45.熱を帯びて
寿司もなくなり、酒もほとんど尽きた。
「ふー……」
フィリアは椅子に深く腰掛ける。ちょっとはしたないかもだけど、ジウスの前でならいいだろう。
「ずいぶん飲んで食べてしまったな……」
ジウスが水の入ったコップを手に持ち、唸っていた。さすがに彼も色々と限界らしい。
「ええ、もう食べられません」
酔いはどうかというと、そこまででもなかった。軽く宙に浮く感覚と少し頬が熱い程度だ。むしろ食べた量のほうが問題だった。
こんなに食べることはほとんどない……明らかに食べすぎたのである。
「でもネタをローテーションすることで意外と食べ飽きませんでしたね」
「ああ、そうだな……。あと数種類いいネタがあれば、さらに全体も引き締まると思う」
ジウスが水を一気に飲んでコップを置いた。
「……そろそろ私は帰るよ。少し飲みすぎた」
「はい、長時間ありがとうございました……!」
ジウスが立ち上がり、食器をキッチンへと持っていく。そのまま洗おうとしたジウスをフィリアは慌てて止めた。
「あっ、置いてもらえれば……!」
「いいのかい?」
一国の宰相に洗い物をさせるほどフィリアも図太くはなかった。
「これほど飲んで食べたのだから、と思ったけど」
「大丈夫です、きちんと私がやりますので」
屋敷ではジウスも使用人にやってもらっているだろうが、どうやら自分でやりたかったらしい。
フィリアも立ち上がり、ジウスを見送る。
「私も少し休んだら就寝します」
「ああ、今日は……楽しかったよ」
ほろ酔いのせいだろうか。ジウスの瞳と頬がやや赤い。多分フィリア自身もそうだろうとは思いつつ。
本当はもっと一緒にいたいが、ジウスには明日も朝早くから予定がある。引き止めるわけにはいかなかった。
フィリアがそっと腕を広げる。
「あのぅ……」
「ふふっ」
それだけでジウスは察してくれたらしい。優しく腕を回され、抱きしめられる。
温かい。アルコールでお互いに体温が上がっているせいだろうか。
「んぅー」
そのままハグを続ける。普段なら絶対にこんなことはやらない――というか、できない。でも今だけは特別だった。
どれくらいの間、こうしていただろうか。
「また来るよ」
「……はい」
頭の中がふわふわしていたフィリアは素直にジウスの言葉を受け取り、彼を見送った。
ジウスが王宮へと向かい、やがて夜の闇で背中も見えなくなる。
「はふー……」
フィリアはテーブルに腰掛け、熱を帯びる頬を揉んだ。まだ色々とやるべきこと試すべきことは多い。
しかしジウスと一緒なら、なんとかなる気がした。
……。
それから数週間が経ち、料理勝負の日を迎えた。
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