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TS転生した吸血鬼が色んな血を取り込み平和に暮らしたい冒険譚  作者: 月姫ステラ
4章 転移者と転生者
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大枢機卿護衛任務4日目

遅れました!

今日は会議の日だ。テュータレスにも緊張が走る。秘書とイリアを連れて会議室へと向かう。会議室へ着くと六色枢機卿、軍務関係者、教会長ゼイン、海洋将軍ジグルド、そしてその護衛の亜魔族のディートリヒ。円形の机を囲むように13席あり、デイートリヒとイリア、秘書が立っている。テュータレスが座る。1席だけ空いているようだ。


「ジャスター、シュネガーはまだ来ないのか?」


ジャスターと呼ばれた男、軍務関係者だろうか。ジグルドに返答している。


「将軍、それが昨日の夜からお見かけしないのです。」


「バックレよったか。まぁよい。関係者は全員揃ったのだ。さっさと会議を始めようではないか。」


こうして、集中会議は始まったのだった。


「これより集中会議を始める。まず議題は大まかに3つだ。1つ目はここ最近の金属の輸入頻度が上がっている事だ。戦争が近い故に輸入頻度が上がったことは否めないが、それにしても多過ぎる。なぜ倍以上に膨れ上がっている。ジグルド、これに関して答えて欲しい。」


テュータレスがジグルドに質問をする。


「そんなもの、簡単なことだ。レイシスが最終段階に入った。オリハルコンの魔石があと少し入れば完成する。レイシスを使えば我々の人員の被害を最小限に抑えつつ相手に甚大な被害を与える事が出来るのだ。コスト面は仕方ないだろう。それに、何より魔物が作った国をやすやすと見逃すはずもあるまい。ダリオン王国はかの魔神国の傀儡となっているやもしれん。」


「ダリオン王国にはSSランクが複数滞在しているはずだが、それに本当に危険な時にはレファル様も居る。あそこが魔物の手に堕ちるとは考えにくい。」


「失礼、私からもよろしいでしょうか。」


ゼインが挙手をし、発言の許可を求める。


「構わん。」

テュータレスが許可を出す。


「レイシスを使うにあたっての注意事項などはあるのでしょうか。使った際に発生する【死之霧デスミスト】はどうされるおつもりですか?あれは【即死魔法】を組み込んでいるのでしょう?持ち運ぶ人員の安全はどう保証するのですか?」


「レイシスをかの国の上空から飛来させ、ある一定の高度になると、地面の方向に向かって発動させる。速度は3秒もあれば地面に届くであろうな。そして、霧がある程度出尽くした時には地面に衝突する。そこで【核撃砲ニュークリアカノン】を発動させる。威力は数十倍に拡大させておる。だからレイシスを落としたのち、全速力で我が基地へと帰還してもらう。その際に半透明化してステルス効果を持たせて引いてもらう。そうすればこちらの被害もないだろう。」


「では聞くが、ジグルドよ。レイシスを使う以外で目的はあるか?今だからこそ言えるが、お主達は随分我々の陣営に向かって刺客を放って来よったな。」


「なんの事だか分からんな。儂はその件に関しては一切関与しとらん。シュネガーが関わっておるのではないか?シュネガーが関わっていたからこそ、今ここに姿を現せないのだろう?」


「シュネガーに関しては行方を探しているが、じきに見つかるだろうよ。」


テュータレスは念話を用いてこちらに話しかけてきた。


(シュネガーが見つからんのだがもしや殺したか?)


(私は特に何もしてないわ。むしろ情報が足りないから生かしておくべきね。もし死んでいるのなら、こちら側じゃなくて軍側の誰かが殺ったんじゃないかしら。候補はあのディートリヒね。渋々ジグルドの護衛をしているらしいし。)


(それならいいんだが…。)


「それで2つ目なんだがな。教会に関わる事なのだが、聖国から聖女様が参られることについてだ。聖女様は人間族の中で唯一転移魔法を完全に扱う事が出来る御方だ。それに伴って転移先の魔法陣の細かな調整について話さねばならん。例年通り、教会の中央でよろしいか?」


ジグルドは構わんと言った具合に頷いた。


「それで最後なのだが、ジグルドに問おう。お前達軍部の者は裏工作をしているという事が調査で分かっている。名前は知らんがあの方と呼んで、その指示に従っている事までは分かっている。今回の宣戦布告もその一貫だと。わしの目は誤魔化せん。正直に話してみよ。」


「何故それを話さねばならん。」


「話さねば、聖女の来訪の予定すら狂ってしまうからな。それに目的も定かでは無いうちに宣戦布告をこちら側が了承する事は出来ん。軍部の独断専行で進めるのは法に背くからな。」


