【光忍】ヤマトとの対面
イリアは1人で国内をぶらぶらしている。
実は3歳になったのだ。ついに3歳だ。それはもうパーティーが催された。魔物達はおもいおもいに食事を摂り、闘技場では力をぶつけあった。魔神に挑む魔物もいたりと凄いことになっている。もちろんそんな所にイリアが近づけばどうなるかは分かりきっている。お祭り騒ぎがいきなりシーンとしてしまう。力の格が違いすぎるが故に周りが静かになってしまう。
だからこそ、1人でブラブラしている。魔神の数も50体を超え、着々と戦力を増強しており、その分、統治にも励んだ。
建国から1年が経つと、建国記念日が行われた。
これにはダリオン王国からはフーバーン国王が。
レストレリアン王国からは、フリューゲル騎士団長が。
海洋国家テスタレスからは、テュータレスがやってきた。
3人にはあらかじめ魔物の国であることは伝えており、そこまでトラブルには至らなかった。
3人はそれぞれ交流を重ね、海洋国家テスタレスはダリオン王国、レストレリアン王国それぞれと国交を結ぶことになった。
ラファエロの訓練は順調でラファエロは既にレベルが100を超えたらしい。ラファエロはそろそろ王国の学園に行くという事で1度稽古は中断ということになった。
「人間英雄に相見えるとは…。」
フーバーンは感嘆の声をあげる。
「私などまだまだですよ。鍛錬あるのみですな。」
ここの3人とも150レベルを超えているのでそれなりに力比べができるそうだ。
どうやら3人は酒仲間となったようだ。
しかし、イリアはハブられてしまった。若すぎるからダメなんだそうだ。
建国記念日が終わり、暇を持て余している。
なので、ちゃんと会ったわけではない魔神と会うことにした。
そこは気温が氷点下を下回る。
イリアは特に寒さは感じないので普段の服装で歩く。徐々に建物が見えてきた。氷のようなもので出来ているが氷では無さそうだ。
扉を開ける。中には使用人らしき雪女が何体か居た。
「ここの主に会いに来たのだけれど…今はいるかしら。」
すると、雪女の1人が答える。
「陛下、今は主は作業部屋に居られます。」
「そう、分かったわ。案内しなさい。」
「かしこまりました。」
雪女はイリアを案内する。
作業部屋と思しき部屋の扉の前に着く。
「主殿。陛下が参られました。」
すると、中から何かを片付けるような音が聞こえた後、扉が開かれる。
そこには青い肌をしたエルフのような外見をした男が出てくる。エルフに氷属性を足したような風貌だ。
「よくぞ参られました、陛下。我は四天凶ハイウッドの配下である氷雪の魔神イェムラでございます。」
「そう。私は今そこら辺をぶらぶらしているのよね。ヤマトの国に向かうのだけれど、1人だけお供を連れていこうと思ったのよね。普段ならイズナやヘスティに頼むのだけれど、今日はあなたにしようかしら。」
すると、イェムラは笑顔になる。
「陛下の用事に同行することが出来るのでしょうか!」
「まぁそうなるわね。」
「何たる幸運!我が同行いたしましょう!そうと決まれば!準備をして参ります!」
そういって作業部屋を出て荷物を取りに走ってどこかに行った。
1分ほど待つと、こちらに戻ってきた。弓を持ってきたようだ。
「これが普段使う弓かしら。」
「はい、我が普段から使う弓でございます。アイスエルフが魔神になった姿でございますゆえ。」
まさに狩人のようだ。
「じゃあ行こうかしら。」
2人はダリオン王国内の冒険者ギルド内に立ち寄る。
そこには前と同じくマイシャが受付嬢として働いていた。
「あれ、イリアちゃんじゃない。」
「えぇ、久しぶりに来たわ。」
「今日はどう言った用事?」
「【光忍】は居るかしら。」
「ヤマトなら依頼を受けてるわ。昼くらいには戻ってくるんじゃないかな?」
