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TS転生した吸血鬼が色んな血を取り込み平和に暮らしたい冒険譚  作者: 月姫ステラ
4章 転移者と転生者
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大枢機卿護衛任務3日目

その日は朝から忙しなかった。


朝っぱらからシュネガーの使いであろう密偵がこちらへ来た。それの対処に明け暮れる。こうまでして大枢機卿の命を狙うにはきっと訳があるのだろう。独裁国家となりそのあの方とやらの結び付きをより強固にしたいのだろう。だが、それを許すほどイリアは弱くない。


「ほんっとに多いわ、嫌になっちゃうわね。」


「仕方が無いだろう。彼奴も焦っておるのだ。お主が味方であれば全く問題が無いと思える。それほどの成果だ。しかし、秘書だけでなくお主まで狙うとはな。どうだ?相手の強さは。」


「さぁ?どんぐりの背比べって所かしら。とりあえず私からしたら大して変わらないわ。」


(それにこいつらを殺せばその分経験値も溜まるわけだし。自死してでも黙秘しようとしても私が蘇生させてあげるわけだし。)


『イリアはレベル816から817に上がりました。』


「あら、久しぶりのレベルアップね。」


「む?相手を殺しているのか?別に構わんが天井裏を血だらけにするのはやめてくれよ?」


「大丈夫よ。血の一滴の痕跡すら残さないから。」


「そうだったな、お主は吸血鬼であったな。」


「それにしても大枢機卿、会議の日が1番苛烈になるのではないでしょうか。」


「それはそうだろうな。だが会議の後の2日間も様子見が必要だ。会議が終わったから全部解決とは行かないからな。」





「そうだわ。いいこと思いついたのよ。」


「何か思いついたのか?」


「私を分身させてそいつに【闇梟】を滅ぼしに行ってもらうのよ。そうすれば相手の戦力が削ぎ落とされるし、そうなればシュネガーとかが動かざるを得なくなるから。」


「まぁあやつは完全にあの方とやらに傾倒しておるからな。目を覚まさせる必要はある。」


「じゃあ早速行うわね。」


イリアは分身をして、闇梟討伐に向かわせる。


そこから数分後、経験値がどんどん入っていく。相手が人間のわりにはそれなりに強いのか通常よりも入ってくる経験値が多い。


『イリアのレベルが817から820に上がりました。』


『【投擲】【眼力強化】【反射障壁】をLvMaxに上げました。』


『イリアが一定数の殺戮人数に達成しました。2度進化可能な神へと変化しますか?』


(なんか知らぬ間に神になれる条件達成してるわね…。しかも2回も進化できる。帝位と真祖ね。もちろんなるわ。)


『現在活動中の分身をそのままに神化を開始します。黒い棺桶に包まれます。』



「ど、どうしたのだ。お主。」


テュータレスは驚いているらしい。でも今は発声が出来ないので黙って聞くことしか出来ない。


そこに狩り終えた分身が戻ってきた。


テュータレスは分身に説明を求めたが終わってからという事にした。



『イリア・フィーリアスの神化を開始します。』


『イリア・フィーリアスの種族が破滅神に変更しました。』


『ステータスの数値の概念が消えました。』


『大罪以外の全てのスキルは消去され権能が追加されました。』


『称号の整理が行われます。【不屈者】【穢れた森の支配者】【神と龍の血を受けし者】【魂喰らい】【回避王】【王の風格】【脱獄姫】【防蝕者】【憤怒者】【強欲者】【破滅の魔王】【深淵と混沌】【転生者】【傾国の美女】が削除されました。』


『【破滅の権能】【概念の権能】【生死の権能】を獲得しました。』


『特殊スキルの【断絶結界】【魔王】【世界樹の魔眼】【メイド】【半神術】【別天神】【空神】【魂魄神】は削除されました。』


『種族、【半神】【魔王】は削除されました。』


『装備、白神の長剣、黒神の長剣、邪神の篭手が【破滅の権能】に吸収されました。』


『称号やスキルの削除により獲得した経験値をレベルアップに寄与します。』


『イリアのレベルが820から880に上がりました。』


『ステータスを表示します。』


名前:イリア・フィーリアス

種族:破滅神(王位龍血鬼)

レベル :880

権能:【破滅の権能】【概念の権能】【生死の権能】

大罪:暴食、強欲、憤怒

称号:破滅へと導く者、理を操る者、美を超越する者、魔神を支配する者


『神化を終了します。』





□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□



棺桶は消え、中からは先程と見た目も服装も変わらぬイリアが出てきた。しかし先程よりも気配が変わった。


「何があったのだ?」


テュータレスは質問してきた。


「えぇ、成長したわね。今まで黙ってきた事、嘘をついてきた事があるのよ。」


「裏切り…という訳ではなさそうだな。」


「簡単な事よ。まず私の種族なのだけれど。」


「王位吸血鬼ではないのか?」


イリアは頷く。


「王位龍血鬼という種族であり、破滅神なのよ。」


「…!?」


「2回進化できる神様とでも言ったらいいのかしら。」


「す、すまぬ、話についていけん。要するに神へと至った、ということか?」


「そういうことよ。」


「それと、黙っていたこととは…。」


「私はね、イリア・フィーリアスって言うのよ。フィーリアス魔神国の女王でもあるわ。私がこの国に来た理由は端的に宣戦布告してきた奴らを滅ぼすためね。今は明確な証拠がない以上、動いてないけれど、これを言っておけば、ある程度楽に動けるでしょう?」