「あの御方の正体は自分で調べろ。だがあの御方が言うにはかの魔神国は魔神戦争を始めようとしているのだ。その国をいち早く潰すのは権力を持つ者として当然であると。」


「ならばジグルドよ、お主はその御仁の発言を真実として扱って専行しようとしたのか?しかし、お主に利があるとは思えん。なぜ我らには言わん。」


さすがにイリアは発言を何もしない事に飽きてきたのか、口を出す。


「おおかた、重要なポストを用意するとかそんなオチなんじゃないのかしら。どうせジグルドが従っているのは魔神なんでしょうね。魔神の指示で魔神国を攻める。不穏分子を他国に排除してもらう事で自国への調査を遅らせることが狙いね。それに、重要なポストって言っても輸入や輸出に関する割合を変える権限や裏組織のメンバー入りとか軍事技術の提供とかが普通じゃないかしら。」


「何を言い出すかと思えば、護衛の分際で会議に割り込むなどルールを弁えよ。軍務、枢機卿、教会の三本部での会議ぞ。」


「図星みたいね。」


「何を言うか。」


「だって今の私が話している時に眉間に皺を寄せていたもの。しかも話し始めではなく話してる途中から。どう考えてもこれらに絞りこめるわね。」


少しの沈黙が流れる。


そこでジグルドがイリアに対して問いかける。


「お前は護衛の身でありながら今回の会議となんの関係があるというのだ。」


「強いて言うなら…、王位吸血鬼と言ったらいいかしらね。」


「魔物が護衛だと!?ワシらのことを散々言っておきながらお前も魔物を使っているではないか!」


「魔物じゃないわ、吸血鬼族よ。そこを勘違いしちゃダメね。それに…。」


「ま、まさか…。魔神国の女王か!」


「大当たり〜。バレちゃったけど今は何もしないわ。けれどそのレイシスだけはこの世界から消えてもらうわ。」


「場所は特定出来んじゃろうて!」


「それに関してはシュネガーにつけた血液で場所は分かってるから問題ないわ。【破滅の権能】」


同時刻、終末兵器レイシスと同位置にて音もなく爆発を起こし研究所もろとも粉々に砕け散った。研究資料もろとも火事により消失。そして研究者14人の死亡。後で聞いた話だが、研究中のミスによる爆発事故と処理された。これで一件落着。あとは会議終了まで見届けるだけだ。こいつらの手勢を見た感じ、恐らく我が国の雑兵で事足りるだろう。会議が終わったあとの2日間も注意した方がいいんだった。忘れないでおかないと…。


「テュータレス、今こそやるべきじゃないかしら。」


「何をだ。」


「処理よ。」


「そこの緑色の服を着た軍務の人がジグルド派じゃない人だし。他は要らないわ。」


「しかし、奴らの裏にいるやつが分からんではないか。」


「分かる必要はないわね。確かに最初は気になってたけど、ディートリヒに何かしらの契約が刻まれてるわけでも亜魔族自体に呪いが掛けられてる訳でもないわけだし、最悪私の国に種族ごと連れて帰れば解決しちゃうわね。」


「なら何も心配は要らんな。ジグルド、それにジグルド一派よ。お前達は今から処刑よ。会議の途中ではあるが事を急がねばならん。会議の内容を変更して宣戦布告の取り消し及び軍部の面々を一新する。もちろん選ぶのはワシだが、裏を精査した上で軍部の者から選ぶぞ。」


「何を急に決めている!テュータレス!そんな言い分通るわけが無いだろう!」


他の軍部の者からも苦情が発生する。


しかし、落ち着いていたテュータレスは答えた。


「言い分?我らの国を危険に晒しておいて今更であろう。もしイリア殿がこの会議に居なければ国は滅んでいたな。」


「なに?」


「耄碌しているな。イリア殿は魔神国の女王だぞ?敵国の目の前で情報を流していたようなものだ。」


「それで、テュータレス達、遺言はそれでいいかしら。」


周りからの返答は無い。


「無さそうだから早速行うわね。【生死の権能】」


イリアが【生死の権能】と告げると処刑対象は内側から爆散するように死亡する。なお、この処刑の際、他の人達がその光景を目撃して嘔吐などを起こさないように【概念の権能】を使い、一時的に視界と音と匂いを封印した。


爆散した肉片は空間の中に入れられ、血液はイリアの近くへと集まった後に、手の中へと吸収されていく。


『イリアのレベルが880から910に上がりました。』


おおかたテュータレスのおかげだろう。しかし900レベルに到達しても帝位への進化条件を満たしていない。もうこれは1000レベルを目指さなくてはいけないのだろうか。


そして、枢機卿や教会の人達の『視界と匂いと音』の封印を解除すると、目の前から3人ほど居なくなり、4席空白になった。それから、新たに軍部から後任で先程イリアが省いた緑色の服装を着た軍務の人を将軍に据えての新たな体勢を築かせる。


緑の人の名前はレーゼン。階級は中将だ。それから、レーゼンの信頼する部下3人を加えた。


それから、レーゼンは軍務を代表して、テュータレスに、そして、イリアに謝罪し、宣戦布告を取り下げた。深く事情を聞いてみると、レーゼンは最初、宣戦布告に関しては反対意見を出していた。しかし、ジグルドやシュネガー、その他20名ほどのジグルド派がレーゼン派を隅へと追いやり、渋々従っていたようだ。だが、ここで諦めるわけにも行かず、教会長ゼインへ情報を横流ししつつ様子を伺っていたのだ。


