表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【書籍化】冷徹宰相に溺愛された錬金術師はのんびりと暮らしたい~婚約破棄された令嬢でしたがグルメ生活で幸せです~  作者: りょうと かえ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

33/56

33.夢の終わりはまた夢へ


「はぁ、うっ、はぁ……」


 ジウスの背中を見送りながら、フィリアはうめいた。自分で自分のしたことが信じられない。


(なんということをしてしまったのでしょうかっ……)


 こともあろうに軽くとはいえ、ジウスへ抱き着いてしまった。完全にアルコールと楽しい食事のテンションでおかしくなっていたのだ。


(ああっ……! でも、嫌がられては……なかったですよね?)


 爽やかな夜風がフィリアの髪と頬を撫でる。ジウスの背中が完全に見えなくなり、フィリアも少しだけ落ち着いてきた。


「はぁぁ……」

「……もうそろそろ屋敷に入られてはどうですか、お嬢様」

「ひぁっ!? シェナ……! びっくりしたわ!」


 フィリアの後ろにシェナがぬっと現れていた。めったに出さない悲鳴を上げ、フィリアは飛びのく。


「それほど驚かれなくても……普通に門から歩いてきましたが」

「全く気付かなかったわ……」

「そんなにジウス様に見入っていたのですか?」

「……婚約者だもの。悪いかしら?」

「いいえ、とても良いことだと思います」


 シェナはにこにこと微笑んでいた。フィリアが少しだけ口を曲げる。フィリアもこうしたやり取りができるのはシェナだけだ。


「お嬢様、それでお食事はいかがでしたか?」

「良かったわ、とても。海産物が多くて、インスピレーションもばっちり。お酒もたくさん頂けたし」


 実際、気兼ねなく楽しめるということでは最高だった。シェナ以外の人とこれほどお酒が飲める日が来るとは思わなかった――元婚約者もフィリアがお酒を口にするのを好まなかった。

 それは多分、彼がフィリアほどアルコールに強くなかったからだ。いや、彼はかなりアルコールに弱かった。


「それはなによりです。では、ドレスの反応も悪くなかったのですね」

「ええ、そうね……。個人的には、着慣れていないから変な感じだけど」

「たまに違う側面を見せることは、異性を惹きつけるのにも効果的です」


 むふーとシェナが胸を張る。こうした機微について、フィリアよりもシェナのほうが断然、経験豊富だった。


 しかしそれよりも確認しなければならないことがフィリアにはあった。シェナはどこら辺から自分を見ていたのだろうか。


「……ところでシェナはどこから私を見ていたの?」

「それはもちろん、おふたりが門前に来てからです。お帰りになるのをお待ちしていたのですから」

「…………」


 しれっと答えるシェナ。

 ということは、ほぼ最初から――ジウスへ抱き着いた自分も見られていたということだ。


「……あぁぁ……!」

「婚約者同士なのですから、別に何事もないと思いますが……人目もありませんでしたし」

「あなたが見ていました!」

「私ごときは無きものとして……」

「うぅ……」


 婚約者であれば、確かに変なことではないのだけれど。理屈ではそうでも、どうにも気恥ずかしい。


「まぁまぁ、お風呂も沸いておりますよ。さっぱりして就寝されてはいかがですか?」

「……わかったわ、はふ……」

「ぬるめにしておきましたから、ご負担も少ないかと思います」

「ええ、ありがとう……」


 頬が熱い。けれどそれを言うと、さらに頬が熱くなりそうだった。

 とりあえずシェナの言うとおり、お風呂に入って落ち着いたほうが良さそうだ。


 フィリアはそのままお風呂に入り、気分を入れ替えて就寝した。


「本当に今日は色々なことがあったわ……」


 思い出しながら、ふかふかのベッドに横たわり――フィリアは気持ち良く眠りへと落ちていった。

最後までお読みいただき、ありがとうございます。


おもしろい、続きが読みたいと思って下さった方は、

ぜひともブックマークや↓の⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎評価をよろしくお願いいたします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