「ものすごい事実を一瞬にして突き付けられるとはな…。しかしお主が国のトップであるとは…。気づかなかった。」


秘書も感想を述べる。


「それに……神様だなんて…。神々しいです…!」


「そうかしら!!それは嬉しいわね。」


「これはあの方とやらもとんでもないものを敵に回したな。塵ひとつ残らないのではないか?」


「さすがに塵1つくらいは残すわ。」


「それは助かったぞ…。」


何やら安堵しているようだ。私だってそんな無情な訳では無い。だけれども、自国に害をなす者は消し去らないわけにはいかない。


「しかし…。まさか、宣戦布告先の女王が儂の護衛をするとは…。夢にも思わなかったぞ。」


「恐らくだけど、ジグルドに改心する余地はないと思うわ。もちろん、あの方とやらの特定を優先するけれど、特定し次第、本件に関わった人はみな処分させてもらうわね。だから、代わりの将軍を選出した方がいいわね。」


「しかし、特定する手段はあるのか?」


「ないことも無いわ。」


「ジグルドと次に会う際に情報を覗いておくわ。それで、何かしらの契約関係、状態異常の関係が見つかったら報告するわね。ところで、次に会う日っていつかしら。」


すると、ため息をついたテュータレスは告げた。


「会議の日の前日だ。と言ってもそれは今日なのだがな。」


「なんだ、今日だったのね。」


それなら話は早い。さっさと会いに行って覗いてもいいだろう。だけれど、どこで集まるんだろうか。


「さっさと行きたいような表情してるな。だが待て。この書類作業が終わってからにしてくれ。」


「しょうがないわね。」


イリアはテュータレスとその秘書の書類作業が終わるまで護衛をこなしつつ、自分の能力の確認を行うことにした。普段使っていたスキルが消え、全くの別のものに変わったのだ。


【破滅の権能】

破壊、消滅、封印、抹消を自由自在に使うことが出来る。神力の出力次第で範囲を決めることができ、より複雑に指定する事ができる。


【概念の権能】

神以外が持つスキルの事象は自身に影響を与えることを許さない。それが悪い事象であるならば。良い影響に付随するデメリットの影響は受けない。情報の確認などはここに適用される。また神の中でも己よりも神力の低い者の事象も己に影響を与える事を許さない。



【生死の権能】

生死を司る事象、魂魄を司る事象に介入し自由自在に行使することができる。また空間に関する事象もまた肉体の分解、再構築のため、これに分類される。



(なんか、応用できる幅がめちゃくちゃ広くなった感じがするわね。それに、神様ということは加護を与えられるって事よね。私の配下に加護を与えるのが良さそうね。後は単純にステータスが整理されてとても見やすくなったことかしら。それでも大罪のスキルは残るのね。)


そうこうしているうちに、書類作業が終わったのか、「ジグルドに会いにいくぞ。」とテュータレスが言ったのでついていくことにした。



そして、ジグルドと会う。

先程は覗かなかったジグルドを覗く。何か分かればいいのだが…。


名前:ジグルド・ドミニオン

種族:人間族

レベル:114

スキル:契約魔法Lv2、肉体頑強Lv4、腕力強化Lv6、鑑定Lv8、先読みLv3、等価交換Lv2、呪怨魔法Lv1、変装Lv2、魔力探知Lv3、鉄壁の衣Lv7、召喚魔法Lv3、状態異常耐性Lv8、水中呼吸Lv3、窒息耐性Lv7

称号:海洋将軍、名役者、星読み



パッと見たところ、怪しい情報があまり無い。レベルに見合うほどのスキルの量に加え、将軍足り得る構成をしていた。ひとつ引っかかるのは名役者という称号だが、テュータレスもまたこれを所持していたので上の立場に就いた者は割と持ちうるのだろうか。


しかし、今日は例の亜魔族の護衛が居ない。どこかに行ったのだろうか。それにシュネガーも見当たらない。神化しているうちに探知から離れたのだろうか。だが、シュネガーには血をマーキングしてある。位置取りはどうせすぐにわかるだろう。