それから4時間ほどが経過し、戦争関連の会議が終わり、内政へと移っていった。先程話に挙がっていた聖国から聖女を招く話だが、急遽明日来る事になった。イリアはまだ聖女には会ったことがない。聖国にはいずれ行くつもりだが、聖女と話せば何かしら行く理由が出来るかもしれない。


そして、会議は終わり、テュータレス達は会議室を出る。事務室へと戻る途中、イリアは声を掛けられた。


「すみません、イリア様。」


「何かしら、ディートリヒ。」


「我々の事も考えて下さり誠に感謝します。」


「当然でしょう?お互いに命を狙われていた身、助け合えばいいだけよ。それに近いうちにあなたたち亜魔族を私の国に迎えるよう準備しておくから。しっかり種族内で決めておいてくれるかしら。」


「当然でございます。先程テレパシーを飛ばして我々の族長に話を通しておきました。私は、いち早く里へ戻り話をつけてまいります。」


「それじゃあ、待ってるわね。」


それから事務室へと戻ったイリアは夕食を摂ったのち、自室へと戻った。



■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■




イリアは空間からガーネシアの死体を取り出す。体は何ヶ所か潰れており、見るも無惨な状態になっていた。


「【生死の権能】」


その一言ののち、ガーネシアは淡く光り、潰れていた体は元のきれいな肌に戻り、失った血はイリアがガーネシア用に調整した血を流し込んだ。それから脈を動かし、筋肉を動かし、骨を動かすと、ガーネシアは少しずつ目を開けた。


「こ…こ、は…。」


たどたどしい声で呟くガーネシアを膝枕で寝かせながら返事する。


「ここは、私の寝室ね。」


「生き…返っ…たの…ですね…。」


ガーネシアはイリアの事を見ると、涙を流しながらイリアへと抱きついた。数十秒ほどの抱擁ののち、それから謝罪の連続であった。


「ごめんなさいごめんなさい!私があの時に神水を受け取っていればこんな事にはなりませんでした!私の浅はかな考えをお許しください!」


「別に何も怒ってはないわ。それに神水ならここにあるわ。ガーネシア、あなたは何を望むかしら。圧倒的な強さ?統率力?」


「全部…はダメでしょうか…。」


「傲慢ね…。でも問題ないわ。それじゃあガーネシア、あなたには神水を飲んでもらうわ。少し苦痛があるかもしれないけれど、それが終わった頃には魔神になっているから。」


「感謝致します!」


ガーネシアはイリアの膝から起き上がり、目の前の椅子に座る。それからイリアから渡された神水の入った瓶を手に取り、蓋を開け、中身を飲む。


すると、体の中が徐々に熱くなる。息が苦しくなっていくが、何とか耐える。あの憎き人間3人を確実に殺せるようにと願いながら。


痛みに苦しんでいるようだ。どうか耐えてくれる事を願っておこう。


『真紅の赤狼ガーネシアは進化を願います。受理されました。』


『真紅の赤狼ガーネシアは真紅の魔神ガーネシアへと進化しました。ガーネシアは破滅神イリアの加護を獲得しました。』


『ステータスを大幅に更新しました。』



進化を終えた頃、ガーネシアは赤い繭の中から出てきた。先程より狼さが抜け魔神の面影が現れる。


「終わったかしら。」


「はい、ありがとうございます!あの…失礼を承知でお伺いさせて頂いてもよろしいですか?」


「別に構わないわ。」


「なんとお呼びすればよろしいでしょうか。女王陛下、神様、イリア様、他に何かありますでしょうか。」


イリアは少し考えたのち、考えをまとめた。


「そうね…。私は固定の呼ばれ方があまり無いから、本人の呼びたい呼び方で構わないわ。神様でも陛下でもあねさんでも別に構わないわ。」



「でしたら、私はイリア様と呼ばせていただきます!それで、どうしてこのような所にいらっしゃるのでしょうか。ここは海洋国家だと思いましたが…。」


「この国のとあるバカが私の国に宣戦布告をしに来たから私が直接調査してさっき審判を下してきたところよ。」


「この国をこれ以上滅ぼさなくてもよろしいのですか?」


「別にそんな事はしないわ。むしろ同盟を結ぼうと考えているわ。」


「なるほど…。」



「それより、あなたは自身を殺した相手を殺したいでしょう?特に今すぐに。」


「はい…。」


怒気が上がっているようだ。当然だろう。


「今から空間を繋ぐからアイツらのいるところまで行ってらっしゃい。必ず私の加護があなたを守ってくれるわ。」


「必ず殺して参ります。」


イリアは空間を広げると、ガーネシアを中に連れていく。メルームのダンジョン内に案内する。すると、ダンジョン内を彷徨いている二人の男と一人の女がいた。


「あいつらの事なのね。分かったわ。それじゃあここに繋げるから。行ってらっしゃい。」


「はい!行ってきます!」

そろそろ5章に入ります。

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