」


「申し遅れました。私は、オーガスティア王国王太子、シルヴァン·オーガスタと申します!」


「「「うわああぁぁぁぁぁ!!!!」」」


「え?」



そりゃあ周りの反応はそうなるだろう、シルヴァン。もっと王太子の自覚を持て…お前はこんなとこに居る人間じゃないんだぞ?



◇◇◇



「なんだ、急に喚いて。こいつが王太子なのがそんなに…」


「わぁわぁわぁ!!何してる!王太子様の頭を叩くな!」


「俺は良いんだよ。なぁ?」


「はい!先生は僕の恩人ですから!」


「ユーガ…お前、イバンツィオを離れている間に何が…」


「話すと長いから、これが終わったら教える。俺も忙しくてな。戻る暇が無かった」


「そうか…これが終わったら戻ってくるのか?」



俺は返答に困ってしまった。この作戦が成功すれば、俺は魔石を手に入れ、長くないうちに地球へ帰ることになるだろう。だが…2つの世界を行き来するのも、悪くないのかもしれない。



「…分からん。旅を再開させるかもな」


「…ッ、そうか。それはお前の自由だからな。なら、それを応援するまでだ」


「あの…話してるとこ悪いんすけど、隕石について考えませんか?」


「ノエル…そうだな。本当はもう少し欲しいところだが…」


「あてはないのかい?」


「…あいつを参加させるか。本当はイバンツィオに居た時に一度見かけた奴も良いと思ったんだがな」


「誰それ?」


「一人は大暴走の時の妖魔のあいつだ。もう一人は、その時にはもう街に居なかった」


「…そっか。じゃあ、彼女は僕が連れて来ようか?」


「いや、これが終わったら俺が行く。まだ隕石が来るまでには時間があるからな」


「分かった。それで、僕達は何をすれば?」


「その前にシルヴァン、お前は帰れ」



まるでそのまま参加する雰囲気を出しているシルヴァンに、俺はそう告げる。



「何故ですか」


「王太子が戦いの第一線に出ていい訳が無いだろう。この国の危機なんだぞ?」


「ですが、隕石を何とか出来なければ、この国は終わります。僕も共に出るべきだと思います」



こりゃもう俺が折れた方が楽だな…



「…分かった。但し、国王の許可をちゃんと取ってこい。いいな?」


「はい、そう言うと思って取ってあります!こちらを!」



あの国王は…せっかく危機が去ったってのに、何故息子を戦いに参加させる?何々…


-私も反対していたのだが、ツクモ殿が居るなら、息子も安全だろう!という訳で、シルヴァンを頼むぞ!-


あいつ…破り捨ててやりたいが、こんな一文添えやがって…


-注釈 この手紙を故意に損傷、または紛失した場合、何らかの罰則を与えるものとする-



「…分かった。お前も頼むぞ」


「はい、お任せください!」



はぁ…前途多難だ。来るまで後3日。今日中にあいつを連れてくるとするか。



◇◇◇



その後、アラン達に隕石破壊の為の人員であることを説明し、作戦を伝えた俺は、イバンツィオの森にやって来ていた。



「…またここに来ることになるとはな。よし、行くか」



俺は森に入ると、まず、中の集落を目指す。



「ここか。ここに来たのはあの時以来か。久しぶりだ」


「あれ、ユーガさん、久しぶりじゃないですか!来られてたんですね!今日はどうしたんです?」


「あいつを呼びに来た。長に話がしたい」


「分かりました。では、私が案内しますね」


「頼む」



暫く歩くと、長の住居に到着した。



「では、私はこれで」


「あぁ、助かった」



俺は扉を叩く。すると、中から声が届く。



「お待ちしていましたよ」


「久しぶりだな…長老」


「ふふふ…えぇ」


「早速だが、本題に入らせてくれ。あいつは何処だ?」