「それで、テュータレス。会議の前日の最後のすり合わせといこうか。」


「別に構わんが、お主は少々大人しくしたほうがよいのではないか?」


「最後の擦り合わせについてだが、兵士の派兵の分配についてだ。前衛、右翼、左翼の3方向に分かれて攻めるのがいいだろう。お前達からも10部隊ほど借りたい。こちらだけが一方的に損耗するのは良くないだろう。パワーバランスが一定にするにはそうした方がいいだろう。」


「逆に聞くがジグルド、お前は何部隊出すつもりだ?」


「国防以外の全部隊だが?国防用に反重力戦艦を20隻配置してそれ以外を差し向ける。」


「レイシスは使うのか?」


「あれはまだ試作段階だが、此度の戦争で試験してもいいだろうな。」


「規模はどの程度だと予測している?」


「我が国の9割を破壊できる攻撃を放てるぞ。それを奴らの国の上空から落とす。当然だが、それと同タイミングで3方向から攻める。多少の犠牲はあるだろうが、野蛮な国家が存在するよりかはマシよな。」


「ひとつ聞きたい。」


「何だ?」


「何のためにかの国を攻める?魔神を下手に刺激すれば仕返しを喰らうかもしれんぞ。」


「いかに国の名前に魔神を付けようとも3体も居ないだろう。他の国でもそうではないか?魔神は各国で居ても三体だ。それに、レイシスならば魔神を葬る事など容易い。」


(それで、護衛人。どうなのだ?お主の国の魔神の総数は。)


(25体は居るわね。実力的にも獣魔王くらいのが半分でその他はそれ以上ね。6体ほどが龍魔王タンドラより強いわね。)


「そうか、ジグルドも戦線に行くのだろう?」


「当たり前だ。わしが行かんでどうする。」


「国防はどうするのだ。お主が居ない間は。」


「それはシュネガーに待機してもらう予定だ。」


「そうか。もう引き返す事は考えないのだな?」


「当然だ。明日の会議では他の幹部も交えてこれらの話を周知させる。教会長にも出てきてもらうぞ。」


「分かっておる。」


それから、テュータレスは事務室まで戻ってきた。イリアは秘書と色々話しながら護衛を続行する。その間、ジグルド側が襲ってくる事はなかった。レイシスとやらを公開するのだろうか。試験運用すると言っていたが、幹部の全員が知っているのか、この2人しか知らないのか。まだ分からないことも多い。


「それで、護衛人。ジグルドを覗いた結果はどうだ?何か分かったか?」


「そうね…。そこまで良い報告は出来そうにないわね。見るからに分かりやすい称号なんかは持っていなかったし、スキルも大して強そうなものは無かったわ。呪怨魔法や契約魔法とかを使えていたくらいかしら。あとは将軍なだけあってそれなりにレベルがあるわね。」


「会議の日まで持ち越し、ということか。」


しょうがない。こればかりは情報を得られなかったこちらの失態だ。幸いまだ、シュネガーに付着している血液は取れていない。まだ盗み聞き出来るかもしれない。明日に備えて休憩するとしよう。


イリアは事務室の隣の部屋に戻り、人肉を捕食する。その間、シュネガー側に耳を傾ける事にした。



■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■



「それで、ジグルド。状況はどうなっている。」


「は。魔神国への攻撃は終末兵器レイシスを用いる事にします。」


「それの破壊力はいかほどだ。」


「今の魔神国であれば一撃で焦土と化すことでしょう。」


「相手に魔神はいるがその対策はできるのか?」


「レイシスによる爆撃の後、反重力戦艦による重力爆撃を行います。その際に生じる魔力災害を意図的に魔神国側に流します。そうなればあの国の元首が動く事になるだろうがそれは問題ないのか?」


「それに関しましては陛下に出撃して頂きたく存じます。我々の密偵で調査しました所、かの国の国家元首は王位吸血鬼との情報を得ました。我々では倒せるかは怪しいですが陛下であれば必ず倒す事がかないましょう。」


「それで、テュータレスの陣営はどうなっている?こちらの損耗被害の報告しか聞かんのだが。」


少しの沈黙の後…。


「それが、奴が雇った護衛の実力が高く、【闇梟】が全滅してしまいました。シュネガーの力を今晩にでも使い、テュータレスやその秘書を葬りたいと思います。」


「吉報を待っているぞ。」


「は、必ずや。陛下の崇高なる目的のために。」


少しの沈黙の後…。


「聞いたな、シュネガー。今言った通りだ。秘書またはテュータレスのどちらでもいい。殺れ。お主の力であれば可能であろう。陛下から頂いたその力を持つお主なら。」


「当然でございます。見事、奴らの首をこちらへ持ってきて参りましょう。」


「ふん。出来れば良いかな。だが気をつけろ。奴にはあの護衛人が付いている。殺るのは至難だぞ?」


「それに関しましては対策を立てております。こちらにお任せ下さい。」


シュネガーはジグルドのいる部屋を出る。








その夜1時頃、大量の鮮血が舞い、ひとつの死体が転がっている。そこに立つ一人の人型は死体を放置し、その部屋を出ていく。













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