大枢機卿護衛任務最終日
今日は海洋国家テスタレスと聖国ヒストリアの同盟式典である。会場は歓迎会を行った広場である。
めでたい雰囲気なため、皆それぞれの衣装を着ている。ドレスを着る女性やタキシードを着た男性。軍服に身を包んだ男性。
その中でも教会長ゼイン。聖女マシェラ。聖騎士マリアンヌ。海洋将軍レーゼン。大枢機卿テュータレス。六色卿は普段の服装である。イリアもまた普段の服装であるが、見た目があの『黒薔薇』と酷似しているので別の意味で注目されている。
そして、このような同盟式典を襲撃するような愚か者は絶対に現れるということで、警備の人員がいつもより割かれることになった。
そして、開始の挨拶が始まる。
「皆々様。今日、この会場にお集まり頂きありがとうございます。今日は海洋国家テスタレス、そして聖国ヒストリアにとって素晴らしき日となることでしょう。それでは、海洋国家テスタレスから、大枢機卿テュータレス様、海洋将軍レーゼン様。そして、聖国ヒストリアからは聖女マシェラ様、聖騎士マリアンヌ様からそれぞれお言葉をいただきたいと思います。」
と、司会を努める男性が振る。
「では、儂から言わせてもらおう。」
先陣をきったのはテュータレスだ。
「我が国は、建国してから400年。どことも同盟を結ばずにやってきたが、内部分裂を起こしかねない状況に陥っていた。それに関しては解決したのだが。そのおかげで聖国と国交を結ぶ事ができる。聖国との交渉が行えていたのは今まで教会しかなかったが、これからは連携を密にできる。まぁ儂からこれだけにしておこう。」
「テュータレス様ありがとうございます。続きましてどなたが行かれますか?」
では若輩である私から。とレーゼンが挙手をする。
「一昨日より海洋将軍の座についたレーゼンと申します。前将軍の不快極まりない悪烈たる所業を止める事が出来ず、何もできませんでしたが、協力の元、鎮めることが出来ました。おかげで聖国との会議が順調に進み、素晴らしいことに同盟を結ぶに至ったことに関しては、非常に感謝しております。大ベテランたる六色卿、そして大枢機卿、教会長とともに今後とも国の成長に貢献できるよう邁進していく所存です。」
「レーゼン様、ありがとうございます。続いてはどなたが。」
「私が行こう。」
続いて前に出たのは聖騎士マリアンヌだ。
聖国ヒストリアにおいて、4人しか居ない聖騎士でありながら聖女の盾としてそばに居る。
「私からは少しだけ。聖女様に対する反逆が無ければいい。此度の同盟が長く続く事を祈っている。」
「マリアンヌ様、ありがとうございます。ソシテ最後にマシェラ様。お願いします。」
そして、マシェラは前に出る。
「私が聖女となって3年、数々の苦難に見舞われました。飢饉、自然災害、魔物災害など。私自身が本当に被災者の助けになっているのか、邪魔だと思われていないか、不安を感じておりました。しかし、それらの助けになればと邁進してまいりましたが、初めて実ったような気がします。貴国の機械技術を我が国へ取り入れる事でより一層、安全な、そして、利便性の向上に繋がればと思います。そして同盟を結ぶということ。それは歴史の転換点にあたります。ここからお互いに支え合える事を私は心待ちにしておりました。わたしのこれまでの努力も、そしてこれからの努力も主神が見守ってくださることでしょう。」
「マシェラ様、ありがとうございます。では今から、海洋国家テスタレスにて発明された写真機を使い、記念の写真を撮ろうと思います。呼ばれた4名は中央に集まってください。」
そう言って呼ばれたのは、大枢機卿テュータレス、教会長ゼイン、海洋将軍レーゼン、聖女マシェラである。
4人は中央に集まり、写真を撮る。合図に合わせてそれぞれ笑顔を浮かべながら。
撮られた写真はボヤけは無く、見事綺麗に仕上がっていた。
その場で現像してくれる写真機なだけあって少し大きい。
この写真は海洋国家、そして聖国それぞれ1枚ずつ贈呈されることとなった。
そして、聖女達は自国へと戻る時間になった。
「それでは、テュータレス様、レーゼン様、ゼイン様。此度の同盟式典、おめでとうございます。これから貿易などを始めたいと思いますがそれらはおいおい調整していきたいと思います。では。」