この集落は、皆が呪いを抱えているらしく、ここに入れる俺もどうやら持っているらしい。

というよりは、呪いを持った者達が集まって出来た集落なんだそうだ。

張ってある結界も、最初にここを作った者が張った物だとか。



「あの子は村の外れに居を構えております。居なければ、中で修練に励んでいるものかと」


「そうか。助かる」



集落の郊外にやって来た俺は、魔力探知であいつを探す。



「あそこか…随分成長したな。よう」


「ユーガ!何故ここに!?」


「お前に用があってな。参加するならここから出してもいい」


「…話を聞かせろ」



俺は、大暴走の際に何者かに操られていた狐の妖魔、ウルルに今回の話をした。


彼女は人間の国を助ける事に懐疑的な様子だったが、イバンツィオに移れるという事に納得し、最終的には参加が決まった。



「いいか。ちゃんと約束は守れよ」


「勿論だ。俺もこの作戦に今後がかかってるんでな」


「ならいい。ほら、行くぞ」



そう言って手を差し出してくる。こいつには俺でも外せなかった生来の呪いがあり、この結界を出るには俺と触れていなければいけないのだ。



「面倒だから飛ぶぞ。『転移』-センターギルド-」



転移魔法であっという間にセンターギルドの目の前に俺達は転移する。



「…相変わらず早いな。私も見習いたいものだ」


「お前は自分のスキルを磨け。やることがあるんだろう」


「あぁ。今はまだ時間があるからいいが、いずれは力をつけて戻らなければならない。これもさっさと終わらせるぞ」


「取り敢えず、王城へ行くぞ」


「分かった」



◇◇◇



4人の待機している部屋に戻ってくる。シルヴァン以外は久しぶりの顔に驚いていた。



「見かけるのは久しぶりだな。何処に居たんだ?」


「イバンツィオの近くに森があるだろう。そこで修業していた」


「そうか。じゃあ、6人で隕石を破壊するのか?」


「まぁ、主にはそうだな。王国軍には魔力供給元として、参加してもらう」


「なるほど。アランだ。今日は宜しく頼む」


「人間と馴れ合う気は無い。こいつとの契約で手伝うだけだ」


「ま、まぁ…頼んだぞ」


「で、これからどうする?」


「お前達に魔力放出の仕方を教える。それが隕石破壊の手だ。国王に軍の訓練場を空けてもらった。今から始めるぞ。ロイドは大丈夫だよな?」


「そうだね。出来るけど、見させてもらおうかな」


「そうか。好きにするといいさ」



◇◇◇



俺達は訓練場に移動すると、見学しているロイド以外に模擬戦を行わせる。



「ただ今より、魔力放出の訓練を始める!準備は良いな!」


「それはいいが…何故、俺達はいきなり模擬戦を?」


「それはな、先ずは魔力に慣れる必要がある。そうする事で魔力操作もしやすくなる。迷宮(ダンジョン)に潜った時にスキルを早く習得出来ただろう。それはお前達二人が既に身体を動かしていたからだ」


「それは分かったんですけど…今からで間に合うんすか?」


「間に合わん!」


「へぇ…え?間に合わないんすか!?」


「3日だぞ?間に合わない、普通ならな」


「という事は…間に合う方法がある?」


「取り敢えずはお前らの体力を限界まで削る。さっさと続きだ」


「まじっすか…」



それから4時間以上に渡って模擬戦を総当たりで行わせた。

皆が気絶する寸前までいった所で、ようやく魔力放出の訓練を始める。



「よーし、魔力放出の訓練を始めるぞ!起きろ、お前ら!」


「はぁ、はぁ…嘘だろ…前もこんなに凄かったのか…?」


「いや…これ程では、なかった…ロイドのやつ…呑気に見学しやがって…!」


「やっほ〜」



ロイドは呑気に手を振ってアランの視線に答える。

随分呑気なもんだ。後数日で戦いだぞ…?