「待たせてもらうわね。」
「イリアの後ろにいるエルフは?」
「私の配下よ。」
「我は氷雪の魔神イェムラでございます。」
「え?もしかしてアイスエルフ?」
「アイスエルフから進化した姿でございます。」
マイシャはイェムラをまじまじと見つめる。
「エルフ自体、外で見かける数が少ないのに、その中でもさらに個体数の少ないアイスエルフが居るなんて、凄いよ…。」
「イェムラ。そうなのかしら。」
「我々エルフ族はそうですね。だいたい引きこもりで排他的ですからね。ごく稀に我のように外へ出てくる者もおりますが。」
「それで、ヤマトに何か用でもあるの?」
イリアはマイシャに事情を簡単に説明する。
「それでヤマトの国に行くんだね。」
「そうなのよね。行き方が分からないから困ってるのよ。」
すると、マイシャが少し不機嫌になる。
「そういえば、言ってこなかったよね…。3歳になってること!」
「あ、忘れてたわ…。」
「せっかく祝ってあげようと思ったのに!」
「ごめんなさいね…。」
「今度、なにか祝わせて。」
と言いながらイリアに顔を近づけるマイシャ。
「近いですわ…。分かったわ。進化したら戻ってくるわね。」
「絶対よ!」
イリアは絶対に約束を守ろうと誓う。
そんなこんなしているうちに一人の男が入ってきた。
「む?某の話をしているのでござるか?」
「あら、何か聞いた事のない口調ね。」
「あ、ヤマトおかえり。」
この人がヤマトなのか。ヤマトの国出身とされているが、国名と名前が同じなのは気のせいか?
「それで、某に何か用でござるか?」
「ヤマトの国に行きたいのだけれど、どうやって行くべきかしら。」
「今、ヤマトの国は鎖国状態でござるよ。某はSSランク冒険者の立場があるから出国したり帰国したり出来るでござるが。」
「そう…。Sランクでも難しいかしら。」
「Sなら行けるかもしれないでござるが某と一緒でないと難しいでござるな。」
「それなら連れていってくれるかしら。」
「構わないでござるよ。ちょうど某も任を終えて一度、帰国する所なのでござる。」
そしてイリアはヤマトと行動する事になる。
「先に彼のことを教えておく必要があるわね。彼は私の配下の1人、氷雪の魔神イェムラよ。」
イェムラは軽くお辞儀をする。
「ほぅ。アイスエルフでござるか。よろしくでござる。それでイリア殿。なんの用で我が国に行きたいのでござるか?」
マイシャと同じように事情を伝える。
「なるほど…三大守護者の討伐でござるか。九尾は強いでござるよ。はっきり言うなれば、ヤマトの国建国当初から居るのは分かっているでござる。齢にして5000年は経っているでござる。」
「ヤマトの国、すごい歴史がある国なのね…。」
「我が国はどの国よりも長い歴史を持っているのでござるよ。もちろん滅んだ国を除けば、でござるが。」
「それは行くのが益々楽しみになるわね。」
「帝位吸血鬼への進化にまさか、我が国の守護者を倒すことが条件とは…。だから過去に何度か吸血鬼が不法侵入していたのでござるか。」
「不法侵入していたのね…。それは悪い奴らね。私がそれらに会った時に殺しておくわ。」
「殺さなくても良いでござるが、そこは勝手にしてくれでござる。」
そして、ヤマトはダリオン王国王都を出て少し歩く。近くの海に出ると何かを唱える。
「忍法・木渡りの術」
すると、煙がポンッと現れたのち、煙の中からイカダが現れる。
「これに乗るでござる。拙者が舵を漕ぐ故、安全に国へ届けるでござるよ。」
イカダの大きさは人が8人くらい座っても問題ない程度。イカダの上には手作りであろう椅子が4つある。そこにイェムラとイリアが座る。
「では、ヤマトの国へ出発でござる。」




