37.寿司実食
「これで完成です……!」
フィリアは東方料理の本を思い出していた。形も醤油もこれで良いはずだ。残った材料でいくつかサーモン寿司を作り、まな板の上に置く。
「なるほど……変わった形式だね。ウィード王国ではまず見かけない」
「ええ、そうですね。東方ではかなり人気があるようですが……」
ふたりはじっと寿司を見つめた。見れば見るほど変わった料理である。とはいえ醤油と酢飯の香りが食欲をかきたてるのは間違いない。
「では、さっそく食べてみましょうか」
「そうだね、まずは実食といこう」
サーモン寿司を皿に移し替え、リビングのテーブルへと運ぶ。
「……食べ方としては箸か素手が推奨されています」
「はは、私は素手でも大丈夫だよ」
ジウスは屈託なく笑ったので、フィリアは安堵した。おにぎりの時を考えれば大丈夫だとは思ったが、念の為である。
「いざ試食です……まずは私から!」
とりあえず作った自分から――ということでフィリアは寿司をつまんだ。いきなり崩れることはなく、ちょうど良い固さである。
そのままフィリアは一気に寿司を頬張る。
「んーっ!」
調合酢と醤油の風味が口いっぱいに広がり、そこにサーモンの旨味も重なってくる。魚類特有の臭みが消え、海の芳醇さだけがしっかりと残っていた。
噛むとほどよい熱の米の甘さも加わり、サーモンの脂がとろっと混ざり合う。生魚とは思えない味わいだった。とろけてなくなってしまうのに、寂しさを感じてしまうほどだ。
「美味しいです……!」
「とても良いみたいだね。じゃあ私も――」
ジウスもまるで筆を取るように、優雅な所作で寿司を口へと運ぶ。慣れてないはずの手掴みながら、すでに風格が漂っていた。
「ふむ……」
目を閉じてジウスがゆっくりと寿司を味わう。ややあって、ジウスが目を見開いた。
「思ったのとは全然違うね。魚類と米がこんなに相性がいいとは……」
「ええ、生臭さもほとんどありません。醤油と酢がうまい具合に消してくれています」
ジウスがすっとさらに寿司を手に取る。
「ただ、新鮮な魚でないと難しそうだね。ウィード王国ではご馳走だ」
「そうですね……。私もこのサーモンを手に入れるのに苦労しました。冷蔵技術がもっと普及すれば望みはありますが……」
フィリアもさっそく2個目の寿司を手に取り、味わう。米とサーモンの温度がちょっとだけ下がっている。
(やはり冷たくなると……これは気をつけないといけませんね)
米に少し熱があったほうが美味しく感じる。寿司はシチューみたいに保温用の器に入れることができない料理だ。時間が経つと相応に味が変わる。
「でも品物としては全く問題がない。これだと他の魚や貝も寿司でいける……かな?」
「本にはいくつもの寿司がありましたから、他の具材を載せることも大丈夫です」
本に載っていた中だとマグロやホタテなどもなんとか手に入るだろう。穴子やブリは多分、国内ではほとんど流通してないはずだった。
とはいえ、何種類か作れれば十分だろう。マグロも部位によって味がかなり違う。
「それはいいね」
「では……寿司でいきますか?」
フィリアの言葉にジウスが力強く頷く。
「ああ、それで行こう。必要な具材はこちらでも集めるよ」
「わかりました……さらに美味しい寿司を作りますね!」
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