「お前もやるか?」


「僕はいいよ。もう出来るし〜」


「…ほら、立て。円を作るぞ」



俺達は手を合わせ、円になる。

俺は魔力同調を行う。



「これは…」


「今、お前らの魔力は俺の魔力と同質の気を帯びている。これで俺の魔力を実感してもらう。もう手を離して大丈夫だ」


「これが…先生の見ている世界…」



ほう、シルヴァンは筋が良いな。自分の魔力の流れが見えているか。これはもっと鍛えれば、他人の魔力回路も見える事だろう。



「良いか。俺の魔力の流れを見るんだ」



俺は両手を上空に向け、魔力を集中させる。そして、掌から純粋な魔力を放出させる。



「お前らには、これをやってもらう。いいな?」


「…まじか。これを俺達が…」


「先ずは魔力操作に慣れろ!魔力の流れを感じ取るんだ!アランとノエルは前にやったよな。後はそれを外側に一先ず出せれば第一歩だ。そしてそれを極めてもらう」



結局、この日は魔力操作を習得し、終わった。アランとノエルも、今回は流石に直ぐに習得とは行かなかった。


そして、刻一刻と時は迫り…



◇◇◇



「見ていろ、ユーガ…これで、どうだぁっ!!」


「アラン、明日は頼んだぞ」


「あぁ、任せろ!」



とうとう明日に迫った今日、アランが習得した。

この2日間はロイドも指導に周り、教えていたが、如何せん放出が出来ても、威力が出ない。


ウルルとシルヴァンもある程度出せるようになっているが、まだ威力が弱い。

特にまずいのが、ノエルだ。未だに低度の放出しか出来ていない。



「うぅ…まずいっすよね…」


「あぁ、流石にまずいな。だから、俺と一緒にやるか。ロイド、シルヴァンとウルルは頼んだ!」


「オッケー」


「お願いします…」


「もう一度魔力同調をやる。今度はそのままの状態で放出を行うぞ。手を握ったままでやるから片手で出せればいい」


「分かりました」


「お前は魔力の流れは掴めている。それを外に出す事を想像出来ていないだけだ。というか、お前は魔法を纏って戦うよな?それを魔力そのものに置き換えるだけだ。出来ないか?」


「…やってみます」


(魔法を纏うように…魔力を放出する…魔法を、出す…!)


「良いぞ、そのままだ。一気に手に魔力を集めろ!」


「行きます!」



ノエルの左手から、魔力の塊が放出される。



「やったじゃないか!それだ!出来たぞ!」


「出来たんすか…良かったっす…」



シルヴァンやウルルも特訓中ながら、思わずこちらの方に視線が向く。



「おぉ…凄いな…一気にそこまでか…」


「ウルルさん!僕たちも頑張りましょう!」


「あ、あぁ。…お前達は私に対して普通だな…」


「普通じゃないのが普通な人が、そこにいるからね…」



なんだよ…3人揃ってこっちを見るな!



「僕達は偏った目では見てないつもりだよ」


「……お前達のような人間が多いと、私達も生きやすいのだがな」


「どうして?」


「…我等妖魔は魔物の仲間でありながら、人に近い姿をしている。そして人では無く、魔族とも違う。半端な存在なんだよ」


「…僕も似た思いをしたことがあるよ。この世界の人間なのに、拭えない違和感…それは今も持っている。でも、何処にも属さなくても良いっていう考えは駄目?君達妖魔が独立した種族であれば良いんじゃないかな?」


