吸血鬼イリアと竜ボロスと名付けの儀
少し会話多めで書きました。
冒険者を倒してから2日後。森の奥へと突き進んだ所、洞窟を見つけたのでひと休みしようと中に入ろうとした時、突然威圧されたかのように動けない。
奥に何か音がしたので岩と岩の隙間から覗いてみると、大きな竜と蛇が戦っていた。
蛇は絶命していたようで竜が蛇を捕食していた。
興味本位で竜を神眼で見てみる。
名前:ボロス
種族:竜
レベル:135
状態:満腹
体力:136000
魔力:489000
攻撃力:29000
防御力:18000
機動力:8000
スキル:ドラゴンクローLvMax、威圧LvMax、竜鱗LvMax、ブレスLvMax、竜魔法Lv8、超再生Lv5、森羅万象Lv2、鑑定妨害Lv8、鑑定Lv9、鑑定偽装Lv8、再生魔法Lv2、覇王Lv2
称号:穢れの森の主、竜王、殲滅者、天災
「!?」
目の前の竜のあまりの強さに絶句する。
しかし、ひとつの希望を見出す。こいつさえ倒せれば、この森の中でいちばん強い事になる。
そして、この森は【穢れの森】と言われているらしい。
すると、
「何かと思えば、低位吸血鬼か。何の用だ。我は今、腹が満たされている。お主のことを食うつもりは無い。」
突然話しかけられたので、驚いたが、食うつもりがないことが分かり少し安心する。今は絶対に勝てないと分かる。
「疲れたからここに休みに来たのよ、そしたら物音がしたから近づいたらあんたが居たわけ。」
「ほお、低位吸血鬼でありながら言葉を介することができるか。知能の低い魔物だと思っていたが、お主はもしや爵位持ちだったのか?それならば済まぬ。」
「いや、私はただの低位吸血鬼よ。名無しのね。ねぇボロス。この辺りでもっと強くなれそうな場所ってある?私はもっと強くなりたいのよ。」
「お主、その気配で名無しか。名無しの低位吸血鬼であればお主の10分の1程の実力しか持たんのが普通だぞ。」
「え?そうなのかしら。だとしたら私は恵まれてるわね。もしかするとこのステータスは爵位持ちの吸血鬼に近しいステータスなのかしらね。それだとしたら、あの冒険者の言っていたことも理解出来るわ。」
「む?冒険者が居たのか?ここは人間にはちと危険なのだがの。」
「えぇ。いきなり剣を向けて攻撃を仕掛けてくるものだから、撤退してもらおうと加減して攻撃したのに魔法1発で死んじゃったの。人間ってあんなに弱いのかしら。それともあれは最底辺なのかしら。」
出会った冒険者のステータスをざっと伝えてみる。
「その冒険者は人間で言えばわりと強い部類よの。それを魔法1発か。お主は何を使ったのだ?」
「え、あれがわりと強いの?意外すぎて笑えてくるわね。えーと、確か使ったのは【暗黒魔法】のダークソードよ。試し打ちをしてみたのよ。」
「お主、機会があれば戦おうぞ。我はここで待っているからの。」
「えぇ。もとよりそのつもりよ。でも私はまだあなたの
10分の1くらいのステータスしかないから鍛えてからまた来るわね。」
「うむ。それならばここから東にある霧が立ちこめる樹海へと向かうが良い。そこも、この穢れの森の領域であるからな。ここより強い魔物達と出会えるであろう。お主を食らうのが楽しみだわい。」
「えぇ。私もあなたを殺すのが楽しみよ。でもとりあえず最低限戦える土台まで上がろうかしらね。でもとりあえず今日はここで寝ていいかしら。疲れたのよ、精神的に。」
「構わんぞ、横に小さな部屋がある。そこでいつでも休むと良い。」
「感謝するわ。それじゃおやすみなさい。」
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吸血鬼が寝静まった頃、ボロスは今日の事を考えていた。
(我を前にしてあそこまで流暢に言葉を介する度胸を持ち合わせているとはな。名無しの低位吸血鬼と言っていたが、この我がステータスを覗けないとなると、相当なスキルを持ち合わせているやもしれん。恐らく我の倍か、それ以上の。こやつはここから更に強くなって我を殺すとのたまわった。普通ならば看過すべきことであるがこやつの成長が楽しみよの。それにしても名前がないのはいささか不便だと思うんだがの。特に知性があるならば。)
