妖狐の山と圧倒的舐めプ
蕎麦屋でご馳走になった後、近くにあった団子屋で軽食を取っていたイリアはイェムラ達を待っていた。どこで何をしているか見ようと思えば見れたのだが、後で話すネタのひとつにでもなるかと見ない事にした。
すると、遠くから声が聞こえてきた。ちらっと覗くと、何やらシスイとヤマトとイェムラが3人で話しているようだ。なんか意気投合したのだろうか。
こちらとしては九尾の所にさっさと向かいたいのだが、彼らの会話を止めるつもりは無い。
おや?3人が笑い合っている。将来的に国交を結んだならイェムラにここの取次でもしてもらおうかなと夢を膨らませる。
「陛下、お待たせいたしました。」
「楽しめたかしら。何やら仲良くなってそうだし。」
「シスイ殿に鍋料理店を案内してもらいましたが、とても美味でしたな。ヤマト殿も交えて3人で楽しみましたぞ。陛下は侍達に蕎麦屋に案内されておりましたが、いかがでしたか?」
「味は良かったわ。蕎麦の食べ方に少し手間取ったわ。だけれども箸の使い方は上手だって言われたわね。」
(転生前の食の記憶が以前より抜けてるわね…。蕎麦も恐らく前世にあったはずなのだけれど、記憶に残ってないのが残念ね。)
「それじゃあシスイ、九尾の所まで連れてってくれるかしら。」
「それでは最後にイカシ山だ。あそこに住まうのは基本的に【妖狐】だ。尾の数が多いほど強くなるのが特徴だが、七尾以上の妖狐は討伐が不可能とされているな。烏天狗は足元にも及ばない強さだ。その強さは覚醒した魔神と同等だとも言われているのだ。魔神戦争時代、複数の魔神を屠り、この大地を守ったという逸話が残されているが、信憑性は薄い。イリア殿も気をつけられよ。」
「分かったわ。」
イリアはシスイの後ろについて行く。ヤマトも手伝うそうなので一緒に行動だ。ヤマトの実力を知る良い機会でもある。
山の頂上へと向かうにつれ、尾の数が増していく。最初こそ一尾や二尾ばっかりであったが、徐々にその数を増やしていった。
「封印はされてないのね。」
「強すぎるが故に封印まで出来ないのだ。」
「某も六尾までなら倒せるでござるが、七尾からは気配が変わるでござるよ。」
と、そんな話をしているうちに、言葉を介する者まで現れ始めた。
「イリア殿、四尾でござる。四尾以上は言語能力が発達しているのでござる。」
「そう、わかったわ。」
『お主、何者!テンコ様には近づけさせぬ!』
「あなた達の親玉の居場所は分かるかしら。名前を言ってくれるなんて嬉しいわ。探す手間が少し省けそうね。」
『うるさい!早くどっか行け!【狐火】』
四尾の妖狐は、尻尾から青い炎を灯すと、こちらへと放ってきた。
「イェムラ。」
「はっ。」
イェムラはイリアの前に立ち、炎を受ける。受けたと同時に爆発を起こし青い煙を放つ。
「この程度ですか。我の結界すら突破できないとは四尾とはこの程度ですか。」
「侮るのはダメよ?どうやら九尾は覚醒魔神と同等の強さらしいから相性の違いでは一気に不利になるわよ?」
「分かっております、陛下。」
「そう、ならいいのよ。それで、そこの妖狐?その炎しかすることはないのかしら。他になにか見せてちょうだい。」
『おいらを前にして余裕綽々と!【尾棘】!』
4つの尾を鋭く尖らせ、それを針のように地面に突き刺す。
その4本の尾は、イリアの真後ろから飛び出し、背中へと迫る。
しかし、そんな隙を与えんと、ヤマトは、4本の尾を斬り飛ばす。
「その程度の攻撃では某の目はごまかせないでござる。トドメでござるな。」
イリアは、妖狐に近づく。妖狐はビビることなく、もう一度、尾を鋭くし、そこに先程放った青い炎を纏わせた。
「あら、複合できるのね。とりあえずそれを食らってみようかしら。」
と、視線を少し逸らした瞬間、妖狐はイリアの背後へと跳び、三本の尾を前から後ろから一本放った。
その尾を予想以上に長く伸び、イリアへと迫る。
「少ない技を工夫して、頑張ってるわね。」
「でも、やっぱりつまらないわ。」
イリアは、尾を出して、高速で伸ばし、妖狐の上から腹目掛けて突き刺す。
宙ぶらりんになった妖狐は、最後の力を振り絞り、イリアへと尾の攻撃を続ける。
しかし、その努力も虚しく、イリアの肌に当たると同時に消滅していく。触れたそばから粉々に消え去っていった。
そして、尾を失った妖狐は、顔を上に上げ、口を開いたイリアの口の中へと落ちていく。
ぐちゃ…ぐちゃ…ぼり…ぼり…
「あまり美味しくないわね。弱いからかしら。それとも単純に美味しくない種族?」
経験値にもならない。
「ねぇヤマト、もっと尾の多い妖狐は居ないのかしら。もっと奥に進めば居るのよね?」
「そのはずでござる。」
だとするならば、先に進むのみだ。山というからには頂上を目指している。だが、先程からどんどんと遠ざかっているように感じる。恐らくは侵入者を九尾の元へ近づけさせないようにするための対応なのだろうが。
「それにしたって露骨すぎないかしら。そんなに私の事が怖いのかしらねぇ。」
「イリア殿の美しさに嫉妬して近づけさせないようにしてるのではないか?」
「それこそ滑稽よねぇ。でも1桁年齢の子に嫉妬する老人は面白いわね。」
「ところで今回は私もついて行っているが、問題ないのだろうか。」
イェムラが反応する。
「我と陛下、そしてそこのヤマトが居るのです。あなたのような文官に危害が加わることはないでしょう。安心してついてきてください。」
イリア達4人は山をどんどん登っていくのだった。