「…考えた事も無かった。何でもない種族で、神の失敗作だとばかり…」


「ウルルさん、この国に一族で越してきませんか?僕たちは受け入れますよ?」


「…ありがとう。流石に他の奴らは人間に良い感情は持ってないだろう。もう少し、妖魔が変われたらその話、考えてもいいか?私が変えてみせるから」


「…分かりました。お待ちしてますね」


「さ、やろうか。少し話しすぎたね。二人も後少しまで来てる。頑張ろう」


「よし、やるか!」



その後、二人も習得に成功し、遂に隕石がやって来る日の朝を迎えた。


王都に結界を張っているから、破壊しても街に被害は出ないだろうが、万が一ということもある。絶対に失敗出来ない。



「とうとう朝だな…」


「アラン…悪いな、こんなことに付き合わせて」


「構わんさ。お前ともう一度戦えるならな」



そして、隕石がやって来るまで、後数時間に迫った。



「お前ら、もう長いことは言わない。今日は頼む!」


「おうよ!」


「任せてください!」


「作戦の成功、信じてるよ」


「…お前の力は信頼している。今度はそれに応えよう」


「先生の手伝いが出来て光栄です!」



遂に目視出来る程に迫っている。俺達は訓練場にて待機し、集まっている。



「この結界…魔力で割れないっすよね?」


「これは物理結界だ。単純な魔力の塊はすり抜けるから安心しろ」


「さ、もう来てるよ。始めよう」


「よし…5人、始めてくれ。ウルルは魔力強化を周りに使いながら頼む」


「あぁ。頼まれた仕事は完遂しよう」


「魔力を溜め始めろ!上空500Mに到達したら一気に放出させるんだ!」



5人が魔力を溜めていく。

それぞれの後ろには魔力供給担当として、俺が魔力同調させた軍の人間が各6人程付いている。



「後50…30…20…10…来た!行け、お前ら!!」



「はあぁっ!!」


「やあっ!」


「それっ!」


「ふっ!」


「行っけぇっ!」



一点を狙った5人の魔力が隕石のスピードを一気に落としている。


それどころか、当たっている部分が少しずつだが、砕けている。

予想以上の成果だが、これではいずれ結界にぶつかり、直撃だ。やはり、最終的な止めは俺が行うしかないようだ。



「浮遊魔法…やはり好きじゃないが、そんなことを言ってる時間はない。やるか」



俺は飛び上がり、隕石の間近まで迫る。



「あいつらが隕石を止めている今のうちに、破壊しないとな」



この作戦では外部を攻撃する魔力放出だけでは足りないが、後の為に、内部は破壊出来ない。

つまり…反対側から揺らして外部だけを崩さなくてはな。



「-魔力衝撃波-」



これは昔、俺が魔族の時に開発した技だ。この隕石と同じよう状況に陥った時があった。これで外部だけを崩壊させ、中の者を無傷で助けた時があったのだ。


隕石が崩壊していく…よし、念話で伝えるか。


(ロイドか?皆に後10秒保たせるんだと伝えてくれ)


(分かった。伝える)


