表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
竜騎士の溺愛 〜竜に転生した私の愛されすくすく成長記〜  作者: 采火
竜騎士編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

53/62

竜王の雛1

 私の幻を応用したドラゴンブレスにゲイルが気を失い、床に倒れこむ。

 アロイスは目を閉じていたみたいだけど、そろりと目を開けて、ゲイルを見下ろした。


「ルイズ……? 今のは?」

「んふふ、ルイズの必殺技!」


 大丈夫安心して、燃やしてはいないから!

 あれだよ、あれ。ほら、お披露目会のときに花吹雪やったみたいな!

 ドヤ顔すれば、アロイスが苦笑して、ベランジェが呆れたように息をついた。


「アロイス、お前の相棒、とことん規格外だな……」

「あはは……」

「それより、お仕事まだ終わってないから! ほら、そこの竜攫い捕まえて!」


 アロイスの視線を促せば、腰を抜かしたトゥーサンが、恐ろしいものを見たような表情でこちらを見ていて。


「な、なななんですか今のは……!? ブレスですか!? なぜ燃えていないんです! なぜゲイルは倒れているんですか!? 何をしたんです!?」

「言ったじゃん、私、怒ると何するか分からないよって」


 トゥーサンに言ってやる。

 アロイスが、戦意喪失したようにうなだれたトゥーサンに近づいた。

 これで、終わりかな。

 ほっと息をつく。

 首謀者が捕まれば、これでおしまい。

 竜の渓谷にも平和が訪れるはず。

 私も気をゆるめる。

 これで、帰れる。

 そう、思ったのに。


 ――パァンッ!!


 破裂音。

 アロイスが振り返る。

 彼の脇腹が、赤く、染まる。


「おちょくってんのか、アァ!? 何がブレスだ!? ただの目くらましか!? クッソ、こんなもんで気ぃィやった自分が情けねェ……!」


 叫ぶのは、気絶したと思っていたばかりのゲイル。

 その手には、銃が。

 そっか、大砲があるくらいだ。銃だってあってもおかしくない。

 おかしく、ないのに。


「アロイス! いやっ、アロイス!!」

「ハハハッ、よくやりましたゲイル!! 貴方にその武器を渡しておいて正解でした! 貴方ならやると思っていましたよ!!」


 トゥーサンの高笑い。

 火薬の匂いが、鼻につく。


「アロイス、おいアロイス!! テメェ、ゲイル、見損なったぞ!? それでも騎士の端くれか!?」

「うるせぇ!! んなもん知ったこっちゃねぇ! この世は弱肉強食。殺したら強者、死んだら弱者なんだよッ!!」


 ベランジェが怒鳴れば、ゲイルも怒鳴る。

 その間にも、脇腹を抱えて膝をついたアロイスの額に脂汗がしたたる。


 どうしよう。

 どう、しよう。

 このままじゃ。


 このままじゃ、アロイスが死んじゃう。


 ゲイルがもう一度、拳銃を身構えた。

 焦点はアロイスに向いている。


『やめて』


 るる、と誰かの声。


『やめて……っ』


 るるる、と弱々しい声。


『やめて――――――――!!』


 私の声に感応した精霊たちが集い始める。

 ざわざわと狭い船室に、息苦しいほどの精霊たちが集まれば、異様な空気になったのを誰もが察知したのか、誰もが身を固まらせる。


『いい加減にして!! アロイスを殺さないで!! 私の大切な人なの! なんでそんな酷いことするの!!』


 私の咆哮に感化されて、精霊たちがアロイスを包みこむ。

 アロイスは驚いた表情で私を見た。

 ごめん、アロイス。

 わたし、とまらない。

 とめられない。


 船が大きく揺れた。

 ぐわん、ぐわん、と揺れる。

 アロイスもベランジェも、トゥーサンもゲイルもナルシスも、大きく揺れた船体で立っていられずに膝をつく。


「アロイス、ベランジェ! いるか!」

「ウスターシュ先輩!」


 部屋に駆け込んでくる一つの影。

 見知ったその影に、ベランジェが声を上げて。


「外がヤベェ! 嵐になってやがる!! 竜に乗れ! 卵は全部運び出した! ルイズがいるなら、船に捕まってる竜に声かけさせて、連れて行ってくれ!」

「いや、それどころじゃねぇ! アロイスがやられた!」

「なにっ!?」

「い、いや、平気だ。先輩、ウスターシュさん、大丈夫」

「大丈夫じゃないだろうが! お前、その血!」

「うわっ、ほんとだ! くっそ、アロイス誰にやられた!?」


 竜騎士三人が怒鳴り合う。

 その間にも、ゲイルは体勢を立て直そうとした。さっきの揺れで手放してしまったらしい銃を拾おうとするけれど――そんなこと、させるわけないじゃん。


 私が何も言わずとも、私がこの悪い男をどうしたいのか、精霊にはお見通しらしい。

 みしり、と船が軋む。

 私はさりげなく、火竜(レッドドラゴン)の雛を抱えた。

 それからアロイスを反対の手で掴み、ベランジェを尻尾でくるんで、ウスターシュを咥える。


「「「は??」」」


 大の大人の三部合唱。

 でもごめん、答えてる暇はない。

 ギジリ。

 船はもう限界。

 海にたゆたう精霊たちに潰されて、船艇に穴が空き、海水が流れ込んでくる。


「なっ、ぐ、あぁ――!」

「助けてくれ――!」

「あぁぁ――――」


 私はその場で羽ばたいた。

 精霊たちが屋根をぶち破ってくれる。

 その穴から、飛翔する。


 海は荒れ、晴れていたはずの空には雷雲が立ちこめていた。

 まるで、私の心の中を表すように。


『竜王の雛よ。気がすんだのであれば、鎮まれ』


 どこからか、潮竜(シーサーペント)の長老の声が飛んできた。

 気がすむ?

 すむわけないじゃん。


 私はぽいぽいっとベランジェとウスターシュを離した。それぞれ相棒の竜たちがうまく拾ってくれる。

 火竜(レッドドラゴン)の雛とアロイスを抱いて、私はもう少しだけ飛翔する。


「ルイズ!! ルイズ、どうしたんだ! どこまで行くつもりだ!」

『アロイスが傷つかないところ』


 るるる、と声がする。

 船の真上にまで飛んだ私は、船を見下ろした。

 シュミット帝国の紋が刻まれた甲板。

 私たちを、竜を、アロイスを傷つける、悪い国の象徴。


『――そんなもの、要らないんだよ』


 そうぼやいた瞬間。

 精霊たちが私の怒りをかき集めたかのように、つんざくような雷轟を船へと突き落とした。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