マシェラは深くお辞儀をする。そして馬車に乗る。聖騎士マリアンヌも軽くお辞儀をしたのち、馬車に乗る。その馬車は聖国へと帰っていった。
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「やっと終わったわね。」
「そうだな。お主との護衛任務も終わりが近づいてきたな。報酬は後で渡しておこう。それと、我が国の膿を取り出してくれたこと、誠に感謝する。」
そういって、ゼイン、テュータレス、レーゼンはイリアに対しても感謝の言葉を述べた。
「お主は今度はどこに行くのだ?」
「ヤマトの国かしらね。わたしの進化条件がヤマトの国の3大ボスいずれかの討伐なのよね。」
「それならば【光忍】のところへ向かえば良いのではないか?」
「そうらしいわね。確かヤマトの国出身だったわよね。」
「そうだな。道案内、そして入国の手続きをやってくれるかもしれんな。あそこは我が国とは違って、鎖国しておる。我が国は単純にどの国とも国交結んでないだけだが、ヤマトの国は何かしらの原因で鎖国していると思われる。恐らく入る事も出る事も難しいだろう。気をつけるんだぞ。」
「忠告感謝するわ。」
イリアは護衛任務を終えて、冒険者ギルドに戻ってきた。扉を開けると、以前入った時に鳴った警報は鳴らず、普通に通ることが出来た。
受付嬢のところに向かい、任務の終了報告をしに来た。どうやら報酬の話はもう通してあったようで
金貨はなんと800枚だった。とても多い。
Sランクになって2つ目の依頼を完遂することが出来た。しかし、戻るのは自国ではなくレストレリアン王国へと帰還する。
元の教室へと転移するが誰も居ない。どうやら今は授業中ではなかったようだ。日も陰りつつある。メルームは自国へと戻っているようだ。獣魔王ガイオンも帰っているようだ。
イリアは1人でレストレリアンの学者を出る。すると兵士だろうか。まばらではあるが多くの兵士が観戦しているような音が聞こえる。
音の発生現場に近づいてちらっと覗く。
すると、タクトがフリューゲルと模擬戦をしているようだ。フリューゲルの剣術をいなしたり、逆に攻撃を仕掛けたりと、フリューゲルに善戦しているようにも見える。ただ、タクトを見ると、息が上がり掛けであったりする。そしてタクトが不意に何かを呟いてる。
「【神の衣】!」
タクトの周りを何か半透明な光が覆っているようだ。あれは確か勇者の持つスキルだったはず。
となれば勇者となる日は近いのだろうか。
フリューゲルは神の衣に攻撃を防がれるも果敢に攻撃を仕掛ける。
だが、タクトが一瞬の隙をついてフリューゲルの首元に剣を当てる。
「参った。まさかタクトに1本取られるとはな。」
「フリューゲルさんも強かったです。まさか【神の衣】を使うことになるとは思いませんでした!」
そしてタクトが握りしめている剣は、以前倒したバハムートの目の力を感じる。武器の名称が気になったので覗く。
名前:聖剣バハムート
効果:善性の高さに応じて力の底上げされる。
勇者が持つと力を何倍も引き出すことが出 来る。
相性:悪魔、吸血鬼、魔族特効
(善性の高さに応じて…ねぇ…。私には使えない剣ね…。それにしても勇者ってのは凄いわね!成長速度がなかなかのものねぇ。)
タクト達は訓練を終えぞろぞろと宿舎へと戻っていく。観客と化していた兵達も戻っていく。1人になったフリューゲルは声を掛ける。
「おや、戻ってきたのだな。」
そこまで気配を隠していなかったのでフリューゲル程度なら気づいてくれるだろうと思っていた。
「そうね。」
「最初は怒って出ていったが今は何ともないのですか?」
「今は何ともないわね。ガイオンも帰ってるみたいだし私も1度帰ろうかしら。」
「タクト達に会っていかないのか?」
「別にいいわ。どうせいつか会うことになりそうだし。」
「そうか。達者でな。」
「えぇ、またいつか会いましょうね。」
イリアは転移で自国へと戻った。
その後、配下の子に色々聞かれたので答えた。
次の目的地はヤマトの国に決まりね。
これにて第4章完結です。第5章はヤマトの国編となります。