「皆、後10秒だけ耐えてくれ!そうすれば僕達のやることは終わりだ!」


-了解!!-



◇◇◇



遂に核が姿を現したか。これだけ崩れれば問題無い。後は素手で止められる。


俺は隕石の核を受け止めると、そのまま浮遊を続け、一先ず、向こうの山に飛び立つ。



「邑我…これは借りだからね…」



核を遠くに移した後、俺は皆の居る所へ戻ってきた。



「全く、お前はとんでもない奴だな。まさか街への被害は0、負傷者等も無しだ。まぁ…軍の奴らが気絶しているが」


「それで済むなら、安いもんだろ」


「ツクモ殿!」



国王が走ってやって来る。ぜぇぜぇと肩で息をしながらも、こちらを見てくる。



「此度のこと、誠に感謝する。貴公が居なければ、この国は滅んでいたであろう」


「俺だけがやった訳じゃない。いろんな奴らの手助けがあったからだ。そこで寝てる連中もな」



かなりの軍の人間が魔力供給に携わってくれた。

こいつらが居なかったらアラン達もここまで足止めすることは出来なかっただろう。



「そうか…息子も何かの役に立っていたか?」


「あぁ。お前の息子はこの国を変えてくれるんじゃないか?」


「なら、良い事だ。よくやったぞ、シルヴァンよ」


「父上…ありがとうございます!」


「よし、じゃあ俺はこれまでだ。一旦この場を離れさせてもらう」


「なっ…国を上げて礼を…」


「そう云うのは柄じゃない。シルヴァン、お前に教える事はもう無い…とは言わないが、一先ず、自分で考えてみろ。次に会った時、成長を見せてくれよ?」


「…はい、分かりました。一番弟子に恥じないものをお見せします」


「アラン、ノエル。今まで世話になったな。これが永遠の別れって訳じゃないが、一先ず最後だ」


「…お前の決めた事だ。俺達がどうこう言っても譲らんのだろう?なら、その言葉を信じるとしよう」


「ユーガさんとご一緒出来て、光栄でした!次はもっと成長した姿を見せたいと思います!」


「ロイド…お前も来るか?」



一応聞いてはみたが、やはりロイドは首を横に振る。



「大丈夫。僕はもうこの世界の人間だからね。それに…また、来るんだろ?」


「…あぁ、この世界も気に入ってるんでな。それと、ウルル…」


「その名で呼ぶな、恥ずかしい!…なんだ?」


「このまま好きにしていい。戻って戦いに行くも、こっちで鍛錬に励むにも自由にな」


「礼は言う。ありがとな」


「それじゃあ、一先ずお別れだ!またな!」



俺は浮遊魔法で飛び上がり、皆に背を向けると、先程の核の方へ飛び立つ。


俺は今なら空間軸、時間軸を好きに出来る、時空間魔法を行使出来る予感があった。予感でしかないが、確信している、確かな予感だ。



「-魔力同調-」



俺は核と魔力同調を行い、自分の魔力と同じものにする。

有機物は同質の気に変化させることしか出来ないが、無機物であれば同じものにすることが出来る。



「行くぞ…-時空間転移魔法-発動!」



周囲があの日、ここに来た時に通った道と同じものに変貌する。

これだ。まさか空想で思い描いていたものが実現出来るとは。


戻るのは…あの日の夜にするか。それが一番楽だろう。

これは、始めてここを通った時以上に長く感じた。


光が…見える!あの先がそうだ!



「ここは…」



そうだ。あの時通った抜け道だ。入った時と同じ場所に出られたぞ!


思わず俺は駆け出す。半年振りの地球だ。故郷だ。

かつてはあの世界が故郷だった。だが、今はこの地球が俺の故郷なんだ!



「ただいま!」


「あ、お帰り。学校から連絡来てたよ…何、その格好」


「え?」



あ、あっちの世界の服のまま帰ってきてしまった。

ま、良いさ。服ぐらいどうにでも…



ドオォォォォン!!!



なんだ、今の音は―



「…嘘だろ」


「うわ、すご。何この大岩」


「お前も来たのか…」


「…何の話?」



◇◇◇



「…超高濃度の魔力が発動して、消えた…。行ったっぽいね、邑我」


「ユーガさんはどこいったんすか?」


「少し、帰りたくなったんだって。また来るよ」


「あいつのことだ。またいつの間にかイバンツィオに居るかもしれんぞ?」


「…そうですね」


「よし、ノエル、俺達もイバンツィオに帰るとするか!ミラも待ってることだしな!」


「はい!それじゃ皆さん、お世話になりました!またあ逢いしましょう!」


「二人とも、僕も一緒に行くよ」


「お主らもそのまま帰るのか?褒章や礼を出すぞ?」


「いつもとやってることは変わんないので。それに、名誉が欲しい訳じゃ無いので。ユーガさんの力になりたかっただけなので」


「そうか…オーガスティア王国国王、マーヴィン·オーガスタは貴公達への感謝を永遠(とわ)に忘れぬと、ここに宣言しよう」


「私が居てもか?」



ウルルが見定めるような目で国王を見つめる。



「勿論だとも。国の危機に種族が違えど救ってくれた。そこに種族の違いなど、関係あるまい」


「そうか…貴方は良い王だな」


「救世主にそのようなことを言われるとは、光栄だな」



その後、オーガスティア王国の歴史書に刻まれる六英雄。これが、最初の功績であった。


ここからの彼等の人生は、まだ、誰も知らない。

お久しぶりです。眞弥。です。

まずは1日に出すとお知らせしていたのに、遅れてしまい、本当にすみません。

いくつか同時進行で書いていたので、遅れました。


そしてお知らせします。

これにて短編での掲載を終わり、連載にします。

理由としては、この前後の話も書きたくなり、連載の方が良いと思ったからです。

とりあえず、これを掲載後、短編を連載に載せます。

Lost Fantasiaは8日更新予定です。


閲覧ありがとうございます。

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