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「ふわァァ。よく寝た。ちょっと体を動かそうかしらね。」
最近、口調が自然とこのようになっていく。前世があった事は記憶していたが、今やほとんど薄れつつある。自身が男であったことは覚えていた。しかしそこで学んだ知識がほとんど記憶として抜け落ちている。
あたかも最初からこの世界で生まれ育ったかのような錯覚も覚える。今はまだ転生者であることは自覚できているが、もしかするとどんどん吸血鬼らしく変わっていくのだろうか。今の目標は強くなってあのボロスを倒して人間に化ける方法を見つけて街を目指す事だ。名前も欲しいところだが、名付けられる事が前提となるだろう。となるとボロスに付けてもらおうかな。
名前を手に入れるとどうやら更に強くなれるらしいし。出ていく前に頼もうかしら。
「ねぇ。ってあれ、寝てるわね。今は起こすのはなんだし、行こうかしら。」
「む?今からゆくのか?」
「あら?起きてたの?行く前に名付けしてもらえるか頼もうと思ったのだけれど、受け入れてもらえるかしら?」
「我が名付けしても良いのか?他に居ると思うのだが。」
「私は話の通じる魔物に初めて会ったのよ。だからある程度の信頼は置いてるわ。だからこそ、名付けしてもらいたいのよ。」
「名付けるならば、名字はいるか?お主は強くなりそうだからな。名字も考えよう。」
「礼を言うわ。少しここで待つわね。」
「いや、もう決めたぞ。では名付けの儀を行う。」
「えぇ。頼んだわ。」
「我、汝にイリア・フィーリアスの名を与える。」
するとイリアの足元に魔法陣が現れ、魔法陣がイリアの体に吸収される。
突如、イリアが地面に膝をつく。
「名付けの儀は少し肉体と精神に苦痛を与えるからの。終わればお主は更に成長できるぞ。」
少しして体に元気が戻ったのか、立ち上がる。
「フィーリアスって何処から取ったのかしら。」
「かつてメリザ・フィーリアスという吸血鬼が居たのだ。我の盟友で共に魔神戦争で戦った。その容姿をお主と重ねたのが理由よの。イリアに関しては我の思いつきに過ぎん。」
「気に入ったわ。これからはイリア・フィーリアスとして生きていくわね。」
「それよりもステータスを確認したいの。いいかしら?」
「いいぞ?見た後は樹海へとゆくが良い。」
(【神眼】発動)
名前:イリア・フィーリアス
種族:中位吸血鬼
レベル:1
状態:普通
体力:28000
魔力:69500
攻撃力:36000
防御力:24700
機動力:9500
スキル:吸血LvMax、魅了LvMax、血液操作LvMax、身体剛化LvMax、魔力操作LvMax、魔眼LvMax、ブラッドクローLvMax、魔力偽装LvMax、日光無効Lv-、神眼Lv8、炎魔法Lv9、暴風魔法LvMax、水氷魔法LvMax、天雷魔法LvMax、森林魔法Lv9、岩石魔法LvMax、神聖魔法LvMax、暗黒魔法LvMax、鮮血魔法LvMax、異空庫Lv2、変装LvMax、神眼偽装Lv2、神眼妨害Lv3、空中機動LvMax、索敵感知Lv8、超高速演算Lv2、毒無効Lv-、痛覚無効Lv-、ゲヘナLv4、幻影回避Lv2、シールドLv9、炎耐性Lv2、水耐性Lv3、神聖耐性Lv3、暗黒耐性Lv5、凍結耐性Lv2、眠気耐性Lv3、呪耐性Lv4、再生Lv3、魔王Lv1、女皇Lv1
称号:転生者、殲滅者、不屈者、容姿端麗、魔王候補
「え、なんか沢山スキル増えてるし、何よりいつの間にか中位吸血鬼になってるわ。ステータスも倍増どころの話じゃないわ。4倍以上強くなってるやつもあればボロスより機動力高いじゃないの。凄いわね、名付けの儀は。」
「そうであろう、進化間近での名付けだと勝手に進化するのでな。それにしても我より機動力が高いか。」
「えぇ、これならもっと強くなれそうね。頑張るわ。それじゃあね、ボロス。また会う時は殺り合う時ね。」
そしてイリアは洞窟を出た。