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はじめての竜1

 ぽっかりと目が覚めた。

 真っ暗だった。


(んん、狭い……えぇ、なにこれ壁? 狭くない?)


 もぞもぞ動いてみる。手をのばすと直ぐ側に壁があって、それより先には行けない。

 背中にも壁があるし、なんなら自分が箱のようなものに丸まって入ってるのが分かった。


(えっ、ちょ、どういうこと??)


 直前までの記憶を掘り返してみる。

 なんでこうなってるのか、意味分かんない。


 たしか、昨日は大学に行っていた。恋人のいない寂しい女子大学生の私は、普通に授業を受けて、友達とランチして、ちょっと図書館でレポートを書いて……夜からバイトだから、電車に乗って……


 そこで思い出す、そう、電車。

 電車に乗ろうと、改札に入って、ホームに入って……誰かに突き飛ばされた。

 それがちょうど、停車する電車の前で……


『もしかして私、死んだ?』


 ぼそっと呟く。

 どこからか、ピピピピィっと聞こえた。

 箱の中で反響するようなその音に首を傾げる。なんの音? というかさっきから体勢が悪いのか、お尻のあたりになにかあって座り心地も悪いし、背中もなんだか、物が挟まってて邪魔。

 もし仮に死んだとして、自分が今箱詰めされてる状況になる理由がわからない。

 いや待った、箱詰め?


『待って私、これ、棺桶!? ちょっ! 火葬される!!?』


 ヤダヤダヤダ!

 冗談じゃない!!

 自分、死んでないですよー!!


 慌ててここから出ようと、めちゃくちゃに腕を振り回した。なんかごろんと箱ごと転がった。この箱? 丸い?


「**、**********?」

「*? ***?」


 箱の外から人の声?

 でも話してる言語は日本語じゃない。何語。待って、自分の葬式に出るような人間に外国人の知り合いなんているんですか!?

 もうパニック。半泣き。とりあえずここから出してほしい。

 カツカツ音を鳴らしながら、箱からの脱出を試みるけれど、なかなかうまくいかない。密閉されているのか、隙間の一つも見つからない。

 これじゃあ火葬される。蒸し焼きだ。せっかく一命を取り留めたのに、大好きな両親によって殺される。

 これ、恨んでても許されるよね?? 火葬ってどれだけ苦しいのだろうか。どのタイミングで燃やされるのだろうか。魔女裁判の火炙りって言葉が脳裏に浮かぶ。シャレになんない。

 絶望の縁に立たされながらも、とにもかくにも外にいる人に気づいてもらえるように箱の中で暴れまわる。ごろんごろんごろん。この棺桶、やっぱり丸い? うちの両親は一体どんな棺桶に娘をぶち込んだの?


「********! ********?」

「****************。******?」

「****、*******。***********」


 やっぱり聞こえる人の声。

 お願い気づいてと、壁を殴る腕に力をこめる。

 ガツン。

 確かな手応え。

 かすかな光。

 そこからはもう簡単だった。

 お煎餅が割れるように、ゆで卵の殻をめくるように、面白いくらいにばりばりと壁が崩れていく。

 ようやく箱が壊れた先で見つけたのは。


「*****! ****!」


 無造作にハーフアップにされた、きらきらと輝く銀の髪。

 まるでつるりとしたアメジストのように綺麗な紫の瞳。

 そしてお日様のように温かい、満面の笑顔。


『わぉ、テライケメン』


 ピピピィ、と、どこからかまた何かの鳴き声が聞こえた。



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